51 依頼達成の『評価』
男たちがいなくなった後、ボクたちは殺された魔物たちを埋葬していった。いずれは消えていくと分かっていても、そしてそれがただの自己満足に過ぎないことだと理解していても、放置しておくことなんてできなかった。
「せめて安らかに眠ってね」
散々魔物を倒してきておいて、どの口が言うのか。浮かんできた皮肉じみた思いは飲み込み、これからの糧にしよう。
リアルだけでなく、この『アイなき世界』でもボクは、ボクらは命を奪い生きているのだ。そのことは忘れないようにしようと思う。
幸い男たちは結界には気付かなかったみたいだ。ボクたちはママの所に戻ると、しばらくの間は結界の外に出ないように忠告しておいた。
その際、ボクの顔色が悪いことに気が付いたママが優しく抱きとめてくれた。
涙が出そうになるのをなんとかこらえる。きっとボクよりも、森の仲間たちを亡くしたママの方が何倍も辛いだろうから。
その後、産卵場で当初の目的であるコッカトリスの卵を確保した。ボクでも倒せそうな少し小さめの卵――コッカトリスを倒すと、卵をドロップすることがあるからだよ――を選んでいたあたり、自分のことながら少しは冷静になれていたのかな、と思う。
サイズが小さいので、その分数を多めにアイテムボックスに入れると、古都へと帰還するために近くの村へと向かう。
魔獣の森の周りにはいくつかの村があるのだけれど、その内の一つに転移門が設置されている――前回はボクが利用できなかったので馬車での往復だった――からだ。
古都に戻ると、その日はそのまま『聞き耳のウサギ亭』でログアウトした。自分で思っていた以上に、心が疲れてしまっていたみたい。
翌日ログインすると、昨日は余り構ってやれなかったので、テイムモンスターたちと心行くまで戯れた。
しばらくお待ちください♪
はっ!またまた時間が一瞬で過ぎ去っていた。
部屋から出て食堂へ行き、フミカさんに頼んでご飯を作ってもらう。みなみちゃんさんを始め、テイマーの皆はギルド設立のために色々と動きまわっているとのこと。
みなみちゃんさんには、昨日見た怪しい男たちについて相談したい、とメールを送っておいた。
さて、ご飯を食べて元気が出たところで、依頼完了の報告と卵の納品をしに『料理研究会』に向かおうかな。
イーノにワトが、ニーノにビィが乗り、そして二匹は最近の定位置であるボクの両側に陣取って一緒に歩いていく。
たまには昔のようにイーノとニーノを乗っけて歩きたいのだけれど、あれをやると目立つんだよね……。いずれはワトたちも自分で歩く――もしくは飛ぶ――ようになるのかしら?
商業区を通る時にプリムさんをめぐってアルコースさんと火花を散らせたり、屋台通りを抜ける時にお姉さんから新作のシチューを御馳走になったりしながら、のんびりと古都の中を進んでいく。
そんなこんなで『料理研究会』に辿り着いたのは宿を出てから一時間以上が経ってからのことだった。
ギルドごとに多少は異なるけれど、正面の入口を入ってすぐの所には受付がある。そしてその部屋はギルドメンバー以外でも立ち入りが可能なオープンスペースになっていることが多い。
『料理研究会』のギルドもそれに則っていて、何人もの人がお話をしたり、ギルドからの依頼書を見たりしていた。
ちなみに、我らがテイマーギルドが完成した暁には、このオープンスペースがテイムモンスターたちとのふれあい広場となる予定だったりする。
とっても楽しみ!
「こんにちは。テイマーのリュカリュカと言いますが、コッカトリスの卵を取ってきたので、納品と完了手続きをお願いします」
「こんにちは。私たちギルドの依頼を受けて頂きありがとうございました。確認をいたしますので少々お待ち下さい」
うわ!なんだか一流企業の受付みたいだ!
応対してくれているお姉さんもピシッとしていてカッコイイ!
「お待たせいたしました。リュカリュカ様がいらした時には奥へ通すようにと言われていたのですが、お時間はおありでしょうか?」
「あ、大丈夫です」
「ありがとうございます。それではご案内させて頂きます」
お姉さんに案内してもらって、二階にある応接室へ入ったボクたち。
ううん……、落ち着かない。あ、出されたお茶は、さすがは料理研究会と納得の美味しさでした。
「おまたせー」
「お待たせいたしました」
そんな風に緊張しながらテイムモンスターたちと待っていたら、先日会った二人、多恵さんとマイさんがやってきた。
「早速持ってきてくれたのね。やっぱり土地勘がある人が行くとスムーズで良いわ」
多恵さん、そういうことはイーノとニーノの二匹とじゃれ合いながら言わないで下さいな。ボクを応接室に通したのってテイムモンスターと遊びたいから、のような気がしてきた。
「うちのギルド長がごめんなさいね。とにかく、先に納品と清算を済ませてしまいましょうか」
多恵さんが使い物にならないと分かると、あっさり放置して話を進めていくマイさん。く、クール過ぎじゃありませんかね?
まあ、いいか。いつまでもこうしていても仕方がないし。
ボクは転がらないように気を付けながら、マジックボックスの中から卵を取り出してテーブルの上に並べていった。
「ふむふむ……。ラーメン騒動の時に持ってきてもらったものよりは少し小ぶりですが、使用するにあたって問題はありません。それどころかサイズの小ささを補って余りある数です。『評価』は問答無用でS!報酬には色を付けさてもらいますね」
持ち帰った卵を鑑定しながら、マイさんはニコニコ笑顔でそう言った。
やったね。
そうそう、良い機会だからついでに『評価』について説明しておくね。クエストの中には、受ける時にオプションとして『評価』をしてもらえるものがあるのね。
分かりやすい例を上げると『回復薬の元になる薬草を十個、三時間以内に採取してきて欲しい』という依頼があったとします。
これを『評価』なしで受けると、薬草を十個、三時間以内という制限をクリアすれば成功、できなければ失敗となる。
それに対して『評価』ありで受けた場合、十個より多い数を、できるだけ短い時間でクリアすると、いわゆる大成功――S評価――という扱いになって、報酬が上乗せされるのだ!
さらに、失敗の場合でも、九個しかない、時間を十分だけオーバーした、というあと一歩足りない状態ならB評価となり、通常よりも少ないながら報酬を受けることができる。
さすがに五個しか見つからなかった、一時間以上過ぎた時などはC評価となって失敗扱いになってしまうけど。
つまり、よっぽど大失敗をしない限りは『評価』をありにしておいた方がお得、ということだね。
マイさんから報酬を受け取ったボクはホクホク顔で、テイムモンスターたちと多恵さんの輪の中に入って行った。




