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この『アイなき世界』で僕らは  作者: 京 高
19 邪神をやっつけろ!
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336 やってみなくちゃ分からない『大魔法実験』

 姉御やタクローさんたちが次々と分身体との戦いを始めていく中、ボクたちは何時まで経っても邪神の変身が終わらないという、訳の分からない硬直状態に陥っていた。


「全てを拒否するとか、引きこもりかよ……」


 そんな状況を進展させる契機となったのが、辛辣なミロク君の一言だった。


「引きこもり?……!!もしかして、今見えているあの姿はボクたちの目を眩ませるための罠なんじゃないかな!?」

「罠だって?」

「そう!例えば変身するつもりなんて元々なくて、あの中に隠れているのだとしたら?」


 指をさした先にいる変身中カッコ仮の邪神は、靄に覆われて身長は数メートルの高さにまで巨大化していた。

 その胴体の部分は、子どもサイズだった邪神なら楽に隠れることができるだけの大きさになっていたのだ。


「しかし、そんなことをしたところで問題の先送りにしかならないのではないか?」


 ファルスさんがその行動の意味が分からないと疑問の声を上げる。


「これもボクの予想だけど、あの状態ならいくらでも怪しい靄を生み出すことができるんじゃないかな?」

「延々と分身体を生み出したり強化したりすることができる!?」

「なんと!?確かにそれならば追い詰めている現状を引っ繰り返されてしまうかもしれない!」


 分身体がどの程度の強さなのかは分からないけど、戦い続けるということになれば、いつかはこちらがダウンしてしまうことになる。


「自棄になっていたように見えたのも全部フリだったっていうことか!ちっ!よく考えてみれば、いくら自分の目論見がばれそうになったからといって、あいつが感情に任せた行動をとるなんて、あるはずがないことだったぜ」


 邪神の狙いを見抜けなかったとミロク君が悔しそうに舌打ちをした。

 あの、まるで決定事項のように言っているけど、あくまでもボクの推理通りだったらの話だからね?


「なんであれ、一発ぶちかましてやればはっきりするさ」


 邪神にいいように騙されてしまったことに腹を立てたミロク君が凶悪な顔で物騒なことを言い放つ。


「ちょっと待った!ミロク君が本気でぶちかましたりしたら、この建物が崩壊しちゃうよ」


 非破壊設定がどうなっているのかにもよるけれど、場合によってはこの建物どころか聖地ホルリアの全てが廃墟になってしまう可能性すらある。

 皆を怖がらせてもいけないので、このことはお口チャックにしておくけど。


「それに……、どうせこちらのことを放置して殻の中に引きこもっているのなら、できるだけ強力な一撃を叩き込みたいとは思わない?」


 労力は小さく、効果は最大限に!ロマンだよね。せっかくなら狙ってみませんか?

 それに、先制で大ダメージを与えることができれば、その後の戦いも有利になるはずだ。


「労力を小さく、ということは合体魔法か?」

「うん。ミロク君はいわばこちらの切り札だからね。最初の一発で確実に勝てるならガツンとやってもらうのも手だけど、そうとも言い切れないから負担は分散させる方がいいと思うんだ。それでね、これを魔法で再現できないかなと思うんだけど……」


 うちの子たちに見張りをお願いして、残る魔法を使える面々で作戦会議に入ります。


「そのようなことが、本当に可能なのですか?」


 一通りボクの説明が終わった後で、ランドルさんが首を傾げながら問うてきた。


「実際に使ってみたことはないから、原理としてはできるはず、としか言いようがないですね」


 今回試してみようと提案したものは、合体魔法によるアレンジ技を検証している人たちの間でもまだ成功例はなく、今では机上の空論に近い扱いになってしまっているものだった。


「ぶっつけ本番にはなっちゃうけど、成功すれば大ダメージが見込めます」


 とはいえ、成功率が低いどころか不明なこともあって、ファルスさんたちだけでなくティンクちゃんにシュレイちゃんも二の足を踏んでいた。先輩さんのように、なぜかやたらとやる気になっていた人もいたけど。

 このままでは何時まで経っても決まりそうもなかったので、ここは邪神との戦いで中心的な役割を果たすであろう人、言い換えると一番大変な目に合う人に、決めてもらおうということになった。


「それではミロク君、お願いします」

「オレかよ!?」


 仮にも相手は神様たちの一柱――自称だけど――ですよ。まともに相手ができるのは魔王であるミロク君くらいなものだろう。

 ……魔王のプレイヤーがいない場合には、運営さんはどうやってこのシナリオをクリアさせるつもりだったんだろうか?


「はあ……。まあ、いいや。リュカリュカちゃんの案ではそれぞれの負担はそれほど大きいものじゃないようだし、とりあえずは試してみてもいいんじゃないか。もしも失敗したら、その時には皆で殴ってやろうぜ」


 そんな魔王の一声によって、ミッション名『大魔法実験』がスタートすることになったのだった。

 そしてボクとしては脳筋な展開は勘弁願いたいところなので、ぜひとも成功させたい次第であります!


「これは他の合体魔法とは違って、魔法を使うタイミングは関係ありません。だから魔法の精度を高めることを第一にお願いします」


 最後に一番大事な注意点を伝えて、いざ作戦開始!


 まずは邪神の四方に水属性魔法の『氷結』で壁を作っていく。これはこの後の魔法実験による影響が外に広がらないようにするためのもので、壁の一辺は五メートルほどで高さは七メートル、厚みは何と数十センチもある。

 数十センチと侮るなかれ、圧縮に圧縮を重ねてひたすら頑丈にしてある。


 これをボクとティンクちゃんに先輩さん、そしてランドルさんで各一面ずつ受け持った。物理攻撃中心の神殿騎士である二人にはきついかなと思っていたのだけど、案外平気そうだった。

 それ以前に、空間に(・・・)魔法を発生させることを難なくこなしていて、ボクの方がびっくりさせられたよ。

 本当は床にも氷を敷き詰めておきたいところだけど、邪神に触れる訳にはいかないので断念。床が非破壊オブジェクト扱いになっていることを祈ります。


 十分な強度の壁ができたら、いよいよ実験の肝となる物の作成に取りかかることになる。

 生活魔法の『湧水』で生み出した水の塊を、地属性魔法の『石化』で包み込む。この時重要なのは隙間なく包むことと、できるだけ圧力をかけることの二点。

 ちなみに水属性魔法ではなく生活魔法の『湧水』を使ったのは、そちらの方が魔力の使用料が少ないためだ。


 担当は水の塊を生み出したのがボク、それを包んで圧力をかけたのがミロク君だ。

 さて、そうやってできた直径一メートルほどの水入りの石の玉を氷の壁で囲われた中央、邪神の足元近くに設置する。


「リュカリュカちゃん、もう天井も閉じてしまっていいのか?」

「いいよ。あ、石玉の真上部分だけは開けておいてね」


 あっという間に四方の壁と同等か、それ以上の強度を誇る氷の蓋ができ上がる。


 仕込みの方はこれで準備完了。それでは『大魔法実験』を始めましょうか。


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