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この『アイなき世界』で僕らは  作者: 京 高
4 またまた開催!プレイヤーイベント!
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48 お祭りにしちゃおう!

「お祭り騒ぎ、ですか?」


 二大美食ギルドの一つ、『料理研究会』の副ギルド長でもあるマイさんの突然の提案に、集まった人たちは皆頭の上に(はてな)を浮かべていた。


「マイっち、それはどういうこと?」


 そんな僕らを代表して、彼女の上司にあたる多恵さんがその真意を尋ねた。


「言葉通りですよ。どうせ見回りをするのであればそれに相応しい状況にしてしまえばいいんです」

「そうか!祭りであれば見回っている人間がいても不自然ではないし、強引な勧誘をしていれば注意もしやすい!」


 バックスさんが分かった、と両手をバンと叩いて答えた。ちょっとうるさい……。


「その通りです。それによって余計な逆恨みを防ぐこともできると考えられます。現状では強引な勧誘をしている特定のギルドが対象になっていることが一目瞭然ですから」

「ふむふむ。ギルドことにアピールできる時間か場所を作ってみてはどうでしょうか?」

「良いわね。期間中はその区画でのみ勧誘を許可するようにすれば、一般ギルドとPKとかのイリーガルなギルドとの区別が簡単にできる。なによりそういう形であれば、ウチらのような生産職のギルドも参加し易いわ」


 おお!さすがは一級プレイヤーの皆さんだ。次から次へとアイデアが出ては詳細まで詰められていく。

 僕とリュカリュカちゃんはそれをポケーっと眺めているだけの簡単なお仕事だった。


 そして、以下の三点がイベントの中核となることになった。

 一、イベント開催期間は第三期プレイヤーの参加初日から一週間。

 二、ギルドのアピールと勧誘のための専用の場所を作る。使用するギルドは許可制とする。

 三、見回りは予定通り行うが、計画通りにいった場合、路上などで勧誘しているのは無許可のイリーガルなギルドなので、無理に介入せずに警護隊などへの報告にとどめる。


「これは本気で大規模なイベントになりそうね」

「ええ。NPC、というかこの街全体を巻き込んだ者になりますから、準備も本番も大変ですよ」


 そう言う割に二大美食ギルドの長である二人の声音ははずんだものだった。


「後は許可を貰わないと動きようがないわね……。マイっち、急いで誰かを商業組合に走らせて。なるべく早く交渉の機会を持ちたいから、お土産も忘れずに持たせてね」

「はい」


 え?それって袖の下……?

 いやいや!無理をきいてもらったお礼だよね。お礼!


「交渉役は私に任せて下さい。このイベントを開催することによるメリットをまとめておきます」


 あ、山原さんが復活した。


「頼んだよ。さて、手間をかけて申し訳ないのだけれど、ロヴィン君には『商業組合』と、そして街の有力者たちとの交渉の際には同席してもらえるかな?なんと言っても君を通して持ちあがった話だからね」

「それはもちろん!」


 むしろ僕の立場を配慮してもらって申し訳ないくらいだ。


「すまないね。交渉自体は山原に任せてもらえれば問題ないから」


 山原さんはリュカリュカちゃんのファンのようだし、『美味倶楽部』だけが得をするようなことにはしないだろう。


「そうなると、当日までは俺たちの出番はないか」


 自分の仕事は終わったとばかりにバックスさんが伸びをする。

 雰囲気から察するに、そんなことを言っているけど当日も遊び倒す気でいるな、この人。PvPのデモンストレーションという名目でこっそりと会場の一角を借りて、PvPの大会とかを開いていそうだ。


「あ、手が空いているなら色々と食材を集める手伝いをして欲しいんだけど」

「は?」

「宣伝のための絶好の機会だから。新規プレイヤーの応援も兼ねて、ウチらは無料で料理を振舞おうかと思っているのよ。他の料理系のギルドにも声をかけるつもりだからかなりの量の食材が必要になるわね」


 おおう!多恵さんはなかなか豪快なことを企むな。


「正式な依頼ということなら受けるのは問題ないが……。しかし、それだと、他の生産系のギルドも似たようなことをするんじゃないか?」

「そうでしょうね。だからどこのギルドのどんな依頼を受けるかは、そちらの判断に任せるわ」

「分かった。都合が合えば受けることにする」

「ボクもレベルが合う場所なら協力します」


 リュカリュカちゃんの台詞に、彼女の周りにいたテイムモンスターたちが一斉に声を上げる。だけど小さくなっているので、勇ましいというよりは和む光景になっていた。

 山原さんなんて「生きてて良かった」と感涙にむせび泣いているよ。うん。触れずにいてあげるのが優しさかな。




 そして翌日には『商業組合』及び街の有力者の人たちとの会合が開かれることになった。そして山原さんがメリットを説明すると、あっさりとイベント開催の許可が下りたのだった。


「それではこれで失礼します。開催決定の許可が下りたことについては『料理研究会』の方にも私から伝えておきますので」


 そう言ってクールに立ち去って行く。昨日のリュカリュカちゃんとの一幕を見ていなかったら、いかにも『出来る人!』という感想だったんだけどね……。


「やあ、ロヴィン君!こんな所にいたんだね」


 山原さんを見送っていると、聞き馴染みのある声がした。振り返るとそこにいたのは、古都ナウキを中心に展開するイナッハ商会の会長さんだった。


「イナッハ会長。ご無沙汰しています」


 会長は、師匠の師匠であるクジカさんと共に、無限弾を作ったことを報告したあの時から、なぜか僕のことを気に入ってくれていた。


「そんな他人行儀な挨拶はしないでくれたまえよ。それより、新しく冒険者たちがやってくるのに合わせて祭りを開こうとは、面白い考えだね。私も冒険者たちにはかなり儲けさせてもらっているから、最近の街の人たちとのギスギスした雰囲気には困っていたんだよ」

「恥ずかしい話ですけど、素行の悪い冒険者もいますから……」


 初期の頃には、オフラインのゲームと同じ感覚で民家に突入していったおバカさんもいたりした。そして残念なことに未だにNPCを見下すような言動をしているプレイヤーもいる。


「そうではない冒険者もたくさんいるのだけれどねえ。偏見を持ってしまっている、という点では我々住民の側にも責任があるよ。今度の祭りがそうした今まで縁のなかった者たち同士が交流する機会になることを願っているよ」


 ポンポンと僕の肩を軽く叩くと、イナッハ会長はニカッと笑って去って行った。


 ええと、会長?プレッシャーを与えておいて、そのままいなくなるのはどうかと思うんですけど……。

 また一つ、イベント中にやらなくちゃいけないことが増えてしまった気がする。


はい。章タイトルはこのことでした。

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