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この『アイなき世界』で僕らは  作者: 京 高
4 またまた開催!プレイヤーイベント!
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47 安全対策

「一つだけ確認しておいてもよろしいでしょうか?」


 それまでずっと話を聞いているだけだったマイっちが突然口を開いた。


「なんでしょう?」

「先ほどうちのギルドマスターが言った通り、私たちは一部の者を除いて戦闘経験値が低いです。暴力沙汰に発展してしまった時の安全策はどうなっているのでしょうか?」


 一部の者というのは、食材を自分で調達することにこだわるメンバーたちのことね。彼らはバトルコックという職についた戦う料理人たちだ。

 戦いながら魔物を捌いていくその様は豪快かつ繊細なものだけど……。うん、まあ、ウチには無理。


「それなんですが、皆さんとはテイマーのプレイヤーの方たちとコンビを組んでもらおうかと思っています」


 テイマーとな!?

 すると、上手くやればモフモフなテイムモンスターたちとも仲良くなれるということなのかしら!?


「丁度ギルドを作ろうと動いていたテイマーの集団に話を通すことができている。他のテイマーにも話が回っているから、それなりの人数が確保できる予定だ」

「こちらは貴重な人材を出すのだ。そんなあいまいな情報では困る」


 うわ!山原のやつってば、口を出してきたかと思えば水を差すようなことを!


「山原、今の段階で全てを決めることなんてできないよ。第一、私たちだってギルドの方針だからといって皆に強制することはできない。全員が賛同してくれる訳じゃないだろうからね」

「そんなことはありません!我々ギルドメンバー一同、師匠の指示には必ず従います!」


 怪しい宗教か!?ちょっと怖いんですけど……。

 っていうか、師匠って呼ばせているんだ……。


「ゴホン!それはともかく、今は大筋で合意しておけばいいだろう」


 あ、強引に話を変えた!海岡が焦る姿なんて随分久しぶりな気がするわね。

 怪しいわ。事件の匂いがするわよ!


「それでは次回、細かい打ち合わせをすることにしましょう。第三陣解禁までそんなに時間はないから……。三日後ということでどうでしょう?」

「え?あ、うん。良いんじゃないかな」


 あ、想像の翼を広げていたからマイっちが何を言っていたのか聞いてなかった……。


「分かりました」

「それじゃあ次の時にはテイマーの代表の人に同行をお願いするようにします」


 ということで、今日のところはおひらきとなった。しかし、


「多恵ちゃん、最後の私の話を聞いていなかったでしょう!」


 マイっちのお小言を受ける羽目になり、その日もウチは料理することができなかった。ガーン……。




 そして三日後、第二回『始まりの地』見回り計画準備会議が『美味倶楽部』の応接室で開かれた。


「えっと、リュカリュカです。今度作るテイマーのギルドの参加者です。今日はギルド長になる予定のみなみちゃんさんの代理できました。あ、それとラーメン騒動の時はお世話になりました」


 テイマーの代表としてやってきたのは、なんとラーメン騒動の元になったリュカリュカちゃんだった。


「さ、サイン下さい!」

「え?え?」

「ずっとファンでした!できればテイムモンスターの子たちの手形とかも一緒にもらえると嬉しいです!」


 や、山原……。

 どこからともなく、というかアイテムボックスなんだけど、どうしてサイン用色紙なんかを持っているの?

 一方のリュカリュカちゃんはなにが起きたのか分からずに驚き戸惑っているみたい。そりゃあ、会ってすぐの人からいきなりサインをくれと言われたらびっくりするわよね。というかウチらも驚き過ぎて固まっちゃったわよ。


 そんな中でいち早く立ち直ったのがリュカリュカちゃんだった。山原から預かったサイン用色紙にさらさらと名前を書いていく。

 そして足元で小さくなっていた――物理的にね。体の大きさを自在に変えることができるんだって。すごい、そして可愛い――テイムモンスターたちの手形――足形?――を押していく。


「どうぞ」

「あ、ありがとうございます!我が家の家宝にいたします!」


 え?それってゲーム内でのこと?

 それともリアル……?


「うちの者が不躾な態度を取って申し訳ない」


 感動でトリップしている山原を叱りつける訳にもいかず、海岡が困った顔で謝っていた。


「あ、いえいえ。たまにあることですから」


 あるのか!?


 さすがは有名プレイヤー……。まあ、あのコッカトリスの孵化の映像はプレイヤーにとってそれだけ衝撃だったってことだよねえ。

 かくいうウチも自分の端末の『ほんわか映像フォルダ』にダウンロードしていつでも見られるようにしているし。

 さらにウソかホントか、あの映像のお陰で第三期のプレイ開始予定者が一気に増えたという話まであるくらいだ。


 その分、ギルドの勧誘が大変になる可能性があったのだけれど、みなみちゃんが上手く自分の所に匿ったみたいだね。テイマーのギルド、ということなら文句は言い難いだろうから。


 どちらかといえば、未だにフリーなバックスさんやロヴィン君の方が危険かもしれない。バックスさんは言わずと知れた『裏ボス』だし、ロヴィン君も知る人ぞ知る無限弾の開発者だ。その上、古都ナウキの大物NPCと繋がりがあるから狙っているギルドは多いと思う。

 マイっちの分析によれば、彼らが積極的に動いているのは自分たちへの勧誘攻撃を減らす意味合いもあるのだとか。


「それでは本題に入らせて頂きます」


 本来の進行役である山原が使い物にならなくなっているので、マイっちが司会をすることになった。

 視線が合うと海岡はすまなさそうに軽く頭を下げてくる。いつも飄々として何を考えているのか分からないやつだけど、意外と苦労しているのかも。


「ボクたちテイマー側から参加が確定しているのは二十七名で、そのうち十八名が毎日参加可能です。基本的に二大美食ギルドの皆さんと組むのは大きな体格のテイムモンスターを従えている物が担当する予定になっています」

「それなのですが、我々の方にも一部バトルコックという戦闘慣れしている者がいます。その者たちであれば、逆にテイマーの皆さんを守ることもできるかと思います」

「それはありがたい。テイムモンスターのレベルが低くて参加を見合わせるつもりの連中にも呼びかけることができる」


 海岡の提案に答えるバックスさんの横で、リュカリュカちゃんもホッとした顔をしている。基本テイマーやサモナーは後衛職だから誰かを守りながら戦うなんて事には慣れていないのだろう。

 そう考えるとちょっと心配な部分もあるけれど、向こうもその辺りは確認した上での人選のはずだ。今更なかった事にはできないし、信じるより他はないかな。


 その後も見回り時間や道順、他の参加プレイヤーやNPCたちとの連携の仕方などを話し合っていった。


「今の段階でも参加者は百人近いのね……。ラーメン騒動の時ほどじゃないけれど、今回もそれなりに大きなイベントになりそう」

「なんか申し訳ないです……」


 ウチが漏らした呟きにロヴィン君が頭を下げてきた。

 しまった!話を持ち込んだ彼からすれば、非難されているのと同じだ。


「ああ、ごめん!別に嫌っていうことじゃないわよ。ちょっと話が大きくなってきたと思っただけだから!」


 ウチが慌てて謝ると、彼は儚げな笑顔で「ありがとうございます」と言った。

 う……。そういう表情には弱いんですけど……。


「……どうせなら、いっそのことお祭り騒ぎにしてしまいませんか?」


 と、ウチがこっそりキュンキュンしていると、マイっちがとんでもないことを言いだした。


次回急展開!?


ただのイヤミなキャラにするのもあれなので、山原はこうなりました。

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