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この『アイなき世界』で僕らは  作者: 京 高
19 邪神をやっつけろ!
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321 情報を聞き出そう

 えー、現在ボクの前には北西諸国連合軍のお偉いさん方がいます。

 その数は九。連合軍に参加した八つの国と『賢人の集い』それぞれの代表者たちだ。

 ちなみにロピア大洞掘北西地域には全部で十一の中小の国が乱立していて、実にその四分の三ほどの国が連合軍へと兵を出していたことになる。

 とはいえ、参加したすべての国が侵略に前向きだった訳ではないようで、


「我が国は諸国の中でも特に国土が小さく、恒常的に周囲の国々から支援を受けていた。そのため立場は弱く、兵を出せと言われれば断ることはできなかった」


 国同士の繋がりや力の差というものが関係しているようだ。手始めに尋ねた娘さんの結婚式を間近に控えていた将軍さんの国はそうした弱小国家の方に入るらしい。

 前向きではなかったとしてもメリットはあると見ていたようで、「『聖神教』の後押しをして『神殿』の改革を成し遂げる」というお題目を掲げながらも、その目的は南方の豊かな土地を奪取することにあったという話だった。


「どこの国も南方への進出が一番の目的だった、と……。ねえ、北西地域ってそんなに貧しいの?」

「諸国同士の協力もあって民が飢えるほどではない。が、それだけだろう」


 日々の食べ物に困るほどではないけれど、それほど余裕がある訳でもないようだ。ただしこれは幸福や豊かさの基準をどこに置くかで話が変わってくる問題でもあるから、今の一言だけでどのくらいの豊かさなのかは判断できないかな。

 それにしても「諸国同士の協力」とはね……。どうやら表向きで言われているほど各国は敵対関係にはないようだ。


「でも、それじゃあどうして仲が悪いように振る舞っているんだろう?」

「そういう取り決めになっているからだ」

「え?」


 質問する意図はなく、何となく思い浮かんだことを口に出しただけだったのだが、催眠状態――暗示の上書きをした段階で暴れられないように、催眠状態にしていたのだ――だったためなのか思わぬ答えが返ってきた。


「はるか昔よりの取り決めだと聞いた。ただ、今では本当に仲が悪い国同士や対立している国同士もあるので、一概にそうだとは言えない」


 虚と実が混ざり合うとか、一番真贋の見極めが難しい状態だよ。

 ……そしてこれ、掘り下げていくと別のイベントへと枝分かれしそうな予感がひしひしとしてきます。具体的にいうと、北西地域全土を舞台にした大き目のイベントが発生しそう。

 『神殿』との対決も終わっていないのにそんな面倒なことに関わるつもりは全くございません!今回の派兵の裏に邪神がいたのか同課の確認ができたら、みなみちゃんさんたち経由でイベント好きな人たちに放り投げてしまうことにしよう。


「邪神という名前を聞いたことは?」


 なので、とっとと本題の核心をついた質問に変更。対して各国代表の将軍様方の反応はノー。ところが『賢人の集い』の魔法使いさんはイエスだった。


「以前、そう名乗るものが我ら『賢人の集い』の隠れ里を訪れたことがあったと聞いたことがある」

「それはいつ頃の話!?」

「数か月前だ」


 範囲広過ぎ!普段は研究とかしているんじゃないの?記憶力大丈夫!?

 一応、ジョナさんたちが突き止めた北西地域に現れたという時期とも重なりはするし、魔族の町を襲った時や帝都に現れた時などでもそうだったように、邪神には名乗る癖があるようなので恐らくは本物だろうとは思われる。


「邪神がやってきた目的は何?」

「そういう話を聞いたことがあるだけなので、詳しいことは分からない」


 魔法使いのリーダーを任されていたけど、それほど高い地位に就いていた訳ではないみたいだね。若手の中ではそれなりに有望株、くらいにしか思われていないのかも。


「他に邪神関連で覚えていることはない?」

「隠れ里を出た後、北西地域のどこかの国へと向かったらしい。この話をしていたやつはルーマだろうと言っていた」

「最も奥側にある国で、諸国の中でも一、二の国土と国力を持つ国です。今回の連合軍には参加していません」


 魔法使いの言葉に続いて魔族さんが補足の説明をしてくれた。

 北西地域の国の中では最大級なのに今回の派兵には不参加?うん、イベントの香りがぷんぷんしてきます。これはみなみちゃんさんへの報告案件だね。


 後、聞いておかなくちゃいけないことは……。


「『賢人の集い』が北西諸国連合に百人もの魔法使いを派遣したのはどうして?」

「協力を要請されたからだ」


 どうやら『賢人の集い』というか、北西地域の隠れ里にいる一派は、この地域の国々と共存関係にあるようだ。人材の交流のようなことは行われていないが、魔物の討伐や農地開墾など普段から密接な付き合いをしているとのことだった。

 ちなみに協力の要請は参加した八国全てからほぼ同時に行われたそうだ。


「ほぼ同時?それっておかしくない?」


 付き合いがあることを公にするという意味で、協力を要請するのは分かる。だけど情報の伝達の関係でズレが生じなくてはいけない。

 そもそも多少は対立関係にあるんだから、発起人の国は有利な立場を得るために先んじて『賢人の集い』へと協力要請を出していたはずだ。


「この作戦を考えついたのはどこの国なの?」

「それはもちろん我が国だ!」


 ボクの問いに八つの声が重なって返ってきました。だけどそんなことがあり得るのだろうか?例えどの国も南方への侵出自体は機会をうかがっていたとしても、八つもの国が同時にチャンスだと捉えたというのは、どう考えても無理がある気がする。

 つまり……、その時点で既に操られるなりしていた可能性が高そうだ。


 そしてそうなると怪しいのが、邪神が接触したと思われるルーマなる国だ。

 少数ずつとはいえ今回派兵された騎兵たちは各国の精鋭集団だった。彼らがいない間に各国に攻め込むこともできるし、精鋭を集めておいて――しかもプレイヤーを動員したり、『賢人の集い』に協力してもらっていたのに――敗北したことをねちねちと批判したりすることもできるだろう。

 ミロク君の配下から、戦争が起きているという報告はないので、ルーマの狙いとしては後者だったのではないかと思う。

 何にせよ、これはきっちり報告しておく必要があるね。


 肝心の邪神の狙いとしては『神殿』と当たる前に『聖神教』やボクたちプレイヤーの力を削いでおくつもりだったのかもしれない。まあ、その企みに関しては三つの『大傭兵団』が『大豆畑を守ろう会』を組織して割って入ってくれたお陰で見事に大失敗ということになりそうだけど。


 うん、ミロク君が帰ってきたら、この辺りの仮説と新しく分かったことを説明して、これからの行動について相談することにしよう。


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