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この『アイなき世界』で僕らは  作者: 京 高
29 北西地域の闇
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535 魔王様はプレイヤー

「いやあ、さっきみたいに小さなヒントは出しているんだけどさ。魔族はNPCだっていう認識ができてしまっているからか、プレイヤーだとはまず気が付いてもらえないんだよなあ。……あ、魔族がNPCだっていうところは正解だから」


 グドラク君、ああ、言い間違えると面倒なことになりそうだからミロク君で統一しておこうか。

 久方ぶりにプレイヤーとして扱われることが嬉しかったのか、随分と楽しそうに自分のことについて話してくれた。


「つまりあなたは第二陣のプレイヤーで、職業をランダムにしたところ『魔王』になってしまった、ということ?」


 私を含めた第三陣のプレイヤーまでは種族を変更することはできなかったはず。となれば魔王ではあるけれど魔族ではなく人間ということになるようだ。


「魔法使いのお姉さん、正解。まあ、だからと言ってオレが運営黙認のチート野郎だってことに変わりはないんだけどさ」


 ただし、どうしてそうなってしまっているのか、彼自身まったく身に覚えがないとのこと。

 最初期には運営への問い合わせやクレームも何度か行ってはみたものの、「仕様です。楽しんで頂ければ幸いです」的な定型文しか返ってこなかったため、すぐにあきらめてしまったのだとか。


「今から思い返してみると、困っていた反面、喜んでいたところもあっただろうし」


 アバターの外見からそれほど違いがないのであれば、リアルの彼は十代後半の男の子である可能性が高い。特別扱いされれば嬉しく思って当然だろう。

 ましてや数人から数十人で戦うことを前提として難易度設定されているレイドボスすら瞬殺できるほどの強さを持っているのだ。

 私とて同じ境遇になったとすれば、ワクワクする気持ちを一切持たずにいられる自信はない。


「とりあえず、プレイヤーだという特大の秘密を明かしたってことで信用してもらえるとありがたいかな」


 ミロク君的には絶対に隠し通そうとするつもりではなかったようだ。が、プレイヤーはそれこそエンジョイ勢からガチ勢まで様々だ。

 配下の魔族たちは未だに微妙な立ち位置となっているようだから、彼らことを考えると誰彼構わず話して回ることはできなかったのだろう。


「了解よ。それと一応聞いておきたいのだけれど、この秘密を知っている人は他にどれくらいいるのかしら?」

「リュカリュカちゃんには話しているし、ゲームを始めて最初の頃に遭ったバックスというプレイヤーには気が付かれているだろうな。はっきりと調べた訳じゃないけど、その二人の交友関係先にはそれとなく知られていると思ってるよ」


 バックスなるプレイヤーは今やモーン帝国の重鎮のような扱いとなっている。

 帝国が旧『神殿』勢力の批判を行った、現主流派である『聖神教』をいち早く容認して後ろ盾となったことにはそうした事情も存在していたのかもしれないわね。


 加えて言えば、ジュンちゃんが所属しているギルド『諜報局UG』もまた帝国上層部とのつながりが深いという話だったはずだ。

 が、視線を隣へと向けてみると、ジュンちゃんはゆるゆると首を横に振っていた。とうやらギルドマスターであるユージロやサブマスクラスまでで話が止められていたようだ。


「内容が内容だから、ギルドメンバーだとしても迂闊には話すことができなかったんだと思う。それに、こうやってミロク様が出てきたところを見ると、私たち以上に強力な諜報網を作り上げているみたいだから、余計に話せなかったんじゃないかな」

「薬師のお姉さんは諜報系ギルドのメンバーだっけ。そっち関係のギルドには善意の協力者として適度に情報を渡させてもらっているよ」


 魔族の有能さをそれとなく伝えるためと、敵対する意思はないという表明であるそうだ。


「話が長くなってしまったな。それじゃあ、そろそろ黒幕のところへ突撃するとしようか」


 全ての疑問が解決したわけではないけれど、そんな時間がないことも確かだ。

 ちなみに、彼には既に手を貸してもらっている状態なので、今さら本当に味方なのかと疑う意味はない。

 しかし、一点だけ確認をしておかなくてはならない。


「黒幕の居所が分かっているの?」

「一番確率が高そうな場所、かな。メタなことを言うと、イベントだからこっちの動きによって居場所が変わってくると思う。だから例えば王宮に向かえばシプドグ侯爵たち新興貴族の面々と一緒になって正面から戦う展開になるだろうし、別の場所ならひっそり待ち構えていた相手とご対面になるんじゃないかな」


 つまりは既にイベントの最終局面に突入しているので、どう行動しようともラスボスとの戦いに雪崩れ込むということになる、らしい。


「人質を取ろうとするだとか、手下をけしかけてこようとするだとか、そういう細かい部分に違いは出てくるかもしれないけど」


 よほどの手抜きイベントでない限りは、そのくらいの差分は用意しているだろう。

 むしろそのくらいはしてもらわないと、どこに向かうかと頭を捻る甲斐がなくなるというものだ。


 まあ、いくつ選択肢が用意されようとも、私たちは行き先を変えるつもりはないのだが。


「向かう場所はノースフェル大公の屋敷よ」

「うん。俺たちが探っていた情報でも、そこが一番怪しいとなっているよ」


 ラーラさんの危険の度合いが上がったという意味では、喜んでいられない情報よね。


「あ、ちょっと待った!そういえばお姉さんたち、この前からの連戦で万全とは言えない調子だったよな?」


 いざ出発!と思ったところで引き止められ、思わずつんのめってしまいそうになる。

 わざとやったのだとすれば、ミロク君も相当いい性格をしているということになりそうね。ついついムッとした顔になってしまったが、彼の方は一切怯んだ様子を見せることはなかった。

 これでも私はそれなりの外見なので、リアルを含めて怒ると「雰囲気がある(意訳)」とよく言われるのだが……。

 もしかすると耐性でもあるのだろうか?


「んー……。とりあえずはステータスを完全回復させて、バフを盛っとけばいいか。後は薬師のお姉さんに戦闘で便利に使えそうなアイテムの材料になりそうなものを渡しくかな」


 と独り言を言ったかと思えば、次の瞬間私たちをキラキラとした光が包み込む。

 一体何がと口にするよりも先に、先日の魔物との戦いからずっと続いていた倦怠感や体の重さといったものがきれいさっぱり消えていることに気が付いた。


「……あの魔族が言っていた「究極無敵のチート野郎」の意味が少しは理解できた気がする」


 ジュンちゃんの呟きに同意せざるを得ない。

 なにせ私のバッドステータスは時間経過でしか直す方法がないと言われていたものだったのだから。


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