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この『アイなき世界』で僕らは  作者: 京 高
19 邪神をやっつけろ!
331/574

322 後片付

 ミロク君との相談の結果、北西地域で発生しそうな諸々のことについては、みなみちゃんさんたち経由で情報を流して、首を突っ込みたい人たちに丸投げすることにした。


「国同士の駆け引きなんて考えるだけで面倒くさい」


 とは魔王様のありがたいお言葉であります。

 駆け引き程度ならまだいいけれど、足の引っ張り合いに怪しい組織を使っての暗躍などなど、ダークでディープな世界が広がっていそうなので、ボクとしても勘弁です。

 捕虜にしたおじさんたちの話だと、表向きで伝えられているほど対立はしていなくても、お互いにライバル視していたり、敵対心を持っていたりする場合はあるようだし。


 幸い、レベルが上がってきて、そろそろ何か大きなイベントをこなしてみたいと思っている人は結構多くいるらしいので、放置されていつの間にか終わっていた、なんていうことにはならないだろう。


 移動距離が長く、時間がかかることがネックだったのだけど、タイミングの良いことに運営さんが特別キャンペーンを開始し、一往復に限り長距離でも『転移門』の使用が無料になっている――ラジア大洞掘にある『神国』やサウノーリカ大洞掘など、一部移動できない場所もある――ので、情報を公開すればそれなりの人数のプレイヤーがやって来るのではないかと思われた。


 ちなみにこのキャンペーン、ゲーム内では『神殿』のゴタゴタによって迷惑をかけてしまっているお詫び、という形で開催されている。

 上手いことボクらの一件を利用されてプレイヤーの分散に使われた感はあるかな。ただ、元々『神殿』関連で大きなイベントが発生した際に行うように準備していた可能性も高いので、あまり気にしないことにしたのだった。


「これで残る問題はというと、こいつらをどうするかってことか」


 ミロク君が指さした先にいたのは千人近い数のNPCたち、捕虜にした北西諸国連合軍の皆様だった。

 余談だけど、彼らが乗っていた馬は装備品類と同じように三つの『大傭兵団』にプレゼントしておいた。なんでも調練済みの軍馬というのは買おうと思っても買えるようなものではないそうで、報酬の中では一番喜ばれていたよ。


 さらに馬などの騎乗できる動物は、プレイヤーの職業にかかわらず仲良くなれればフレンドモンスターにもできることがあるそうで、各ギルドとも熾烈なお世話係争奪戦が勃発するかもしれない、とのことだった。


 閑話休題。そんな訳で捕虜の人たちには足がない状態なのだ。


「攻め込んで来たんだから、その土地を支配している国や組織に引き渡すのが筋なのか?」

「でも、ジャマナイ平原ってどこの国にも属していない非支配地域じゃなかったっけ?」


 そのため街道の保守管理もされておらず、草原に馬車の(わだち)が延々続いているだけだったりする。

 これも余談だけど、街道の整備状況は一つの国の中でも差があるもので、石畳が隙間なく敷き詰められて側面には排水用の溝まで完備されているところがあるかと思えば、獣道?と突っ込みたくなるようなものまで様々だ。

 そういう点からいえば、ジャマナイ平原の街道はまだマシな部類に入るのかもしれない。


 さらに閑話休題。

 加えて今回の『大傭兵団』の参戦は、どこかの国からのヘルプに応じてのものではない。あくまで「大豆畑を守る!」という個人的な理由によるものなのだ。

 そのため、捕虜の人たちを「後はよろしくお願いします」と近くの国に引き渡すこともできないのだった。


「うーん、面倒くさい!放置したい!」


 それはダメです。魔物の餌にされてしまったら、せっかく一人も殺さないようにした意味がなくなる。

 それに負けて装備を奪われたとはいえ、彼らは軍人であり魔法使いだ。故郷には帰れないからと、この地を通る馬車や商隊を狙う野盗にでもなられたら困る。


「北西地域までは連れて行く他ない?」

「勘弁してくれ。この人数の上に士気の低さだぞ、連れて歩くとなると短く見積もっても一週間はかかる」


 さらに現地調達する(・・・・・・)つもりだったのか、彼らはほとんど水や食料を持っていなかったので、それらの負担も考えないといけないのだとか。


「こいつらを材料にそれぞれの国と交渉するならまだしもだが、そんなつもりもないし、手間暇はできるだけ抑えたい」


 これから北西地域で発生するだろうイベントに参加するという人たちに引き継いでもらうことができれば一番かもしれないけれど……、って無理だね。

 リアルのように大量輸送できる手段がある訳じゃないからお荷物になるだけだろう。


「アッシラさんも一度に運べる人数は多くない上に、燃費が悪いからなあ……」


 下手をすれば捕虜たちを一週間歩かせた方が安上がりかもしれないのだ。


「一瞬で大勢を連れて移動できるような方法がないものかな?」


 例えばミロク君の瞬間移動のような。


 ……うん?瞬間移動のような?


「ってミロク君!『空間魔法』!『転移』の魔法で何とかならない!?」

「いやいやいや、いくらオレでも千人もの人数を一度に長距離転移させることはできないだろう」


 と言いながらも確認を始めるミロク君。自分の能力のとんでもなさに、もしかするとと考えてしまったみたい。


「……場所は、北西地域のここから一番近い町でいいか」

「そうだね。そこから先はさすがに面倒見きれないよ」


 故郷の近くまで送り届けただけでも感謝してもらいたい。そちらには手を伸ばさないと決めたことだし、彼らのその後のことまでは責任は持てないし、持ちたくない。


「距離に数、重さ、体積……。我がことながら驚きだが十分可能らしい」


 提案しておいてなんですが、本当にいけましたか……。

 あ、具体的な魔力消費量とか聞きたくありませんから。


 それにしても条件設定の項目がまるで宅配便のようだったのはこれいかに?


「あ、暗示はどうするの?」

「向こうで開放する時に切っておくことにするよ。再度上書きをされてこちらのことを話されても困るし、最初に思考誘導状態にされてからの記憶を全て忘れるようにする」


 北西地域のイベントに参加することになるプレイヤーたちにとっては謎の解明がし辛くなるかもしれないけれど、魔族や魔王様のことを知られる訳にはいかないから仕方がないか。


「それじゃあ、ちょっと行ってくる」

「あ、また北西地域に行くことがあるかもしれないから、ボクも連れて行って!」


 こうして、予定外の横やりは――ボクたちからすれば――一応の片が付いたのでした。


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