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この『アイなき世界』で僕らは  作者: 京 高
3 魔王軍結成!?
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37 魔王様が住むのですから

「あったーーーーー!!!!」


 探していた品物が見つかったのだ、少しくらい大声を出したとしても仕方のないことだろう。

 うん、オレは悪くない。


「そんな訳ないでしょう。いきなり大声を出さないで下さい。ほら、びっくりさせてしまった周りの皆さんに謝って下さい」

「はい、ごめんなさい」


 ぺこぺこと頭を下げると、驚いて足を止めていた人たちも徐々に立ち去って行った。

 聖地であるため品の良い人たちが多いのか、愚痴のようなものも聞こえてこなかった。


「ここが聖地で良かったですね、マスター。古都ナウキのように荒くれ者の冒険者の多い町だったら、簀巻きにされた上にたこ殴りにされて、しかも騒ぎを起こしたとして警護隊に捕らえられて詰所で丸一日お説教されるところでした」


 とってもピンチだったんですね!?


 そして少しは大袈裟に言っているところがあるけれど、アリィの台詞は偏見という訳ではない。

 なぜならNPC、プレイヤーを問わず、冒険者には単細胞で喧嘩早い血の気の多い連中がたくさんいるからである。


 NPCの場合は腕っ節に自慢のあるキャラクターということで納得できる部分はあるのだけれど、プレイヤーの場合はリアルでの日頃のうっぷん――昭和の香りを感じさせる「うっふん♪」ではない――を晴らそうとでもしているのかな?

 どういう事情にしても、人の迷惑になるようなロールプレイは止めてもらいたいものだ。


「お二人さん、探し物をしていたんじゃないのかね?」


 騒ぎが落ち着いたところを見計らって、穀物露店の店主だろうおっちゃんが再び声をかけてきた。


「お騒がせして申し訳ありません。実は私たちは米や大豆を探しているのですが、御存知でしょうか?」

「なんだ、大豆を探していたのか。それならこれだよ」


 アリィの丁寧な物腰に気を良くしたのか、おっちゃんは背後の山の一つを指差した。


「やっぱりそれが大豆だったのか」


 近寄って見てみると、少し楕円刑をした黄色味がかった粒の小さな豆だった。


「手に取ってみてもいいかな?」

「少しなら構わないよ」


 売り物だから触る前に了承を得ようと尋ねると、あっさりと許可が下りた。


「うん。間違いなく大豆だな」

「はい。これならば使えそうです」


 記憶の中にあるリアルの大豆と変わりがない――豆まき用の炒ったものだけどな!――のを確認すると、横から覗きこんでいたアリィからも合格点がもらえた。


「あんたたちも大豆を育てているのかい?」

「知り合いに勧められて始めてみたんだけど、見事に失敗してしまってさ。そいつには「こんなのを育てるのは簡単だ」なんて大見え切った手前、代わりを融通してくれとは言い難くて……。だから食べる分と畑に蒔く分との二種類欲しいんだけれど、あるかな?」

「あっはっは。そりゃあ大変だね。もちろん両方ともあるよ。どのくらい入り用だい?」

「それぞれこの袋一杯ずつ頼む」


 渡したのは小さな革袋だ。リアルでなら、コンビニの一番小さなレジ袋くらいの大きさかな。


「はいよ。お代はこれくらいだな」


 提示された金額はオレのポケットマネーでも楽に支払える額だった。


「店主、そちらに書かれている金額よりも安くはありませんか?」


 大豆の入った袋を受け取ったアリィが、大豆を入れた箱に書かれている数字を見ながら尋ねた。どうやら値引いてくれていたらしい。


「ああ、うちの売り物になるかもしれないものを育ててくれるのだから、それくらいは当然だよ」


 要するに先行投資ということか。

 こうして恩を売っておけば、将来上手く育てられた時には、まずはおっちゃんの所に売りに来ることになるだろうからな。


「おう、今度は上手く育ててみせるぜ。ところで、米はないのか?」


 と、愛想良く答えながら、気になっていたことを聞いてみた。


「……悪いが、コメ、というのは聞いたことも見たこともないなあ。それもうちで扱うようなものなのかい?」


 返答開始までにあった若干のタイムラグに違和感を覚えながらも、とりあえず米の特徴を説明していく。


「ううん、やっぱり知らないな。力になれなくてすまないね」

「いやいや、大豆が手に入っただけでも運がいい。これで知り合いにバカにされなくて済むからな!」


 珍しがられるだけならいいが、不審に思われでもしたら面倒だ。そろそろ終わりにしておくべきだと感じたオレは、適当に言い繕ってその場を離れることにした。


 その後、ホルリア内の露店や店を冷やかして回ってみたが、米を発見することはできなかった。




 再び『転移』でイグルポックの町へと戻ると、様子見も兼ねて街を見回ることにした。

 「魔王様……!」と頭を垂れる魔族の大人たちや「ミロク様ー!」と元気に手を振る子どもたちを相手にしていると、有名人か何かになったような気分だ。


「マスター、見ている者が不安になりますから、しっかりと胸を張って下さい」

「こ、こうか?」

「それは体を反らしているだけです。間抜けに思われますよ」


 アリィさんや、突っ込みが厳しくないっすか?

 こちらは魔王になったばかりの新米なのだから、少しくらいは大目に見て欲しいものだ。

 そして一応それらしい体勢になり、町を一周して魔王城へと着く頃には、すっかり疲れ果ててしまった。


 さて、魔王城だが……。

 魔王城なのだが……。

 できれば思いか出したくない出来事の一つだ。




 それはイグルポックの町に来た日、つまりツキの魔族たちを配下にした日のことだった。


「グドラク様、狭いですがこちらの館をお使い下さい」

「十分広いから。むしろ広過ぎるから……」


 アリィに連れられてオレがやってきたのは、町の中心部に建っていた建物の一つだった。

 そこは、ウサギ小屋なんてバカにされているニポン人の住宅事情への挑戦か!?と言いたくなるくらい広くて部屋数も多い建物だった。


「この町が機能していた頃には、領主の館だったもののようです。魔王さま、いえ、グドラク様の居城とするにはいささか物足りないものではありますが、いましばらくの間はご容赦願います」

「いや本当に十分だから。立派すぎるよ」

「とんでもない!グドラク様はいずれ魔族全てを配下にするお方です!そんなお方が住むにはこの館では貧相過ぎます!近日中に魔王城の名にふさわしい城を建てる予定です」


 話が大きくなってませんか!?

 それにお城ってそんなに簡単に造れるものじゃないよね!?


 しかし、出会ってすぐの、しかも燃えているアリィに、そんな水を差すようなことを言えるはずもなく、形式的に「急ぐ必要はないから」とだけ伝えたのだった。




「はあー……」


 目の前にそびえる偉容に思わず溜め息が出る。


「マスター?どうかされましたか?」

「本当に城があるなと思ってさ」

「はい。頑張って造らせた甲斐がありましたね」


 オレとは対照的に、アリィの声音は喜色に満ちていた。その様子に苦笑いを浮かべながら、わずか数日で(・・・・・・)完成した魔王城の中へとオレたちは入って行くのだった。


突然ですが、本日より旅行に行ってきます。


旅行中も予約投稿で毎日更新するようにしているのでご安心を!

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