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『大盗賊ダイ』  作者: 提灯屋
111/132

ほんと、バカな子なんだから。ダイ、あんたって


 いくぞ。


 八歳九歳でも大盗賊。


 お勤めがバレないように、ダイは掛け声なしに飛び込んだ。


 リリュの罠に。



『ああ。私の中に恐ろしい私がいるの』

 へえ、そんな筋書きなんだとダイはうなずいていた。


『ねえ、聞こえるかしら。足音を殺して近づく影を」

 聞こえないようにリリュの髪留めを狙うダイの右手。左手は、交換する『王者の石』を掴んでいる。


リリュは役者としても一流だ。

 〝ナニかに〟向けて訴えているリリュは、役に没頭してダイの接近を知らない。その油断を狙って髪留めを奪い、足元にお邪魔な『王者の石』をセットする。


 完璧な作戦だった。


 リリュがダイの乱入を待ちわびていなければ。


 よし。

 もうすぐお目当ての髪留めに手が届く。


(シ、シュッ)


 前のめりになっていたダイはとっさに身体を捻っていた。


「ん?」

 ダイの急ブレーキと同時に、舞台全体が煌々と照明が灯される。


「やっぱ来たんだ。ダイ」

 聞き覚えのある声。でもリリュの声じゃない。


 なななななななな。


「ななな」

 なんだ、こりゃ。


「あれ、マーちゃん?」

 呑気なミカの声がした。って、舞台にいるのはマーサじゃないじゃないか。


「まさか」

 舞台の中央で一人芝居をしていたハズの踊り子は、暗闇を利用してマーちゃん。マーサとすり替わっていたのだ。


 目標のリリュは照明からハズれてマーサの脇に控えていた。衣装すら、前回語り部に専念した役どころと同じ、妖精のようなスケスケの服に着替えている。

 いや、多分町娘の衣装の下に着込んでいた。


 こうして念入りに下準備してリリュはダイを誘っていた。


 全てがマーサと入れ替わってしまうと、声変わりでダイは引き返すから、音声はリリュの声だったのだ。


「まさかねと叫びたいのは私の方なんだけどね」

 むっくりと立ち上がるマーサ。もちろんお得意の二条鞭を握っているし、まだまさ発育中の身体も揺れている。


「ほんと、バカな子なんだから。ダイ、あんたって」

 客席がザワめく。


 ダイ? ダイって誰だ。いや、もちろん本人や妹のミカは知ってるけど。


 がやがや。ひそひそ。


 前触れなく登場したダイをやっと観客席は確認。


「あ、あの子よ」

 ちょっとだけ黄色い声。


「そうそう。ショコタ商会のアレがお似合いの」

 んぐぐ。

 ダイはマーサをから警戒を緩めないまま耳に届くヒソヒソ声を分析する。


 ──謀られた。


 簡単明瞭な答えだ。衣装を指定していたリリュがダイの乱入のタイミングも把握予定していてもべつに不思議じゃない。


「ふん。こっちだって」

 予告状を返信するリリュの性格を一座の準構成員扱いをされているダイが知らないわけじゃない。

 驚いてはいるけど、想定はしていた。


 対策は練っていないけどね。



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