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『大盗賊ダイ』  作者: 提灯屋
73/132

ショタコ商会の逸品


「あの、判事卿」

「貴方は」

 跪かなくても視線がほぼ並行なペネとダイ。


「この大盗賊さんには、看護とかよりも適任がありまいてよ、判事」

「なるほど。それは?」

 くるり。リリュはまたしても軽やかに身体を翻す。


「ねぇズィロはどこ?」

「あーー」

 おヘソ辺りを押さえながら答える若手の座員。


「お医者の手配に行かれました」

「じゃあズィロは無事なのね。とると」

 見下されるとリリュはダイの倍近い身長だと錯覚しそうだ。


「多分ズィロは休演しないでしょう」

「さっきそうぜっきょうしたよ」

「ええ、あの座長ならそう決断するでしょうね。あ、いけません、不許可ですよ。小官は最早、司法院の高等判事、舞台に上がるなど」

「上がってたんですか、判事」

「カラスコ隊員。今の会話の記憶を削除なさい」

「それはムリだよ、お姉さん」

 困った会話を頭越しに、カラスコは自分のお仕事をしていました。


「判事、この食べ残しですけど」

「さて。別段饐えた匂いはしませんね」

「ですが、この食事を摂った座員が腹痛を訴えたと。それから、弁当の下敷きにある店名ですが」

「おや、手早い」

「現業ではなくても夜警隊ですから。こちらの食堂は飛び込みの弁当の注文は受けていないそうです」

「ではこれを籠ことを司法院に」

 差し入れが収まっていた小籠をカラスコに預ける。


「司法院の科学局に託しなさい。そう、ネビスに」

「承知しました」

 籠を胸に抱いたカラスコがペネに一礼して劇場から去ろうとする。


「ああ、カラスコさん。アーちゃんを呼んでもらえますか、これってきっと事件だよ」

「アーちゃん? ああグアンテレーテ中尉か」

「ダイ君。貴方が断定するのは不許可です。でも、いい判断ですよ」

「あの、ナデナデは赤ちゃんみたいだからさ」

「貴方は可愛い赤ちゃんみたいなお方です。小官。いえ母親である私から見れば」

「ちぇーー。これでも大盗賊なのに、肝心の裁判官が別件逮捕で忙しいなんてなぁ」

「別件逮捕では、ありませんよ」

 むぎゅっ。

 ダイは真後ろから拘束された。ペネも、だ。


「はぁい、可愛らしいサイズのお二人さぁーん。お腹を痛めて苦しんでる座員たちをどうにかするのが先ですよーー」

「これは迂闊でした。さて、では小官は応急手当を」

「おれは?」

「ダイぃ」

 どうしてか。身体を揺らして捻りながら膝を折るリリュ。大陸随一の名踊り子さん、らしい。


「あ、なんかな笑い」

「うふふ」



 井戸から帰還したパウロとマーサは腹痛を訴える座員に水を積極的に飲ませている。それが食中毒の対応の一つなのだ。

 そして、愛するべき大盗賊ダイは。


「ねぇリリュさん」

「んーー、ぶっぶーー」

 ニ指。つまり人差し指と中指を重ねて十字を切る踊り子、リリュ。


「リリュおねえちゃんと呼んで。はいっ」

「リリュお姉。ちゃん?」

 ダイは強制的に着替えさせられた。


「どうしておれ、膝がムキだしのズボン姿になったの?」

「このズボンはね」

 一々ダイの後方に回って頬ずりするリリュ。


「ショタコ商会の逸品なのよ」

「それをわざわざ膝下切断するイミがわからないよ。転んだら怪我するよ」

 チッチッちっ。

 人差し指を突き上げるように伸ばして手首を振る踊り子。


「ダイはまだまだ年上のお姉さんがわかってないわね。このショタコ商会の素晴らしズボンを裁断して敢えて膝を晒す少年の躍動感の良さが」

 身震いしながら両手を合わせるリリュ。


「躍動って、おれ、〝よみあげ〟だよねぇ? なんで袖も短いの、切ってあるよ」

「そう、よく気づいたわね」

 まるで指揮棒のように立てた指を動かしているリリュ。


「気づくよ。ザク切りだもん」

「そこがポイント高いのよ」

「リリュ。皆にわかるよう説明してくれるか?」

「あ、劇場長オーナー

「あガッペンさん、お久しぶりです」

「ガッペン。先代座長さん」

「おや。そうか、さっきナピが言ってた珍しいお客様は、ベルリナーの令嬢か」


 座員にコップの水を与えているマーサがお辞儀を返す。



 そう言えば、「ショタコン」スタイルに初めて成ったな。

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