2話「無くしもの」
朝練はいつも通りだった。
各自が練習したいことを練習して、の重ね。ちなみに朝練は強制参加ではない。けど、春貴意外は大体毎日来て練習をしている。
バスケットボールはチームプレーだし、自分がミスればチームのミスになるというプレッシャーがある。だからと言うのもあるからかもしれないが先輩達は練習はおろそかにしない。
だからってわけではないけど俺はそんな先輩達のことを信頼しているし、尊敬している。
男子バスケットボール部は俺と春貴一年合わせメンバーは五人しかいない。大会前は三年生がいたからあと三人はいたけど二年生の先輩は「一年が入ってくる前とそんな変わんない。」ってよく言ってた。
「朝練終了ー」
ハル先輩の声が体育館に響く。
「「はい」」
間延びした声とめんどくさそうに言った声、丁寧な声、そして自分の声と四色の声が聞こえる。
「春貴ーそろそろいくぞ」
奏人は部室にある自分のロッカーをバタンと閉め、春貴に話しかけた。
春貴は、Tシャツを脱ごうとしていてお腹が少し見える。
「なに?」
春貴は両腕だけに服をかぶせて、額から落ちてき滴が首筋、鎖骨へと下にいく。
「あー、ゆっくりでいい。」
奏人は、自分の頭に軽く手を置いて少し髪の毛をかき分けながら言った。
「いいよ。もう少しで終わる。」
春貴はそう言うと右手にタオルを持ち、顔から足首へと下に汗を拭いていった。
バタン
ドアの閉まる音が聞こえる。
「終わり」
「終わってねぇーよ。」
奏人は、軽く春貴の頭を叩いた。
「制服着ないで何が終わりだよ!」
春貴のロッカーから制服を取り出し、こいつの目の前に制服をぶら下げた。
「面倒い」
背を奏人に向け歩こうとする。
「待っててやるから着替えろ。」
奏人は、一つため息を吐いて自分のロッカー前に座った。
「着替え終わったら声かけて。それまで寝てる。」
「了解」
目をつぶる自分の中で静かに笑いかける春貴の声が聞こえた。
「春貴」
「ぅん…」
「眠そうだね〜」
春貴は、眠たそうに目をこすっている奏人の顔を覗き込む。
奏人と春貴の顔はとても近くてもう少しで鼻がくっつきそうだ。
「うぅん…」
大きく手と腕を伸ばす。
「このままサボっちゃう?」
「駄目だ。行くぞ。」
「はいはい。」
からかい混ざりのあとの返事はいつもの春貴らしい声には聴こえずどこか不安を持っていたように感じ取れた__。
昼休み。
「春貴!!」
教室に滅多に大声を出さない少年の声が響き渡る。
「奏人?どうした?」
驚いたのか肩を少し上下してから問いかけて来る。
「リストバンドが無い!!」
「はぁ!?」
もう1人と滅多に大声を出さない少年の声が響き渡る。
奏人のリストバンドはとても特別なものだった。なぜなら彼が幼い頃ある人から貰った大切なものだから…___。
「とにかく探すぞっ!」
「おぅ」
春貴が顔を伏せていた机から額を離し、椅子からおり勢い良く立つ。
「行くぞ!」
「あぁ!」
朝とは反対に奏人が春貴に引っ張られる感じで教室から出て行った。
白丘高校バスケットボール部メンバー
2年
主将・キャプテン
晴海 陽介
副主将・副部長
水戸 裕紀
成沢 俊司
1年
三神 奏人
西野 春貴