もちろん、泥沼にハマっている
リリュの髪留め大強奪作戦は、明日──。
ダイはお手伝いもそこそこに下準備に余念がない。
「ええっと用意するのは」
幸いに勝手知ったる鷲と白鳥一座劇場だ。敢えて逆説的に正面からの侵入だって作戦的にはあ・り・だ。
「ロープがこれで五本、でもなぁ」
長目短め、太め細めと鈎付き。重量を採るか利便を採るか、悩みどころだ。
「かしらーーー」
またハトを運搬してきたミカ。
「ええっと」
「アーちゃんかな。それとも」
ミカからハトを受け取り、細く畳まれた手紙を拡げる。
「え、リリュさん?」
追加の挑戦状だった。
「なに、どうしたの?」
「ミカはまだ字は全部おぼえてないだろ?」
覗き込んだ妹の体重が厳しいとはお兄ちゃんの名誉が傷つくから言えない。
「だからよんで」
「しかたないなぁ」
ミカに聞かせられない文面なのか平気なのかを確認してから読み上げるダイ。
「ええっと、なになに?」
「頭、ちゃんとよんでよ。お口あけただけじゃミカわかんない」
それは余りに衝撃的だったのだ。
「頭」
ペンペンと兄の背中を叩き、腕を引っ張る妹のミカ。
「あのなぁ。この前色々あってリリュさんから押し付けられた」
「うん。ヘンな石だよね」
「だけじゃなかったんだ。実は」
「じつは?」
手紙をまたまたくしゃくしゃと握りつぶしているダイ。手紙を握ったまま今度は頭をぐしゃぐしゃとかき乱す。
「あれは、なんか膝が寒いし、なんでだか恥ずかしいんんだけどーーー」
「あの短いズボン?」
ショタコ商会制作の高級子供服をなんでどうしてだかザク切りして肌露出を超増量した衣装なのだ。
基本的に肌を晒すのは、子供よりも赤ちゃんが好きなんだ。だから肌がでるのは赤ちゃんぽくてダイはなんだか恥ずかしい。
「うごきやすくないの?」
そんな一面もある。
「そうじゃないんだよーー」
ダイの区分けでは、ハデで遊び好きな大人の女のリリュは仕方がない。
でも、不思議とダイの短いズボンを堅実真面目が人化したはずのペネまでがいつもと違う視線を発していた。それがダイには怖かったのだ。
「うぬぬ」
一度は拒絶した手紙を再読。
「なに。『大盗賊なら、相手の指定した衣装でも窃盗を成功させる』だって」
この段階でダイも今回のお勤めのヤバさを予見したようだ。
「頭って大盗賊だよね」
自称と普段の決め台詞が墓穴を掘る事態になっていたダイ。
「うぬぬ。そうだおれは大盗賊ダイだ!」
「わーーい」
まだお手紙を握ったまま高らかと再確認の宣言をするダイ。もちろん、泥沼にハマっている。
「見てろーリリュさん」
この段階まで陥って、リリュをオバさんと呼ばない、躾の良いダイであった。
「観客の目の前でお勤めしてやるぞーーー」
どうなることやら。




