表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
『大盗賊ダイ』  作者: 提灯屋
93/132

これからマーガレットの新しい物語が始まります


 舞台をシメようとするリリュの踊りながらの語り部だけど。


「なんだよ、やっちゃえよーー」

「イヤらしいオジンなんてやっちゃえーーー」

 不評のようだ。


『あれあれ皆さん、お待ちくださいーー

 優秀な裁く人々が報告をしてくれますーーー』

 って誰?

 観客だけじゃなくて、座員たちの視線も劇場の入口に注がれる。


『ああ、なんと凛々し姿でしょう。

 王都の秩序を守る頼もし殿方ですーーー』

「あ、アーちゃん」

 ダイにはお隣さん、グアンテレーテ・アーネスト夜警隊中尉が入口に立っていたのだ。


『さあさあ、日々悪い人たちと戦う勇者様。

 マーガレットを苦しめた悪者はどうなりましたか?』

「は?」

 公務員である自分が業務中に、お芝居に組み込まれたとは、さすがに察知できないよな。


『会場の皆さん、

 王都の秩序を身を挺して守る勇者様(夜警隊)、こちらにいらして』

「これは迂闊」

 アーちゃん、愛妻がいても綺麗な女の人、好きなんだ。

 リリュが率先したから、会場に拍手が巻き起こる中、アーネスト以下の夜警隊員が舞台に上がる。


『どうなったの?』とダイの石版会話。

「ダイ」

 ダイと『鷲と白鳥一座』の関係は知っていても、舞台上にダイがいれば、そりゃ驚く。しかも、排除される様子はないし。


「その」と言いよどむアーネストに、足早に接近するペネ。逮捕の後に、お互いに厄介になっているからパウロ経由を含めて顔見知りでもある。


(……公邸に逃げ込みました。現在身柄引き渡しを交渉中です)

(上出来です)

 ダイに石版を貸してとアピールするペネ。石版の文面を素早く読み取ったリリュのアドリブが全開する。


『皆さん。

 悪い魔法使いは洞窟に逃げ込みました。でもご安心』

 ペネを一瞥。


「『ここで最後の占いをしましょう。悪党は、必ず裁かれ、重い罰を受けるでしょう』」

「だな」

 貴族殺しのパウロは、実は有名なのだ。


「いいぞーー」「やっちゃえーー」「スッキリーー」「殺せ殺せ」

 ……。尚、観客の声援や声に混じって、『猫の足跡団』首領がヤジっていたことをお詫びしなければならないだろう。


『さあ。

 これからマーガレットの新しい物語が始まります。

 ですが、本日は、ここまでーーー』


 ズィロが大手を振りかざしながら幕を降ろさせる。

 色々ハプニングを利用した奇抜な新作劇が終わったのだと盛大な拍手だったのだけど。


『なんか、筋がちがうよ』

 ダイは初期設定、自分の原案がトンでもなくねじ曲がっている点を指摘した。


「はいはい、ダイ。よく頑張ったわねーーー」

「ああ、リリュさん。暑苦しいよ」

 大陸随一の人気の踊り子の抱擁も、ダイには感動の種にはなっていないのだ。


「小隊長。グアンテレーテ隊長。小官には何がナンだか意味不明です」

「安心致せ。本官もだ」

 でも観客をパニックから防衛しなければならないのが夜警隊だ。今はリリュのシナリオにのっかるしかなかった。


「後で詳しく。今は幕を下ろして観客を帰宅させましょう」

 ペネがフォローする。


「そうして頂けると幸いです」

 そんな風

 格好をつけるのが精一杯なアーちゃんだった。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ