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『大盗賊ダイ』  作者: 提灯屋
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それが今日のお勤めの作戦さ


 大盗賊ダイ。

 本人がそう自称していても、実際は八歳の子供だ。時々、弱みを握ってしまったグアンテレーテ家にアリバイ工作を依頼するなど、なかなか知恵が回っていても結局は子供。


 大掛かりな〝お勤め〟を実行するにはそれなりの準備が必要になる。


「えっと」

 ダイは背嚢。つまりリュックから小道具を取り出す。

「あれ、それハーピィのはね?」

 産気づいたカトリーヌ、グアンテレーテ・アーネスト夫人を襲撃していた邪鳥ハーピィを盗賊団が撃退した誉れ高い証拠のアイテムだ。


「へへ。これはおれのお宝として、ずっと持っていたんだ。まだ家にも何まいかあるんだぞ」

「ふぅん」

 ハーピィはダイのパチンコで追い払われていたから、かなりダイ寄りのお宝になる。だから、ミカの反応は薄い。


「この羽を、荷馬車にくっつけるのさ」

 大きいサイズで全長メートル越えするハーピィの羽。ダイは羽の根元に捏ねた泥だんごを挿している。

「どうして?」

「ふふん。ミカ、ハーピィは仲間で暮らすモンスターなんだ。仲間を攻撃するやつはしかえしするんだ」

「なかよしなの?」

「そ。それが今日のお勤めの作戦さ」

「ふぅーん」



 同居者は祖父母だけ。一番近いお隣はグアンテレーテ家という王都に近い割には意外な過疎地域に居住しているダイとミカ。

 もちろん、厳密にはエスカラ街道沿いに出店屋台があり、半居住者もいるけど接点が無い。


「頭。今日はお店がすくないね」

「そうだな。そうすると、もっと隠れないとバレちゃうな」


 休憩を終えたボリトス商会の一行は、また王都八大街道に戻った。


「わかった。こっそりだね」

「そ。ミカ、今日は〝お歌〟はなしだぞ」

「うん。ミカ、がまんするね」


 お目当ての商品が空箱になるか、もしくは箱を分けてもらおうとダイはボリトス商会を追跡している。でも、今日は普段と街道の様子が違っている。


 通行が疎らで、そのせいか普段なら隠れている街路樹がハッキリ映る。

「頭、どうして今日はお店がないの?」

 囁くミカ。


「八大街道は、ホントウは出店や屋台が禁止されているんだ」 

「そうなの?」

「そうさ。だって八大街道は王都のぶっしを運ぶために計画的につくったし、なにかあったら王都から軍人が移動するための道なんだ」

「それシンプソン爺ちゃん?」


 ダイとミカの祖父シンプソンは元官吏だから物知りさんなんだ。

「そう。爺ちゃんが教えてくれたんだ」

「ふぅん。じゃあじゃあ、頭はこれからどうするの?」

「あの箱をちょうだいって頼んだれもらえるか売ってくれるのが一番話が早いんだけどな」

「そうだね」

「でも名入の箱はくれないと思うから、古くなった箱をもらうんだ。〝ゆずってください〟ってさ」

「どうしてさっきのお店でたのまないの?」

「なんだかさぁ」

 頭をポリポリと掻くダイ。

「あの用心棒たちがお願いできる感じじゃないから」

「だから?」


 兄の顔を覗き込むミカ。

「そ。だから箱をつくっている人たちにお願いするのさ」



 という訳で追跡をする。

 ハーピィの羽は馬車を見失わないための対策なのだ。


「頭、あの人たちのおウマさん、ずいぶん歩くね」

「うーん。遠いんだな」

「どんな場所にいくの?」

「わざわざ箱に収める商品だからなぁ。爺ちゃんから聞いた話しだと、そんな高級品ってなんだろう。おれはしらない商品アイテムだなぁ」


 また無口に馬車集団を追跡する兄妹。


「頭」

 ダイが小さく頷いた。全ての馬車が、脇道に入ってゆく。

「頭?」

 しっ。ダイは口元に指を当てた。ミカもそれをマネする。兄が手綱を握る愛馬とうちゃんが、脇道を通過したから、ミカは驚いたのだ。でも、ちゃんと理由があると兄、盗賊団の頭は意思表示したのだ。


 ぽくぽくぽく。

 あ、やっぱり馬車の護衛が一度だけ引き返して脇道でキョロキョロした。ダイの勘は、なかなか鋭いらしい。


「でも、ちゃんとハーピィが上空にいるんだ」

 仕込みは充分。口元が綻んでいるダイだった。


「じゃあ、追跡再開」

「了解、頭」



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