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『大盗賊ダイ』  作者: 提灯屋
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差し入れの弁当が


 どんどん、ずかずか。

 ソシアをお姫様抱っこをしたパウロを先頭に、黒い集団が走る。


「あ、あの」

 ダイも一緒に抱かれていた。

「ねぇテオ、成り行きで走ってるけど」

「ああ」

 息切れし始めている『猫の足音団』たち。


「あの判事、どんだけ体力バカなんだ」

「小さくても子供と女の子抱えているくせに」

「で、『鷲と白鳥一座』の劇場まで走るの?」

「さあね」


 前方に人の塊がある。

「ああパウロさんだ」


 見間違えないだろうパウロの巨体に手を振る集団。

「おお団員たちだな」

「パウロ、降ろしてよ」

「ねぇ、パウロ。なんだか呼んでるよ」

「んだどもなんか頼りねぇなぁ」

 ずかずかずか。そして停止。


「ああ! ソシア姫」「よかった!」「ご無事で」


 さすがの脳筋判事も無意味に突進はしない。団員たちの直前で停止。


「おお。どしただ」

「ソシア姫、劇団が大変なんです」

「でも、これで最悪の事態はなくなって良かったぁ」

 パウロを団員たちが囲む。


「どしただ? マジ敵兵でも攻め込まれた雰囲気だへ」

「敵兵のがマシです」

 大泣き。いや顔面涙の団員がパウロの袖を掴む。


「あんな。敵兵は例えだ。それよりも?」

「うぐ」

 まるで魔術か呪術の犠牲者。とある団員は前置きなくじめんにキスをするように倒れた。


「はぁ?」「どうしたの?」


 パウロがしゃがんで団員の様子を伺う。


「ああ、ごめんなさい」、「おれも悪りぃ」

 次々と離脱してゆく団員たち。ほんの数秒前まで隊列が組めるほどの集団が、今ではひと握りになってしまった。


「パウロさん?」

「ねぇ貴方たちどうしたの?」

 さっきまで劇場に戻りたくないと抵抗していた歌姫もびっくり。


「んあ? ありは腹ぁ。くだしたな」

「腹?」

「んだな。下痢でねえけ」




「お昼の食事で下痢?」


 パウロ一行が劇場に到着すると、まさに修羅場。

 今日の夕方には新作劇を披露する予定の舞台には、倒れている団員たちを転がす野戦病院に早変わりしている。何人かは腰掛けていたり中腰もいるけど、とてもこれから芝居を上演する体調でないのは明白だった。


「は、はぁ」

 下っ腹に力が入らないのか、座ったままソシアと応対する団員の返答。


「あの、座長が差し入れしてくれた弁当」

「座長が?」

「ウソだァ」

「ウソだな」

 ダイとパウロがダブル同意。


「どうしてよ、ダイ」

 息切れから回復したマーサが尋ねる。


「あの人がそんなことしないよ」

「んだな。この『鷲と白鳥一座』は昔から食べ物にはうるせ」

「それは褒めているのか? ソシア!」

 ドカン。雷鳴のあ可愛げがあるズィロの恫喝が轟く。


「座長、し、静かに」

「耳、よりは、腹に響くぅ」

 死屍累々の芝居なら満点だ。ってか演技じゃないし。


「本番直前に劇場(小屋)抜け出すヤツがいるかぁ!」

「パウロ」

 パウロの巨大だとソシア三人くらい隠れられる。


「ざ、座長。でもそのお陰でソシア姫が無事だったんです」

「ソシアだけじゃどうにもならんのだが」

「そうでしょ。ね、今日の公演は」

「休まん!」

「んもぅ。一々絶叫しないでよぉ」

 耳の穴を塞いでも煩い絶叫なり。



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