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この『アイなき世界』で僕らは  作者: 京 高
6 暗躍する者たち
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69 まもののむれがあらわれた!

 ラジア大洞掘の形をものすっごく簡単に説明すると、直角二等辺三角形を逆さまにした形だと言えるかもしれない。

 その左側、つまり南から北西への辺を外側にふくらませて、逆に北東部の先端を削ってやると、あら不思議ラジア大洞掘のできあがりだ。


 古都ナウキを中心とした特別自治区域はそのほぼ中央にあり、モーン帝国の帝都は南方にある。

 一方、アルス君が治めるズウォー領は自治区域の北東から西側にかけて接していて、その領土は北に大きく広がっている。土地の広さだけでいえば、帝国でも一、二を争う程の大きさなのだそうだ。


 せっかくラジア大洞掘全体に話が及んだのだから、観光名所なども紹介しておこうか。


 絶対に外せないのが、『光雲』のさらに上の天井までつながっているという、グレイト大地柱(だいちちゅう)だ。太さは直径で十キロにもなり、(ふもと)の西側には、町や鉱山が広がっている。

 なぜ西側だけなのかというと、反対の東側は大量の水が伝い落ちてくるグレイトの滝となっているからだ。この水はそのまま二本の大河となり、一本は北上して大塩湖へと注ぎこまれ、もう一本は東へと向かい、やがて壁の向こうへと消えていくことになる。


 この二本の大河と大塩湖に囲まれた地域が、数少ない帝国の領外ということになる。当初、東にあるということで古代か中世のニポン的な国があるのかと思われていたのだけど、そこにあったのはドワーフや獣人、そしてエルフや小人といった、亜人種たちの国だった。

 託宣――神のお告げというやつだね――による、神様たちが直接治めている国という触れ込みで、正式名称は『東方神治国(とうほうしんちこく)』。


 ちなみにこの神様たちというのは『神殿』でまつられている神様たちと同じなのだけど、教義や捉え方がかなり違っているので、両者は余り仲がよろしくなかったりする。


 現在、『始まりの地』に最も近い亜人種たちの国ということで、けもなーや、えるふすきーな人たちの聖地として大人気の観光ポイントになっている。そのためなのか、プレイヤーからは『神国』(かみこく)なんて呼ばれているんだそうだ。

 特に都にある木造の大聖堂は一見の価値アリとのこと。

 ただし、入国のためにはあるダンジョンを踏破しないといけないので、ソロならレベル三十、六人のフルパーティーでもそれぞれレベル二十五は必要だとされている。


 ボクたちと対立関係となってしまったモーン帝国でいえば、やっぱり北東部の大塩湖畔が人気だ。お肉に飽きたプレイヤーたちが「魚食わせろ!」と、大量に移住しているとか。あちらではお刺身がブームになっているそうだ。


 そして、帝都もお勧め観光地の一つだ。皇帝が住む宮殿や、その周囲の貴族街は、贅だけでなく高度な技術を惜しげもなく使った、見ごたえのある建築群だ。

 帝都から西に進んだ所にある、ロピア大洞窟へと繋がる通路の前に建てられた関所と宿場町は、この帝都の宮殿と貴族街を模して造られたと言われている。


 以上、『地下世界を歩く、その一、ラジア大洞掘編』を参考にリュカリュカがお送りしました。

 またね!




 と、まあ紹介した観光地に行く訳でもなく、ボクとテイムモンスターのみんなはウェノトの町から南の帝都へと繋がる街道をてくてくと歩いていた。いつかこの子たちと一緒に観光地巡りをしてみたいものだね。


 さて、主要な街道とはいってもそこは『アイなき世界』だから、時には魔物たちが現れる。しかも先日のナウキへの侵攻のために人手をとられてしまったので、警備が手薄になってしまい普段よりも出現し易くなっているそうだ。その結果、


「どうしてこんなに一度に出てくるかな!?」


 大量の魔物に追いかけられていた。

 長く鋭い牙のサーベルキャットに、巨大な角を持つ暴れ鹿。数で押しつぶしてくるアリアリアントと、雀どころか鷹ほどの大きさのホークホーネット。

 変わり種では切り株に擬態して近寄って来た者に襲いかかるコシカケルナなんていう魔物も追いかけっこの列に参加していた。


 数十体の魔物を引き連れて先頭を走るのはボク一人だけ。テイムモンスターたちとは分断されてしまっていた。

 幸いにも敵一体一体のレベルはそれほど高くない。落ち着いて対処しさえすれば、体格変化で大きくなるという切り札も持っているあの子たちが負けることはないはずだ。


「ぷぎゅーーー……」


 後方から弱弱しい鳴き声が響いてくる。


 あの声はニーノ!?


 なにかあったんだ!


 楽観視していたさっきまでの自分を叱りつけてやりたくなる。とにかく、急いでみんなの所に行かないと!


 スピードを殺さないようにできるだけ小さく円を描くように回って、魔物の群れがやってくる方向へと走り出す。

 まさか、今頃になって立ち向かってくるとは思ってもいなかったのだろう、魔物たちは驚いて止まろうとした。


 彼らの敗因はそこだった。その勢いに任せて飛びかかってこられていたら、きっとボクは死に戻りをすることになっていたと思う。

 だけど彼らは止まろうとした。

 さて、列を作って全速力で走っている時に、前の人が急に止まろうとするとどうなるだろうか?

 答え、後ろの人がぶつかる。


「『氷針』『氷針』『氷針』『氷針』!」


 先頭の魔物たちの足を凍らせて急停止を手伝ってやると、面白いように次々と魔物たちがぶつかっては、衝撃で目を回していく。


「せーのっ!」

「グギャ!?」

「ジャ!?」

「ギチギチ!?」


 大きくジャンプして団子状態になった魔物たちに飛び乗ると、その頭を踏みつけて駆け抜ける!

 ゲームの身体補正さまさまだ。似たようなことをリアルでやれと言われても、絶対にできない自信があるね。


「よっと!」


 地面に降りると、そのまま走り始める。魔物を倒すよりも、あの子たちの元に戻ることの方が大事だ。

 こうなったら出し惜しみなんてしていられない。『ワイルドボアアタック(助けて!お母さん!)』をいつでも発動できるように準備をしておく。


 みんながいるはずの場所へ走る、走る、走る!

 簡易マップに表示されたわずかな間が遠い。

 いつの間に追い立てられたのか、うちの子たちは街道から逸れて草原地帯にいるようだ。息が切れて、足がもつれそうになるのを堪えながら、なだらかな坂を登る。


 そして遮るものがなくなったボクの視線の先にいたのは、傷だらけになったうちの子たちと、止めを刺そうと近寄っていく、巨大な鬼の姿だった。


「『ワイルドボアアタック(助けて!お母さん!)』」


 間髪を入れずにボクは切り札を切っていた。


ラジア大洞掘について、色々書いてみました。これまでと矛盾しているところがあったらごめんなさい。


実は『神殿』と協力して『転移門』を管理している、『賢人の集い』の中心地ホマックもこのラジア大洞掘にあるのですが、一般には公開されていないので、観光地にはなっていません。

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