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この『アイなき世界』で僕らは  作者: 京 高
4 またまた開催!プレイヤーイベント!
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45 見張りの依頼

「いらっしゃいませー!」


 入口の扉を潜ると、元気の良い声が響き渡る。ここは商業区にある『ロディーナ食堂』だ。

 回復薬などの消耗品を購入する際に、贔屓にしている道具屋の店主であるエナム氏に教えてもらった。

 安い、早い、美味いと三拍子揃った店で、ゲーム開始当初からお世話になっている。


「バックスさん!お久しぶりですね!」


 看板娘であるサラサ嬢がニコニコと笑顔で出迎えてくれる。厨房の方に目を向けると、主であるロディーナさんも「元気そうだね」と声をかけてくれた。


「人と待ち合わせをしているんだが、もう来ているか?」


 軽く頭を下げてからサラサ嬢に問う。


「ロヴィンさん、ですよね?来ていますよ。奥のテーブルです」


 飲み物しか頼んでいないということだったので、お勧めの料理を何品か持ってきてもらえるように頼んで、奥のテーブルへと足を進める。

 飯時ということもあって、店内はかなり賑やかな状態だった。


「こちらが店を指定したのに、遅れてしまって悪かったな」

「いえいえ。良い感じのお店なんで雰囲気を味わってましたから平気です。それよりこっちこそ急に呼びだしてしまって申し訳ないです」


 挨拶を交わし、しばらく他愛もない話で盛り上がる。そうしている間に頼んでいた料理もやってきた。


「それで、話というのは何だ?」


 料理をつつきながら話を進めることにした。


「見ての通り客のほとんどはNPCだから、周りを気にする必要はないぞ」


 これがこの店を待ち合わせ場所に選んだ理由の一つだ。

 どうも他のプレイヤーには聞かれたくない類の話だということだったので、利用客の大半がNPCであれば安心して話ができるだろうと考えたのだ。

 誰かに見られたとしても、こんな町の食堂で密談をしているとは思われ難い、というのもポイントだな。


 だが、一番の理由は簡単なものだ。

 話自体は面倒なものになりそうだった。それならせめて美味いものを食べながらにしたい!と思ったのだ。

 な。簡単だろ。


「第三期のプレイヤー(冒険者)受け入れに合わせて、多くの人数で挑戦するイベントが解禁されるっていう噂は知っていますよね?」


 ロヴィンの言葉に頷く。複数パーティーで挑むレイドボスか、魔物やNPCを相手にした百人以上での防衛戦もしくは攻城戦になるのではないか、という予想が有力だ。


「それらのイベントがギルド単位になるとか、ギルドで出場すると色々なボーナスがあるっていう噂の方はどうですか?」

「そちらは初耳だ。情報元は分かっているのか?」

「いいえ。ただの噂だって言う人もいれば、運営の非公式な見解だって言う人もいて、情報が錯綜している感じですね」


 こういう時には騒ぎを大きくしようと適当なことを言うやつや、それを真に受けて必死になったりするやつが出てくるからな。


「ここまではまあ、いいとして、問題はその後です。もしもその噂が本当だった時のために、大手ギルドが高レベルの人や有名どころの囲い込みを始めているようなんです」


 マジか!?本来なら火消しに回るべき立場の連中がなにをやっているんだか……。


「その煽りを受けて、今までソロで活動していた人たちの中にもギルドを結成しようという動きが出てきています」

「つまり、しばらくの間はギルドの勧誘合戦が激しくなるっていうことか」

「それだけじゃなくて、ギルド本拠地の場所取りでも何らかの騒ぎが起きると思います」


 はあ。予想はしていたが、やっぱり面倒な話だったな。鶏の唐揚げ――らしき料理。材料は不明だが美味い――をつまんで、沈んでいきそうになる気分を無理矢理転換させる。


「わざわざその忠告をするためだけに呼んだ訳じゃないんだろう?本題は何だ?」


 忠告をするだけなら、それこそメールだけで事は足りる。直接会って話がしたい、ということはそれなりの理由があるはずだ。そう指摘すると、ロヴィンは苦笑いを浮かべた。


「実はこの街の『商業組合』に伝手(つて)があるんですけど、彼らは勧誘合戦が激しくなり過ぎて治安が悪くならないか心配しているんです。だから、違法行為が起きないようにプレイヤー(冒険者)たち自身で見張りをして欲しいと頼まれたんですよ」

「それなら『冒険者協会』に正式に依頼してもらえばいいんじゃないのか?」

「あくまでもプレイヤー(冒険者)たちが自主的に活動している、という形にしたいそうです。あ、受けてくれた人は『商業組合』で登録しておいて、後日『冒険者協会』を通して報酬を支払ってくれるそうですから、ただ働きになる訳ではないですよ」


 ははあ。つまりは冒険者と街の人たち、プレイヤーとNPCと言い換えてもいいだろう、その関係が悪くならないようにしたいということか。

 個々人では大したことがないかもしれないが、全体でみれば商業組合にとってオレたちプレイヤーはそれなりに上客のはずだからな。


「俺以外に、誰かに打診はしたのか?」

「バックスさんが最初です。一応、この後でリュカリュカちゃんたちテイマーの人たちや、二大美食ギルドにはお願いしに行こうと思ってます」


 そうか、俺が一番初めに声をかけられたのか。まあ、なんだ、それなりに優越感があるし、頼られて悪い気はしないな。


「その話、乗らせてもらう」

「本当ですか!?」

「ああ。街の人たちに冒険者は皆性質が悪いと思われるのも嫌だからな。それと、余り多くはいないが知り合いにも今の話を伝えておく。詳しい話はロヴィンからする、ということで良いか?」

「それなら直接商業組合に行って尋ねてもらった方が簡単かもしれませんね。バックスさんも登録があるので行っておいた方がいいかな。この後時間があるなら案内しますけど?」


 ふむ、今日はロヴィンと会う以外は特に用事もない。

 見張りをするにしてもどういう具合にするのか、警護隊と話はついているのか、などなど聞いておかなくてはいけないことがいくつもある。


「頼む。早めの内に細かい部分も詰めておいた方がいいだろう」


 向こうが要求するラインをきっちりと理解しておかないと、形だけの見張りになったり、やり過ぎてかえって迷惑になったりするからな。


 だが、まずはせっかく注文した料理を平らげることに専念するとしよう。NPCたちにもミソやショウユが出回り始めたのか、どこか懐かしくも斬新な味のものもある。

 俺たちはテーブルの上に並べられた料理の攻略を開始したのだった。


第四話でエナムとアルコースが食事をしに行ったお店です。覚えてました?


そしてロディーナとロヴィン、名前が似てた……。あうち!

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