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この『アイなき世界』で僕らは  作者: 京 高
4 またまた開催!プレイヤーイベント!
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53 不穏な空気

 結成予定のテイマーギルド――まだ名前が決まっていないんだね……――が呼びかけ人となり、古都ナウキに拠点を置く一般ギルドに緊急招集がかかった。

 他にもたまたま古都に居合わせた有名プレイヤーや高レベルプレイヤーなども呼ばれ、会場である『美味倶楽部』の大会議場――主に新作料理の発表会場として使われているそうだ――は騒然としていた。


「場違い感が半端ないんですけど……」


 そんな中に僕、ロヴィンは今度の祭りの計画者の一人として強制的に参加させられていた。


「街の有力者たちに協力を要請するとなると、現状お前を通すのが一番早くて確実だからな。まあ、諦めろ」


 隣にいたバックスさんから、ありがたくないお言葉を頂く。

 現在この場に集まっているのはプレイヤーばかりだった。なぜなら、その内容が、ここ数日古都ナウキ周辺に現れている謎のNPCに関係するものだからだ。

 NPC同士にどのような繋がりがあるのか分からないので、まずはプレイヤーのみで情報を共有して、場合によれば何らかの対処法を考えよう、ということになったのだった。


 予定していた時間になったところで、部屋の奥に作られた壇上に、呼びかけ人であるテイマーギルドの長――になる予定――のみなみちゃんさんが現れた。


「今日は忙しい中集まってくれてありがとう。初対面の人もいるようだから一応挨拶しておくわね。私はビーストテイマーのみなみちゃんよ。長い付き合いになるかどうかは分からないけれど、よろしくね。

 知っていると思うけれど、今、この古都ナウキの周辺で怪しい男たちが動き回っている。前置きを長々と話しても眠くなるだけだから、早速本題に移らせてもらうわ。まずは調査した結果からお願い」


 そう言うと、みなみちゃんさんと入れ替わりに一人の男性が上がってきた。


「『諜報局UG』のユージロだ。我々や有志のプレイヤーによる調査の経過を伝える」


 一般のギルドにしては珍しく、『諜報局UG』は構成員の多くが盗賊や密偵などを職業とするプレイヤーたちだ。

 そのため、色々と危険でやばい情報を持っているという噂もあるけれど、ダンジョン探索などの際に鍵開けや罠回避の相談に乗ってくれたり、場合によってはリーズナブルなお値段で盗賊系の技能を持つプレイヤーを派遣してくれたりする、親切なギルドとしても知られている。


 おっと横道に逸れた。ユージロさんの話によると、怪しいNPCの男たちは一組三から六人で、古都の周りの様々な場所に現れているらしい。

 そして主に魔物を倒しているのだけど、誰一人として『冒険者協会』に足を運ぶ者はいないということだった。


「それらしい恰好をしているが、連中は冒険者ではない。その根拠がこれだ」


 と、スクリーンに写されたのは男たちの戦っている様子を捉えた動画だった。


「いくつかのグループの映像を繋ぎ合わせているのだが、連中の動き、特に剣を振る動作を良く見ていて欲しい」


 剣を振る動き?

 なんだろう?


「……そういうことか」


 バックスさんを始め何人かの人たちが理解できたのか、会場のあちこちから「ああ」とか「そうか」という声が聞こえてきた。

 僕も?????(ハテナ乱舞)状態だ。さっぱり分からない。

 あ、ここで答え合わせとなるようだ。


「男たちは皆、剣を振る動作が同じ、つまりは同じ訓練をしてきた者たちだと言える。これまで発見された男たちの数は八十六人だが、それだけの数の人間が修練できるような場所は市井(しせい)にはない。よってこの男たちはどこかの国の軍……、いや、はっきり言おう。モーン帝国の軍人たちだと思われる」


 ユージロさんの言葉に会場内がどよめく。

 モーン帝国は、このラジア大洞掘のほとんどを支配する『アイなき世界』最大の超巨大国家だ。大洞掘のほぼ中央に位置する古都ナウキとその周辺のいくつかの町や村は、モーン帝国から自治を許された特別区に当たるのだ。


「さて、連中の正体が明らかになったところで、次にその目的だ。魔物を減らすという意味合いもあるのだろうが、魔獣の森や、常闇の洞窟、星空の洞窟のような強めの魔物が出現する場所でも目撃されていることから、魔物を倒すことで我々の強さを測っているのではないかと考えられる」


 嫌な予感がしてきた。そうなると連中の目的というのは……?


「確定ではないが、この古都ナウキの支配、というのが一番確率が高いだろう」


 やっぱりそれか。でもどうして今ごろになって?


「これもはっきりしたことは言えないが、恐らくはラーメン騒動などで、帝国の琴線に触れる何かがあったんだろう」


 プレイヤーによる新しい技術や発想を狙って動いている、ということだろうか。

 その時、ざわめく会場を横切り、壇へと近づく人影があった。


「……。たった今入ってきた情報を伝える。男たちの仲間だと思われる人物がPKギルドの『ブッコロシ隊』を始めとしたいくつかの非合法ギルドへと接触したらしい」

「外と中、両方から切り崩していくつもりか……。これは連中、本気で潰しに来るようだな」


 バックスさんの呟きが随分と遠くから聞こえてくるような気がしていた。


「静かに!静かにして!」


 一気に騒然となった部屋に、みなみちゃんさんの声が響き渡った。


「釈然としない皆の気持ちは分かるわ。だけど騒いでも嘆いてもどうなるものでもない。冷静に、どうするべきかを考えましょう」


 その言葉にほとんどの人は冷静さを取り戻して、今後の対応へと思考を切り替えたみたいだ。だけど、中にはそうじゃない人もいたようで、


「俺たちは別の街に拠点がある。悪いが帰らせてもらう!」


 と怒鳴っている。


「普段は攻略最前線を気取って偉そうにしていても、いざとなるとあんなものか」


 バックスさんの言う通り、周囲から呆れたような目で見られているその人たちは小物感が満載だった。


「今日のことを外部に漏らさないと誓ってくれるなら帰ってもらっても構わないわよ」


 そんな彼らにみなみちゃんさんはあっさりと許可を出した。


「でも、連中がやってくるのは、タイミング的に第三陣がプレイを開始した頃になるわ。すなわち大規模なイベントである可能性が高い。実装されるという噂の多人数対応のシステムにも合致するわ。なにがどうなったとしても、決めたのはあなたたちなのだから、逆恨みだけはしないでね」


 からかうような彼女の言葉に、会場内の空気がふっと明らかに軽くなった。

 そうだ、これはゲームなのだ。どんなものであっても楽しんだ者勝ちなのだ。感覚などが余りにも現実的なために、僕を始め、多くの人がそのことをつい忘れていたようだ。


「どうする?」


 再びみなみちゃんさんから問われ、別の町から来た彼らも覚悟を決めたようだ。


「よし!では対応策を考えていきましょう。上手くすればモーン帝国だけじゃなく、PK集団にも一泡以上を吹かせてやれるわよ!」


今更な説明になりますが、当初の予定では『ギルドなあれこれ』というお話にする予定でした。

そのため、今章ではちょこちょこと新しいギルドが登場しています。


『諜報局UG』のUGはアンダーグラウンドの略です。そのまんまです。

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