324 久々のテイムモンスターたちとの共闘
「『火球』!」
「『水撃』!」
シュレイちゃんとティンクちゃんが同時に発動した二つの魔法が互いに干渉し合い、局所的に水蒸気の濃い霧を作り出す。
「ガアア!?」
肉食恐竜のような形をした怪物、ソウルイーターが突然目の前を真っ白にされて困惑と苛立ちの叫び声を上げている。その隙を見逃すうちの子たちではなく、
「ぴい!」
「しゃ!」
ふわりと上空から近付いたワトが麻痺の吐息を全身に浴びせたかと思うと、するりと背後から近付いたビィが毒の牙をその足に突き立てていた。
が、残念ながら状態異常には高い耐性を備えているのか、ソウルイーターの頭上に表示された簡易表示にほとんど変化はなく、辛うじて牙のダメージ分だけHPゲージを減少させることができていただけだった。
「にょん!」
それならこれはどう?と言うように今度はエリムが雷を飛ばすも、やっぱり微かなダメージを与えるだけに留まっていた。
「みんな!攻撃方法を変更!直接ダメージを与える方向に切り替えて!ちょっと危ないけど、力押しでいくよ!」
ボクの指示に待っていましたとばかりに突っ込んでいく二つの影。ソウルイーターの眼前に発生させた即席の濃霧が消え去る前に足元へと滑り込むと、
「ふっごお!」
そのスピードを落とすことなく一つ目の影ことニーノが、左足へと堅い硬い額当てを叩きつけていた。
「ゴガア!!」
人間ならば向こう脛に当たる場所を強打されて、さしものソウルイーターも悲鳴を上げる。何となく想像がついてしまう痛みにボクも知らすしらずの内に顔をしかめてしまっていたよ……。
しかしながら攻撃が通った場所には追撃を行うのが世の常というものです。
「!!」
直後に二つ目の影となっていたエッ君が尻尾を振り回して、同じく左足に痛烈な一撃を与えていた。丸い体をひねって――卵ってなんだろう……?――移動時のスピードも加わったその一撃はニーノの攻撃と相まって見事に左足を刈り取っていた。
「ギャゴオウ」
片足だけではその体を支えることができず、すっくと立てば四メートルにも届くのではないかという巨体はゆっくりと横倒しになっていった。
「『業火』!」
「『業火』!」
さらにティンクちゃんとシュレイちゃんの猫コンビが息の合った連続魔法を放ち、トカゲの丸焼きができそうな勢いで着実にHPを削っていく。
「ふうん、ごおお!!」
そしてダメ押しに体格変化で体を大きくしたイーノが螺旋を描く額の角で――螺旋!?――無防備な腹部を突き刺しては切り裂いていくのだった。
……あれ?ボク、指示を出しただけ?
シュレイちゃんを含めて、うちの子たちの連携が半端ないのですが……?
会議とか色々なことで遊んであげられないからと、砦にいる間はほとんどの時間を自由にさせていたのだけど、その時にプレイヤーの人たちと模擬戦をしていた効果が出たらしい。
そのこと自体はユキさんたちから「ちょっ!イーノちゃんたちがどんどん強くなってきた!?」と悲鳴じみた声で教えてもらっていたから知ってはいた。
だけど、冗談だとばっかり思っていたのだ。
だって、三十人のプレイヤーと戦っても互角だったって言うんだよ。冗談だと思って当然でしょ!
「あ、いけない!『地槍』!そして『石化』!」
ワトの超高度からのヒッププレスを追加されながらも、起き上がろうと蠢くソウルイーターを縫い留めるために特大の針で貫き、その体ごと硬化させていく。
それを見たうちの子たちが尊敬のまなざしを向けてきてくれた。
どうやらご主人様の面目は保てたもようです。ニコリと笑い返したけれど、実は内心では安堵感でへたり込みそうになっていました。
余談だけど、先ほどボクが使ったアレンジ技は、複数の魔法を合体させたものの中では有名な部類なのに、未だに名前が決まっていなかったりする。
なんでも二つの魔法を使う間隔が広くても発生する上に、敵の行動を阻害するという便利な効果のために愛用者が多く、名称決定が難航しているのだとか。
それなら発見者が名付ければいいだろうと思うよね?ところが、最初に名前を募集すると公言してしまったから、今さら中止にはできないらしい。
そして発見者本人からして「好きなだけ議論して決めてくれればいい」というスタンスをとっているということもあり、運営さんも介入できない状態なので、まだしばらくの間は未決定なままになりそうだと予想されている。
さらにちなみに、冒頭でシュレイちゃんとティンクちゃんが使っていたのは『ホットミスト』と名付けられた合体魔法で、彼女たちがやったような視界を覆う使い方だけでなく、高温の水蒸気をぶつけるというえげつない攻撃にも使える凶悪な魔法でもある。
その分こちらは発動のタイミングがシビアで、使用できる人はNPCでもほとんどいないらしい。
そんな難しい魔法を使えるにゃんこさんたち、ステキです。
などと、ボクが考え事をしている間にも、うちの子たちの追い打ちの連撃は続いていた。
動けない相手への攻撃だから危険もないので好きにやらせていた訳だけど、気が付いたらソウルイーターのHPは残り二割を切りそうになっている。
防御もできずボコボコにされる姿にちょっぴり同情してしまいそうになってしまった。
しかし、そこで状況が変わる。エッ君の連続キックによってHPが二割を下回った瞬間、それまでやられ放題だったソウルイーターが雄叫びを上げながら飛び起きたのだ。
やっぱりイベントボス的な存在だけあって、簡単には倒されてはくれないようだね。
「全員一旦下がって仕切り直すよ!大分弱って来ているけど、絶対に油断しないように!」
周囲を取り囲むように散開したボクたちに、ソウルイーターは怒りの目を向ける。ご主人様の意地でその正面に立っていたボクだけど、かなり怖い。
受けるプレッシャーは狂将軍の怨念にも匹敵するかもしれない。一人だったら間違いなく逃げていただろう。
「……一人だったらね」
今のボクには頼もしい味方が付いているから怖さを押さえつけて笑えるだけの余裕すらあった。
その様子に訝しむように首を傾げるソウルイーター。随分とまあ人間臭い仕草だけど、隙ありですよ。
「『極炎』!!」
二つの声が重なり真紅の塊が飛来する。正面からなら避けられた可能性もあるけど、その魔法を生み出した術者たちがいたのは死角となる後方だった。
「ギョアアア!!」
悲鳴すらも消し炭にしそうな超高熱が肉食恐竜を包む。
しかし、それでも倒しきるには至らず、荒れ狂う炎の中でソウルイーターは元凶の姿を求めて回頭していく。このままだと二人が危ない!?
「みんな、ティンクちゃんとシュレイちゃんを守りながら一斉攻撃!」
ここまできて犠牲を出してなるものですか!
少しでも敵の注意を引くため、包囲を狭めていくうちの子たちと一緒になって短槍を手に接近戦を仕掛けていくのだった。
いきなり戦闘でしたが、回を間違えて投稿している訳ではないのでご安心を。




