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この『アイなき世界』で僕らは  作者: 京 高
19 邪神をやっつけろ!
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334 邪神、キレる

 いい加減に待つのが面倒くさい、コホン、いつまでも皆を外で待たせておく訳にはいかないので、邪神にはさっさと起きてもらうことになった。


 で、起こす役と、そして肝心の起こし方はというと、

「先生、お願いします」

「……ああ」


 用心棒の先生風に呼びかけると、ミロク君はノリノリで仰向けに倒れている邪神の側へと向かった。

 周りの皆が「何やっているんだ、こいつら?」的な目で見ているけど、気にしちゃダメです。全ては楽しんだ者勝ちなのですよ。


 気絶している邪神の頭のすぐ隣で片膝をついたかと思うと、


「起きろ!」

「もーにんぐ!?」


 ずびしっ!とおもむろにその額に向けてチョップを叩き込んだのだった。


 無防備な状態の相手を捕まえるのはダメだけど、攻撃するのはいいのか?という疑問が出たりしていたけど、ミロク君いわく「覚醒させるための行為なので問題ないな。あ、覚醒といってもただ単に目を覚ますという意味でしかないからな。新しい能力とか才能が開花するっていう意味じゃないから」とのこと。

 後半の説明が必要だったのかは謎です。


 それにしても叩かれて「もーにんぐ!?」ってそれどんな悲鳴よ……。

 流れ的にラスボス的な存在のはずなのに、どんどんとギャグ寄りになっていませんか?


「な、なんだ?何が起きた?」


 そしてギャグらしく全くの無傷です。むしろさっきまでに比べて元気になっていない?


「チッ!仕留めそこなったか。丈夫なやつめ」


 はい、そしてそこ!三流悪役のような台詞を口走らない!だけど、そんなことを言うということは、それなりに力を込めていたということなのだろう。

 ミロク君のそれなりの力……。普通の人なら即死、普通じゃないトッププレイヤーでも大怪我しそうだ。

 そんな攻撃、もとい目覚ましを受けても無傷とは……。やっぱり邪神と名乗っているのは伊達ではないということみたいだね。


「ぬ!?魔王!?」


 ようやく傍らにミロク君がいたことに気が付いた邪神は、慌てて体を起こして飛び退る。

 さっきまで大の字になって気絶していたとは思えないほどの身軽さだ。さっきまで大の字になって気絶していたから締まらないことこの上ないけど。


「お前が操っていた『神殿』上層部の連中は既に捕えている。もう手駒はいないぞ」


 一方のミロク君はそう告げながら片膝をついていた体勢からゆっくりと立ち上がるのだった。


「ふん!下種が神の名を語っていることに虫唾が走ったから、人形にして黙らせていたまでのことだ。あんなやつらなんてどうでもいい」

「どうでもいい?教主たちを操り、世界中にこれだけ大きな混乱を与えておいて、どうでもいいだと!?」

「ファルス様!?落ち着いてください!」


 その身勝手な言いように激高したファルスさんが飛び出して行きそうだったのを、間一髪でランドルさんが引き止めていた。


「ふうん……。その割にここには居座っているんだな。それに、ソウルイーターを起動させるためにわざわざ北西地域にある『賢人の集い』の隠れ里に立ち寄ったりもしているし」

「…………」


 あれ?今度は言い返さずに黙った?

 ……つまり、邪神は『神殿』ではなく、この聖地ホルリアという場所を目的としていたっていう事?ついでに言うと、ソウルイーターも関わっていた?


「だけど、彼が北西地域に立ち寄ったのは結構前の話でしょう?どうしてすぐにホルリアに来なかったのかな?」


 ミロク君やジョナさんから聞いた話だと、邪神は北西地域に立ち寄った後、カフ大洞掘――ロピア大洞掘の南方にあるとされているけど、ゲームとしてはまだ実装されていません――へと向かったそうだ。

 これ自体はかく乱の意味もあったらしくて、次に現れたのは全く関係ないモーン帝国の帝都だったとか。


「一つはオレの配下の魔族たちが追って来ていることに気が付いたから。そしてもう一つは、ここを制圧するなんていつでもできると思ったからだろうな。実際、上層部のやつらをあっさりと操って、あっという間に『神殿』を乗っ取っているしな。多少後回しになったところでどうとでもなると考えていたんだろうさ」


 あくまでも予想だけどな、と説明してくれるミロク君を、邪神は忌々しそうに睨んでいる。

 その態度こそが、彼の予想が正解だと証明してしまっていることに気が付いているのかしらん?


「結構、単純なやつなのね」

「しーっ!せめて素直だとか一本気な性格だと言ってあげなさい!」


 ぽつりと漏らしたシュレイちゃんの感想をティンクちゃんがとがめている。だけどこの場合、言葉を言い繕っても仕方がない気もするよ。


「帝都に顔を出した理由は分からないが、まあ、ペインドラッグとかいう怪しい薬関係だろうな」


 バックスさんが巻き込まれたっていうアレね。

 結局、運営さんの公式回答だと、痛みを感じることができるようになる薬は、開発できてはいなかったらしい。厳しく取り締まっていたのは不正行為が前提になっていたからだそうだ。


「それで、本来の目的地にやって来たのはいいが、肝心の目的は達成できていないようだな」

「まあ、そうだよね。ミロク君はともかく、ボクたちにまで攻め込まれてもまだ逃げずにここにこうやっている訳だし」


 この地から逃げられなかったり、離れられなかったりする理由があると推測するのは当然のことだろう。そんな風にボクたちが話していると、邪神がプルプルと小刻みに震えて始めた。


「寒いのかな?」

「風邪でもひいているのでしょうか?」

「そんな訳ないでしょう……」


 わざとらしいボクとティンクちゃんのボケに、呆れながらも突っ込んでくれるシュレイちゃん。何だかんだと言いながらも付き合いの良い白にゃんこさんです。

 そんな仲の良いボクたちのことが気に入らなかったのか、


「うるさいうるさいうるさい!お前たち程度が僕を語るな!僕は邪神なんだぞ!」


 邪神はまるで駄々っ子のように癇癪を起こしてしまった。

 そして、


「ガアアアアアア!!」


 体中からあの怪しい靄を吹きだしたかと思うと巨大で怪物じみた姿へと変わっていく。さらには怪しい靄が凝り固まってはいくつもの人間大の怪物へと変化し、ステンドグラスを破壊したり、扉が粉々になって開きっぱなしになっている入口から外へと飛び出していった。


〈邪神とその分身体が出現しました。仲間のプレイヤーやNPCたちと協力して全て倒してください〉


「つまり、せっかくのボス戦だから全員参加しろっていうことか!ここの運営にしては面白い展開を考えたじゃないか!」


 ニヤリと凶暴な笑みを浮かべてミロク君が叫ぶ。どうやら小型の怪物は建物内やホルリアの町にいるプレイヤーの所に向かったらしい。


 そして、最後の戦いが始まった。


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