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この『アイなき世界』で僕らは  作者: 京 高
6 暗躍する者たち
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71 にゃんこさん現る!

 『シークレット』効果の使えない説明を見て蓄積したストレスを追いかけてきた魔物の群れを相手に発散して、ボクたちはホクホク顔でアイテムを回収していた。

 牙に爪に角に毛皮に触角に毒針に根っこに種に大量、大猟。物資が不足しているから、高く売れそう、じゃなくて!値を釣り上げられそう、でもなくて!皆に喜んでもらえそうだ。


 スタート地点である古都ナウキから離れているので、出現する魔物は上位種族に変化して多少は強くなっているけれど、森の中や洞窟の中などの特定の場所――いわゆるダンジョンというやつね――に比べると弱めに設定されている。

 ラジア大洞掘内では、上位職へと転職できる二十レベルあれば、町から町への移動には困らないようになっているとか。まあ『神国』とか例外はあるみたいだけど。


 例外といえば、あの鬼も特別な強さだった。ランダムで遭遇するフィールドボスだったのかな?帝都周辺とか、大塩湖周辺でそういう事例が報告されているらしい。

 だけど、それぞれの町で警告を含めて、情報がもらえるようになっているという話だった。アルス君たちであれば、必ず教えてくれるはずだと思うんだよね。


 それがなかったということは、誰かが近くのダンジョンから連れ出してきた、という可能性が一番高い。あんなに強い鬼や魔物がうようよしているダンジョン……。

 うん、街道からは絶対に外れないようにしよう!


「ふう……。後もう少しかな」


 頭では色々と考え事をしていたけれど、手の方はちゃんと解体作業に従事していた。うーん、プレイヤー自体はボク一人だけだから、こういう時には結構手間だったりするんだよね。

 範囲内の倒した魔物を一度に解体できる、一斉解体とかの技能がないのかな?……やっぱり需要がないような気がする。ボクだって、こんなにたくさんの魔物を狩ることは滅多にないことだし。


「ぷぎゅー!」


 突然ニーノが警告の鳴き声を上げた。それを聞いて、遊んでいた残りの子たちもボクの周りに集まってくる。


「誰だか知らないけれど、今、忙しいからもう少し待って」

「あ、えと、それじゃあ待っているわ」


 唐突なボクの言葉に了承の意が返って来た。魔物たちを倒してからかなりの時間が過ぎていたから、急がないと消えてしまうのだ。

 話が通じない連中だと、それでも近寄ってくるのだけど、今回の相手はちゃんと聞き入れてくれたみたい。

 そしてそれから十分後、何とか一体残らず解体することができた。


「はあ、疲れたー。これはみんなにも解体の技能を覚えてもらった方がいいかもね」

「手のないテイムモンスターに無茶言ってるんじゃないわよ!」


 予想外の方向から突っ込みが飛んできた。


「あ、もう終わったから、出てきてもいいよ」

「あ、あら?そうなの?それじゃあ……。コホン!あの『はぐれ鬼』を倒すだなんて、可愛い顔しているのになかなかやるじゃない!」


 そう言いながら街道からの坂を上って来たのは、


「二足歩行アンド喋るにゃんこキターーーー!!!!」


 だった。

 グレーの毛並みに赤いチョッキが映えている。頭の上には小さな帽子がちょこんと乗っていて、なかなかのお洒落さんだ。


「な、なによ突然!?」


 ボクの――魂からの――叫びを聞いてにゃんこさんは目を白黒させていた。そしてうちの子たちは、よく分かっていないながらもボクのハイテンションに触発されて走り回っている。


「うわはー!か、可愛いにゃあ!スクショは撮れるのかにゃ?」


 思わず猫語ににゃってます。ところが、急いで起動して撮ろうとすると〈撮影禁止対象〉の文字に覆われていた。


「おやおや?」


 頭の上のマーカーを確認してみると、青だ。つまり彼女?はNPCだから撮影できるはずなんだけど?

 ちなみにプレイヤーの場合は、本人に許可を貰わないと撮影そのものができない仕様になっている。 さらに許可がなく写り込んだプレイヤーは全て、運営さんのアバターである『愛ちゃん』と『ナッキー君』に変換されるというびっくり仕様でもある。


 たまに、もとになったプレイヤーがしていなかったはずの動作――こちらに向かってVサインなど――をしていて、「心霊写真だー!」と定期的に話題になっている。

 ものすごく蛇足な話だけど、心霊写真である事の証拠にするために、スクショは同時に二枚以上撮ることが推奨されている。


 そんなプレイヤーのスクリーンショット事情はともかくとして、このにゃんこさんは写すことができないみたいだ。


「私を記録に残そうとしているようだけど、無駄よ。私は堕ちて彷徨う猫(アストレイ・キャット)。居るようでいない存在なのよ」


 中二病チックな痛い台詞だけど、にゃんこさんだから問題なし!


「それはともかく……。あなたたち、随分と仲が良いみたいね?」

「ボクとこの子たちのこと?もちろん仲良しだよ」


 にゃんこさんの視線が粘つくように、そしてその声音が冷え冷えとしたものに変わっていたけれど、それに気付かなかったように軽く返事をする。

 ここ一カ月くらいでいろんな会議に出たり、大勢の人と会ったりしたからね。このくらいのポーカーフェイスはできるようになっているのだよ。


「そう。仲良しなのね……。私はね、そういう仲良しな者たちを見ると、苛立ってくるのよ……!」


 んっきゃー!?

 怪談話のように、一気に怖い化け猫っぽくなっちゃった!?瞳孔が窄まって、口なんて頬まで裂けているよ!


 ……あれ?特に変わってないかも?


 大きくなっている訳でもないし、尻尾の数が増えている訳でもない。よくよく見れば顔もラブリーなにゃんこさんのままだ。声の方も、怖がらせてやろうと無理して低くしているようで、なんだか微笑ましさすら感じられる。


 この感じどこかで……。ああ!そうだ、アルス君やゼロ君たちと同じだ。彼らが背伸びして大人ぶろうとしている雰囲気とそっくりなのだ。


「……どうして怖がらないのよ?っていうか、ニヤニヤするな!」


 そんなこと言われても、一回そう思ってしまうと、ほのぼのとしたものにしか見えなくなってしまっていた。そして、癇癪を起こすその姿も可愛い。


 あ、うちの子たちの可愛さは別格ね。


「……こうなったら実力行使よ!全員まとめてあの世へ送ってあげるわ!!」


 んっきゃー!?二回目!

 にゃんこさんが差し出した両手の先に巨大な炎が生み出されていく!?それってもしかして火属性高等魔法の『業火』か、最強の『極炎』ってやつ!?


「うふふふふふ……。何もかも燃やし尽くしてあげる」


 にゃんこさんの目がイッちゃってる!


「お止めなさい!」

「あぐっ!?」


 どこからともなく氷の塊が飛んできて、炎をかき消してしまった。いくらMPをつぎ込んだとしても『氷針』ではそんなことはできない。ということは、今の水属性高等魔法の『氷結』ということになる。


 どんなすごい魔法使いが助けてくれたのかと見回してみると、少し離れた場所に艶やかな漆黒の毛並みのにゃんこさん――二匹目!――が立っていた。


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