41 報告するまでがクエストです
時間は少し飛び、魔獣の森の奥地で二人のプレイヤーとテイムモンスターたちと別れてしばらく歩いた所で『転移』の魔法を使ってイグルポックへと戻った。
「マスター、良かったのですか?」
「ん?なにが?」
アリィが言いたいことは何となく予想が付いていたけれど、あえてすっとぼけてみた。
「彼らに、マスターが魔王であることを、におわせたことです」
やっぱりそのことだったか。肝心なところは規制がかかっていたみたいだったけれど、レベルなんかは普通に伝えられていたからな。
女の子の方はともかく、男の方は結構たくさんのゲームをやりこんでいるみたいだったし、十中八九オレの正体に気が付いていることだろう。
「味方とまではいかなくても、いざという時に手を貸してくれるかもしれない相手を確保しておくことも必要だと思ってさ」
魔王は、というより魔族は純然たる敵ではなく、交渉の余地があると思わせるだけでも、こちらの行動の選択肢は広がってくるからな。
「それに知ったことを言いふらすような人たちには思えなかっただろ?」
テイムモンスターだけでなく、コッカトリスの母親たちのことも心配していたくらいだし、信用できる気がするんだ。
「その点には同意しますが……」
そう言ってアリィは大量の肉を収納したアイテムボックスへと目を向けた。
彼女が持っているアイテムボックスはツキの魔族に代々伝わる物で、放り込める量は一般のプレイヤーが所持している物とは段違いに多い。
しかも許可のないものには取り出すことのできないオートロック完備で、さらにさらに、PKなどで奪われても持ち主の元に帰ってくるという、とっても素敵でゴージャスな機能まで付いている!
まあ、内容量だけはオレのアイテムボックスの方が多いんだけどね。いつの間に育ったのかしらん……?
「お帰りなさいませ」
魔王城に入ると、ジイが出迎えてくれた。
「ただいま。予定とは違ったけど、大量の猪肉を手に入れてきたぜ」
「おお!さすがはミロク様!アリィ様もごくろうさまでした」
「いえ。大したことはありません」
と、口調はクールだが、返事をするアリィは笑顔を浮かべている。目下最大の懸念が解決しそうなのだから、それも当然だろう。
「マスター、私の顔に何か付いていますか?」
やばい!ニヤニヤしながら見ていたのがバレた!?
「ひ、必要なパーツが絶妙なバランスで並んでいるよ?」
とっさに出た言葉としては、まあまあの出来だったのではないだろうか?
「お褒め頂いた、と思っておきます。ですが、できれば詰まらずに、そしてしっかりと肯定して頂きたかったですね」
「はい……」
ダメ出しをもらいました……。
「それよりもマスター。こちらへ戻って来てしまいましたが、彼らとの約束や、『冒険者協会』への報告はどうするのですか?」
「あ、ああ。それならこれから行くつもりだ」
イグルポックへは手に入れた肉を届けるためにやって来たのだ。ビニール袋っぽいものに入っているとはいえ、そしてアイテムボックスの中では腐敗しないとはいえ、余り長期間生肉を持ち歩くようなことはしたくなかった。
もちろん食糧不足を心配する皆を早く安心させたかったというのもある。
そして、約束は守らないといけない。
掲示板に曝されるのは勘弁だからな。
どうせ見ることができないのだから関係ないと思うかもしれないが、魔王とグドラクという名のプレイヤーが関連付られてしまうと、面倒なことになる。
彼らが言いふらさない、のはこちらが約束を守った上でのことなのだ。
「そうですか。それではまた、私もお供します」
えっと、一人の方が目を付けられ難い……、というのは今更か。既に一度絡まれていることだし、一人だと与し易いと報復しようとする輩もいるかもしれない。
それにアリィのような美人さんと町を歩くのはなかなかに優越感があるのも確かだ。デートじゃないけれど、せっかくの機会だし楽しませてもらおうかな。
そう!ゲームは楽しんでなんぼなのだ。
決して上手く言いくるめることができないからじゃないからな!自分への弁解終わり!
そんなこんなで、ジイに後のことを任せて――押し付けた訳じゃないよ!――再び古都ナウキへと『転移』してきた。
そして三度絡まれた。
もうヤダこんな生活……。相手にするのも面倒なので逃げる、ふりをして街の外におびき寄せることにした。なぜなら今回絡んできたのは『新人いじめ』をやっていた連中だったからだ。
街から出た所で憂さ晴らしを兼ねて思いっきりぶん殴ってやったら、空の彼方へとかっ飛んで行った。
きっと掲示板には「あ…ありのまま今起こった事を話すぜ!」的な書き込みがされることだろう。
うん、全ては運営さんの責任です。文句は運営さんに言いましょうね。
「マスター、今更なのですが、協会にはなんと言って報告するつもりなのですか?」
「ほえ?」
「巨大なデスファングはいましたが、倒したのは私たちではなく彼らです。しかし、彼らはそのことを隠したいようでしたが?」
そうだった!
「うーん……。見つからなかったではダメなのかな」
「危険性が排除されていないので、別の冒険者が派遣されるのではないでしょうか」
レベルアップのための経験知稼ぎでならスルーすることでも、調査となれば放置しないだろう。そうなると、オレが張った『結界』の存在に感付くやつが出てくるかもしれない。
「困ったな……。上手く誤魔化す方法はないか?」
「偽証などの技能で言いくるめるのが一番簡単だと思います」
いくらゲームの根幹に関わる『冒険者協会』でも、その応対をしているのは各NPCの職員たちだ。全く勝ちの目がない、訳ではなさそうか……。
別の方法も思い浮かばないし、試してみるか。
「巨大化していたデスファングは、既に森の魔物たちによって倒されていた、と?あなた方はその魔物たちを適度に間引きした、と?」
「ああ。これがその魔物たちからの戦利品だ」
冒険者協会のカウンターにコッカトリスの羽――あの親子のものではなくて、森に入ってすぐの場所で襲いかかって来た別物――やフォレストウルフの毛皮に牙、ジャイアントバッターの触角などを並べていった。
「確かに魔獣の森の魔物から取ったもののようですね。分かりました。グドラクさんへの依頼は完了とさせて頂きます」
〈レベル限定クエスト、魔獣の森の調査を完了しました〉
無事にインフォメーションも流れたので、上手く誤魔化せたようだ。
「報酬は隣の窓口で受け取って下さい。また、魔物の素材は当協会でも買い取りを行っていますので、是非ご利用下さい」
ちゃっかり売り込みをする職員さん。まあ、このくらいの貢献はしておいてもいいだろう。
一度しまってまた出すのも面倒くさいので、素材を売却することを告げて、報酬と一緒に支払ってもらうことにした。
予定通りであれば、この話が投稿された頃にはお家にたどり着いているはず……。
でも、書き貯めがなくなりました。……どないしよ?




