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この『アイなき世界』で僕らは  作者: 京 高
6 暗躍する者たち
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70 決意と第一歩

「ぶうううもおおおおお!!!!」


 傷ついた我が子たちを見たお母さんワイルドボアは、その怒りを炎の鎧に変えて!?鬼めがけて突進して行った!?ちょっと、お母さん!?知らない間に進化しちゃったの!?

 一方の鬼は強敵の出現にも慌てた様子はなく、にやけた顔のままお母さんに向き直った。

 ムカ!余裕でいられるのも今のうちなんだからね!うちの子に手を出したことを空の彼方で後悔しなさい!


 そして衝突!


 鬼はボクの予想通り撥ねられ……、


「うそ!?デカファングよりも強いってこと!?」


 ることもなく、受け止めている!?


「ゲヒッ!?」


 あ、だけど、炎の鎧は熱いみたいだ。本当に少しずつだけどHPが減少している。

 いけない、見とれている場合じゃないよ。とりあえず鬼はお母さんに任せて、ボクはボクにできることをしないと!


「お母さん頑張って!でも無理はしないでね」

「ぶぅ!」


 応援の一言を残して、テイムモンスターたちへと駆け寄る。


「ふぎゅ」

「きゅう」

「しゅぴぃ」


 体格変化で小さくなってボクの胸に飛び込んでくる子どもたちを優しく抱きとめてあげる。近くで見ると深い傷はないものの、細かい傷が体中に付いていた。


 あんにゃろお!わざといたぶるような真似をしたな!後で絶対に泣かしちゃる!!


 だけど今はみんなを安心させることの方が大事だ。


「置いてきぼりにしてごめんね。怖かったね。でももう大丈夫だからね」


 マジックボックスから回復薬を取り出して振りかけると、あっという間に傷が塞がっていった。だけど、心の傷は癒えないのか、揃って頭を擦りつけている。


 その姿を見てはっとした。


 ビィトは生まれたばかりで、イーノとニーノだって本当はまだまだ甘えたい盛りのウリボウだったのだ。

 ボクなんかよりもよっぽど早く成長して、どんどん強くなっていたから忘れかけてしまっていた。これじゃあテイムマスター失格だ。


「ごめんねみんな……。みんなが守ってくれている分、ボクもみんなのことを守らなくちゃいけなかったのに……!」


 この子たちのためにも強くなろう。改めて心に誓った。

 そんなボクの決意が伝わったのか、それとも丁度落ち着いてきたのか、子どもたちは体を離していた。


「こんな頼りないご主人様だけど、これからも一緒にいてくれる?」

「ぶも!」

「ふご!」

「ぴしゅ!」


 もちろんだと言うように、再び三匹が体をこすりつけてきた。うん。一緒に強くなっていこうね!


「さて、と……。それじゃあ、反撃に移ろうか」


 体中から闘志を立ち昇らせて、ゆらりと立ち上がるボクたち。さらに三匹は体格変化で強大化していく。まずはあのバカ鬼に身の程というものを思い知らせてやりましょうか!


 振り返ると、お母さんが鬼を相手に一進一進(・・・・)を続けていた。鬼はじりじりと焼かれながら押されていたけれど、まだまだHPは残っている。

 これはもう、参加せざるを得ない、よね。


「お母さん、下がって!」

「ぶもん♪」

「熱かったでしょ?冷やしてあげるよ『水撃』!」

「ベビャッ!?バフォッ!」


 お母さんがひらりと華麗に身をひるがえしたことで、つんのめった鬼に大量の水をぶっかけてやる。


「どう?まだ熱い?それじゃあ今度は『氷針』!」


 鋭さよりも凍りつかせることに比重を置いて氷の塊をぶつけると、濡れた鬼の体は狙い通りにカチコチの氷に覆われていった。『アイなき世界』での魔法は、基本の形は決まっているけれど、こんなふうに多少のアレンジができるようになっている。


「みんな!今だよ!やあっておしまい!」

「ごっふっ!」


 ゴガン!

 先陣を切ったニーノの額当ての一撃を受けて、鬼が吹っ飛んで行く。体の周りを覆っていた氷が砕け散ってキラキラ輝いている。でもその中にいるのは不細工な鬼だけどね。


「ふごご!」


 続いたのはもちろんイーノ。額の角で、ザシュッと切りつけていく。

 ……あれ?見間違いかな?イーノの角が刃物のように見えるんですけど……?


「ガアアアア――ボボホッ!?」


 たまらず悲鳴を上げた始めたけど、うるさかったので大きく開いた口に小さめの『水撃』を撃ち込んだ。そして悶絶しているところに取りを飾る――ダジャレじゃないよ――ビィトがフライング……、


「ぴいいぃぃよっ!」


 ヒップアタック!


「ガ……ゴ……」


 天高くから降ってきた蛇尻尾付き巨大ヒヨコの一撃を受けて、さすがの鬼も瀕死となったようだ。

 これまでだったらレベルアップのためとか言って――それもあるのは確かだけどね――、後は三匹に任せていただろう。でも、ボクも強くなるって決めたばかりだ。止めを刺すのはボクの役割のはずだ。


「……これで終わりだよ。『地槍』」


 無数の土の槍に貫かれて、鬼はついに倒れ伏したのだった。


 だけど、強敵を倒した喜びなんてものは全く感じられない。代わりに込み上げてきたのは強烈な吐き気だった。

 掲示板などで書かれているのを見てある程度覚悟はしていたけれど、予想していた以上に人型の魔物を倒すのはキツイ。

 思わず、リアルで倫理感が薄れることのないように運営が嫌悪感を強めているのではないか、っていう戯言(たわごと)――PKができる時点で倫理観も何もあったものじゃないって話――を信じたくなったよ。


 心配そうに近寄ってくる三匹とお母さんを笑顔で撫でていく。

 あっ!そういえば色々と聞きたいことや確認したいことがあったんだった。


「お母さん!さっきの炎の鎧みたいなのなに!?いつの間にあんなことができるようになったの!?」

「ぶお!?……ぷー。ふご!ごっごー」


 ちょっとー!なに「あ、時間切れになっちゃったわ。またねー」みたいに言ってますか!


「ちゃんと説明して!……って、あー、帰っちゃった……」


 に、逃げられた……。

 お母さんが進化したのか、それとも『ワイルドボアアタック(助けて!お母さん!)』のスキルが強化されたのか、どっちなんだろう?スキルの説明欄にはこれまで通りの解説しか記されていなかった。切り札なんだからちゃんと性能を理解しておきたいんですけど……。


 仕方がない、そちらは一旦保留にするとして、


「イーノ君、大事なお話があります」

「ぶひっ!?」

「角が剣のように変化しているように見えるのですが、どういうことでしょうか?」


 この子たちの身の安全に直接かかわってくることだから、こちらはちゃんと把握しておかないと。

 しかし、返ってきた答えはイーノにもよく分からないというものだった。全員揃ってウンウン悩むけど、思い当たる節がない。

 思考を巡らせていると、いつしか、さっきのお母さんの逃げっぷりを思い出していた。


「あそこまで華麗に逃げられたのはトアル師匠以来かな」


 あの自称天才錬金術師は今頃どこで何をしているのだろう。どこにいたとしても元気だっていうことだけは間違いないだろうけど。

 ん?何か大事なことを忘れているような気がする。錬金……?特殊技能……?装備品……?


「あーーーーーーー!!!!」


 突然のボクの大声に三匹が驚いて飛び上がっていたけど、それどころじゃない!

 心当たり、ありました!

 テイムモンスターのみんなの装備には『大きさ自動調節』という効果が付いているんだけど、もう一つ謎な効果が付加されていたのだ。


「『シークレット』!?」


 急いでみんなの装備品を確認してみると、『シークレット』の説明欄が解放されていた。

 一体どんな効果なのか?期待を胸に開いてみると……、そこには〈秘密。色々起きる〉とだけ書かれていた。


「その色々が知りたいんだっていうの!運営さん、仕事しろー!!」


 そんなボクの叫びは『光雲』へと吸い込まれていったのだった。


人型云々は本当に戯言です。

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