4話「友達」
放課後。
奏人が初めて宇佐美と話した日の放課後、朱莉と春貴含め四人で一緒に帰ることになった。
今日は、たまたま運動部も文化部のどちらの部活が休みで朱莉が「じゃあ一緒に帰ろう!」と言ってきたので春貴と奏人は朱莉達と帰る事になった。
「何処かによっていかない?」
と朱莉が明るい声で自分の後ろを歩く奏人達三人に振り返って話しかけてきた。
「何処かにってどこさ」
奏人が少しため息交じりに話しかけた。
「うーん、ドーナツ屋さんとか」
朱莉が人差し指を顔の横に添えて首をかしげながら言った。
「朱莉ってドーナツ好きだよね。」
春貴が、昔からと添えると朱莉は勢いよく返事をした。
「うん!」
奏人は宇佐美さんと話すことはなかったが、少しだけ彼女のことを知ることができたのではないかと思った。
「ねぇ、奏人。」
「なんだ?」
「奏人さ、ちゃんと玲架にお礼言った?」
「…言った?」
朱莉に言われ、思い当たるところを探してみたけど言った覚えがなく宇佐美さんに問いかけてしまった。
彼女はどうだったかな、と首を右に少し傾けた。
「言ってないね。ゴメン。」
全然大丈夫!って宇佐美さんは走り書きで書いた文字を奏人に見せた。
「うぅん。お礼させて。何か欲しいものとかある?」
『本当に大丈夫だよ!?』
「俺にとってこのリストバンドは本当に大切なものだから…何かさせて。」
今度は、彼女にすがるように手を合わせてお願いをした。
宇佐美さんはゆっくりとペンを走らせペンのインクがついた紙をじっと見てから恥ずかしそうに紙を見せてきた。
『じゃあ、友達になってくれる?』
沈黙が少し浮いてからまた恥ずかしそうに顔を赤くした宇佐美さんは、紙で顔を隠し奏人に文字を向けた。
『ダメですか?』
「反対に、そんなんでいいの?」
コクリって小さくだけど勢いづいて宇佐美さんは頷いた。
「本当にいいの?そんなんで。もっとお金がかかったものとかでもいいんだよ〜?」
朱莉が奏人の方を見ながらからかい混じりの声で宇佐美さんに話しかけていた。いや、正しく言えば奏人に話しかけてきている。
「お前な〜」
『なかなか朱莉ちゃん以外の人と話すことないからとっても嬉しい。」
「宇佐美さんって素直だね。と言うかいい子だね。」
さっきまでドーナツをもぐもぐ食べてたりジュースを口にいれたりで忙しかった春貴が、会話に入ってきた。
『西野くんは行動が読めないね。』
「「確かに!」」
宇佐美さんの発言に朱莉と奏人は笑った。
「宇佐美さんって天然なの?Sなの?Mなの?」
春貴が、さっきまで持ってたコップを置いて宇佐美さんに訪ねていた。
宇佐美さんは首を片方に傾けてうーん、って言ってるそぶりをした。
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