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『大盗賊ダイ』  作者: 提灯屋
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なおれ


「暗いね」

 劇場の内部の灯りはロウソクが所々。

 だって窓とか除戸があると無銭入場が続発する。それに防火対策で燭台の設置も限定されている。これってゼッタイにズィロ座長がケチだからじゃないんだからね。ケチだけじゃないんだ。


「ねぇ頭。お芝居が始まるのかな?」

「そうだな。そろそろだよな」

 ダイが耳を澄ますと、前奏曲の準備なのか、楽団が音合わせをしているらしい。まだガヤガヤと声も飛び交っている。


「お芝居中にお勤めするの?」

 妹のミカも兄の真似っこ中。


「それが一番無難だからな」

「ふーーん。ぶなん、なんだー」

 ダイは腰に挿した革袋を叩く。水を蓄え水筒として使うのが正しい利用な革袋だけど、今はあのオジャマアイテムの『王者の石』が入っている。


「それ重くない?」

「重いけどさ。裸じゃカッコつかないし、紐で結べば隙間から返却もできちゃうし」

「ふーーん。かわったお勤めだね」

 大盗賊ダイ。正しい活動は、お勤め。まあなんだかんだで誰かさんから盗みをすること、窃盗だ。

 でも今日は違う。事の発端は、ダイが拒絶したプレゼント、王者の石がペネ判事経由で送りつけられたことだ。

 マジ要らないんだけど、ペネとその弟パウロの姉弟判事には借りがあるダイは、受け取るしかなかった。だ・か・ら・ご返却するのだ。


「黙って捨て置くのも大盗賊として恥ずかしいからな」

「うん」

 今日のオキニのお人形は〝ダイ〟。兄の名前と重複しているけど絹製の手作りお人形さんだ。もう一つのオキニは背負っている。


「しっているよーー。それって〝なおれ〟っていうんだよねーーー」

「う、うん」

 こいつ。カトリーヌか祖母ちゃんから難しい言葉教わったな。あ、最近出番ないですけどカトリーヌさんは、夜警隊将校のグアンテレーテ・アーネスト中尉の奥様で、いつものダイとミカならカーちゃんと呼ばれている。母ちゃんではない。


「そうだ、なおれだ」

 軍人教練で使う、『直れ』と『名折れ』の違いも不明でお勤めは強行される。


「それで、どうするの? お芝居」

 前奏曲が劇場に鳴り響く。同時に拍手喝采、呼び声。


「ああ。始まったな」

 どう考えてもお芝居のスキにリリュの楽屋に忍び込めば全て完了する。でも、それは大盗賊のプライドが否定している。


「じゃあ、舞台の袖にいこう」

「袖?」と自分の手首を眺めるミカ。ノースリーブの、ストンとしたワンピを着用しているから、本日のミカの着衣には袖がない。


「どこ?」

「劇場のな。端っこを袖っていうんだよ。いいからついて来い」

 妹の手首を包んで牽引する兄。自称は大盗賊。


「じゃあ、だっこ」

「あーーー?」

 そうだ。まだミカは五歳。お手伝いごっこや遊び相手のパーシバルの提供もあるけど、甘える目的もあってアーちゃん、カーチャンの家に頻繁にオジャマしている側面を見逃せない。


「しかたないなーーー」

 膝を落として妹を誘導する兄、ダイ。

「わーーい、頭だいすきーー」

 盗賊団の頭はツライねぇ。

「じゃあ移動しながら作戦を練ろう」

 って、まだ考えてなかったんかい。



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