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この『アイなき世界』で僕らは  作者: 京 高
7 冒険者たちの躍進
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87 最果てを目指して

今章は、バックスとロヴィンの二人+αからスタート!

 ラジア大洞窟の北西部を、西の端を目指して十数人の男たちが旅を続けていた。

 メンバーは俺、バックスとロヴィンにゼロたち六人。そしてこの旅の中心人物であるアレスとその配下の三人という顔ぶれだ。

 うん?リュカリュカはどうしたのか?あいつは別件の用があって、そちらにかかりきりだ。

 今頃は別の大洞掘にでもいるんじゃないか。最初はガキどもがひどく気落ちしていたが、


「これを成功させたら、見直してくれるかもしれないよ」


 とロヴィンが上手くおだてて今はすっかり元気になっている。……噂をすればなんとやらだ。前方を歩いていたゼロが、速度を落として一行の中ほどを歩いているアルスへと近づいてきた。


「なあ、アルス。その西の端には何があるんだ?」

「分からない。あの地の周辺は帝都と同じく、皇帝陛下の直轄領という扱いになっているから入ることができないのだ」

「ふーん」


 いや、ゼロ!お前絶対よく分かってないだろう!

 リーダーがバカでも何とかなるのは漫画の中だけだからな。直観力に判断力、指揮能力、そして知力。この四つがリーダーには不可欠だと俺は考えている。武力は強い仲間がいれば問題ない。

 テイマーやサモナーを思い浮かべてもらえれば分かり易いだろう。ただし彼らの場合、本人と使役する魔物たちとの間に明確な上下関係というものがあるから、単純にパーティーのリーダーとして優れているとは言い難いという部分もある。

 何より他のパーティーメンバーとの信頼というものが重要になってくるのだ。

 まあ、あくまでも俺の持論だから、異論は多々あるとは思う。自分がリーダーとなって検証したわけでも実践している訳でもないしな。


「ハリュー、お前は確かトスドノに赴任していたことがあったな」

「はい。今から十五年ほど前のことになります」


 アルスが斜め後ろを歩く副官に尋ねると、その通りだという答えが返ってくる。トスドノというのはズウォー領の最西端の町だったはずだ。

 みだりに直轄地へと足を踏み入れる者がないように監視を行っているので、周囲にこれといった特産品がない割には大きめの町だという。


「その当時、あの地について噂や何かを聞いたことはなかったか?」

「いえ、特には何も。ご期待に沿えず申し訳ありません」

「気にするな。だが、もし何か思い出したらすぐに教えてくれ」

「畏まりました」


 現皇帝が即位したのが三十年近く前だということだから、十五年くらい前ではいい加減噂話も下火になっていただろう。


「皇帝になる試練か……!なんか燃えてくるよな!アルス、頑張ろうぜ!」

「ああ。そうだな……」


 あの日、俺たちの前で皇帝が後継者に選んだのは、自身の子どもたちでも弟でもなく、アルス・ズウォーだった。




「お、おれ、いや私がですか!?」

「そうだ。お前は降嫁したとはいえ、わが妹の息子であり、第四位の帝位継承権を持っている。これまでズウォーを治めてきた手腕といい、この騒ぎによって乱れた帝国を立て直せるのはお前しかいないと思っている」


 展開についていけず唖然とする俺たちを前にして、皇帝はそう言い放った。

 そしてベリル領主とヒトイ領主の二人もその案に賛成し始めたのだ。


「アルス殿、君の努力とその成果は私たちから見ても素晴らしいものだ。今度はその手腕を帝国全てのために振るってみてはどうだろうか」

「幸い、一番面倒な血筋という点では問題ない。帝国の、ラジア大洞掘の未来のために陛下の要望を受けてはもらえませんか。もちろん皇帝になるまでも、そして皇帝になってからも、私たちにできる協力は喜んでさせてもらうつもりですぞ」

「ナウキとしても同じ気持ちです。決してあなたにだけ苦労を押し付けるような真似はしないとお誓いします」


 その流れに乗るように、ウッケン市長までもがそう言い出す始末だ。

 おいおい、実際アルスの護衛などで動き回ることになるのは俺たちプレイヤーを始めとした冒険者なのだから、そういうことは事前にこちらと打ち合わせしてもらいたいものだな。




 そんな愚痴を心の内で呟いた数時間後、俺はアルスの護衛役として、皇帝となるための試練の地へと同行することになったのだった。

 そして俺と同じく貧乏くじを引いたのがロヴィンであり、喜んで同行を申し出たのがゼロたちパーティーの六人だった。


 その時、先頭で警戒しながら進んでいたロヴィンから警戒を促す笛の音が響いてきた。すぐさま間延びしていた列を縮めて臨戦態勢へと入る。

 アルスが次の皇帝として指名されたことはすでに周知されている。護衛は魔物だけでなく、他の派閥からの襲撃に備えたものでもあった。


「敵は?」

「六人です。多分どこかの派閥に雇われた冒険者崩れだと思います」


 冒険者崩れ、すなわちプレイヤーということか。それなら死ぬこともないから思いっきりやれるな。イベントの関係なのか、俺たちは全員『プレイヤー同士の攻撃判定有無の設定』が強制的にオンにされていた。


「油断はするなよ。だが全力でいけ!」

「はい!」


 俺と同じ前衛パーティーとなるゼロともう一人の戦士のカズキ、そしてヒーラーのミツルが元気よく答えた。

 ちなみに回復魔法も使える格闘家のジーンと、フィクとシスの二人組の魔法使いが後衛となるロヴィンのパーティーとなっている。彼らは牽制の魔法やスキルを発動できるように準備を整えながら、周囲を注意深く見回していた。


「僕たちを囲もうと散開しているようですね」

「好都合だ。各個撃破する。ハリューさん、後方の一人をお願いします」

「お任せを」

「ロヴィンたちは右手の二人を。そのあと余裕があれば反対の二人の援護を頼む」

「了解」

「ゼロは左手前方を、カズキは左手後方のやつだ。無理だと思ったら時間を稼ぐだけでもいい。ミツルは二人の援護だ」

「らじゃ!」

「俺は正面のやつを相手取る。今は情報を得るよりも目的地にたどり着くことが優先だ。生け捕りにしようなんて考えずに、きっちり引導を渡してやれ!」

「了解!」


 そしてロヴィンの先制の一撃を合図に戦闘が始まった。彼の矢は狙い通り右手前方に潜んでいた敵の右肩に命中し、HPとともに攻撃手段を奪う。

 そこにシスの『氷針』の魔法が突き刺さると、HPは残り一割を切っていた。さらに追い打ちとしてフィクが『火弾』を放つと、襲撃者の一人は何もできずに、死に戻ることになったのだった。


 その鮮やかな連携に目を奪われていたのか、右手後方の敵はジーンに接近されると、なす術もなく人間サンドバックとなって、約一分後にはこと切れる羽目になった。


 後方の敵は……、ハリューさんの一刀の下に切り伏せられていた。合唱。


 そして、左方の二名は初めこそ威勢が良かったものの、手の空いたロヴィンたちが援護に回ると急に勢いを弱めていき、最期は二人の必殺技――もちろん技の名前を叫んでいる。ロマンだ……――をくらって死に戻りとなった。


 そんな感じで、残るは俺の正面に立つこの男だけとなったのだが、この男、やたらと堅い。


「どりゃ!」

「ふん!」


 今も渾身の一撃のつもりで叩き付けたのだが、その大盾に阻まれてしまった。熟練の盾職の動きだ。もしも散開せずにパーティー戦で挑まれていたら、こいつをなかなか抜くことができずに苦戦したかもしれない。


「やるな!だが、ここまでだ!」


 後輩たちが見ている前で、無様な姿は見せられない。下から掬い上げるような攻撃から、全体重を乗せた振り下ろしに繋げる。


 ガキン!


 金属同士がぶつかり合う硬質な音が響く。これも受けきるか!?しかし連続攻撃に体勢が崩れている。すかさず大盾の縁をもって捻るようにすると、それまでとは打って変わってよろめきだす。その無防備になった胴体へ向けて、俺は横薙ぎの一撃を叩き込んだのだった。


必殺技を叫ぶのはロマンです。

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