31 ツキの魔族
前回のあらすじ。
魔王であることを誤魔化そうとしたけど、バレちゃった!
魔法は遺伝子解析で、魔物や神々は遺伝子操作によって生まれたぞ!
その中でも魔族は能力が高くて『ミュータント』と間違われる事もあった!?
さあ、裏設定も明らかにされて、どんどんと盛り上がってまいりました!
ちょっと話が重たすぎて、やけになったりテンションがおかしくなったりしていますが気にしたら負けです。
「つまり、魔族と『ミュータント』は別物ということか?」
「はい。あえて共通点を上げるとするならば、遺伝子操作によって生み出されたということでしょうか」
うわあ。話の流れからもしかしたらとは思ったけれど、やっぱり『ミュータント』を生み出したのも地下世界の研究者たちだったのか。
「あれ?サウノーリカが滅ぼされたのが数百年前という話だから……」
「はい。この地では神々による守護以降も遺伝子操作の研究が延々と続けられていたのです」
余談だけど神様たちは百年程度で姿を消している。いなくなったとか、何処かへと旅立ったとか、見捨てられたとか、ただ見えないだけだとか色々な学説があって『神殿』内でも意見が分かれているそうだ。
以上、図書館に入り浸って得た世界設定の知識の披露終わり。
遺伝子操作の研究はずっと続いていたというより、神々がいなくなったことで再開されたという方が正しいのかもしれない。
「そうすると『ミュータント』がやってきたことになっている地上への道というのは、存在しない?」
オレの問いにアリィさんは深く頷くことで答えてくれた。
「なるほどね……。研究者や研究を裏から支えてきた者たちは、その失態を消し去ろうと在りもしない地上への道をでっち上げたという訳か」
プレイヤー視点で言えば、まだいくつも未実装の大洞掘があると公言されていたのに、わざわざ世界観が崩壊する可能性のある地上に行けるのはおかしい、ということになるので、この裏設定は納得のいくものだ。
問題はオレが魔王だから、この情報を他のプレイヤーに教えることができないということかな。
まあ、知ったところで世界観の補完にしかならないだろうけど。口の悪いやつなら「運営の自己満足だ」とか平気で言いそうな内容だしな。
「ところで『ミュータント』はその後どうなったんだ?」
「それが……、不明なのです。私たちの祖先は二百年ほど前に故郷での迫害から逃れてサウノーリカへとやって来たのですが、その時出会ったこの地の数少ない生き残りによれば、ある日を境に急に姿を見せなくなったのだそうです」
うわ!それはまたどうとでも後付けできそうな設定だな。
どこかでいきなり遭遇する可能性もあると思っておく方が精神衛生上的にも良さそう。
ところで、魔族のことを始めとして色々と裏設定について聞くことはできたけれど、実は肝心なことは何一つ進んでいないんだよな。
「あんたたちの事情は大まかには分かった。それで、オレにどうしろというんだ?先に言っておくけれど、オレには世界征服をしようとかそういう野望は全くないからな」
牽制しつつ本題へと切り込む。
ないとは思うけれど、「我々を迫害してきた愚か者どもに滅びを罰を!」なんて言われたら困るからな。いつの間にか周囲には魔族――自称だけど――の人たちが集まって来ていた。
「何かをして頂く必要はありません。ただ何かあった時に、私たちがあなたの配下であると口にすることを許可して頂きたいのです」
アリィさんが示した要望は、オレが予想していた中で最悪の部類に入るものだった。
一見、別に損のないもの――一方で得もない――のように見えるが、実際の所は大損だ。
まずオレの正体がバレる。魔王としてはスキムミルクという――謎の――名前があるが、既にグドラクというキャラクター名を名乗ってしまっている。
例え彼らの口が堅くても魔法のある世界だ、聞きだす方法はいくらでもあると思っておくべきだ。
早い、遅いの差はあれども、それほど遠くない内にグドラクが魔王であると知られてしまうだろう。
次にこれはゲームだ。ゲームであるからイベントが起こる。
つまりアリィさんの言った「何かあった時」は確実に、絶対に起きることなのだ。
そして最後に、何もしなくていいなんてことはあり得ない。
例えば魔王の配下が住んでいるとバレて、他の種族などにこの町が襲われたとしよう。それを関係のないことだ、と無視するなんてオレにはできない。必ず助けに行ってしまうだろう。
しかも今のオレはそれが可能なだけの力を持っているのだ。その時になったらできることをやろうとしてしまうだろう。
さて、ぶちぶちと文句を言い連ねてきたけれど、この提案を拒否しても事態は好転する訳ではないのだよね。
一つ目、グドラクという名を名乗ってしまっていることには変わりがないのでオレが魔王であるということはいずれ広まっていくだろう。これはオレのミスだ。魔王という言葉に過剰反応してしまった。
二つ目のゲームのイベントについても同じだ。提案を拒否した場合はそれなりのイベントが展開されるだけだろう。
特に魔族は迫害されてきたというから、下手をするとこちらの罪悪感を煽るような胸糞の悪い展開となるかもしれない。
そして最後、そうした可能性がある以上、オレに断るという選択肢はない。
結局のところ、この町に、いやサウノーリカ大洞掘に逃げてきた時点で話は決まっていたということなのだろう。
選択したのは自分だとはいえ、どうにも運営にいいように転がされた感があって癪ではある。だけど今は、いつか泣かしちゃる、と改めて心に刻み込むことで我慢するとしよう。
「名前だけ貸すなんて関係は御免だな」
オレが言うと、あちこちから落胆した声が上がる。しかし残念には思っていても、それを理由に罵るような声は聞こえてこない。
必要以上に依存しようとしていないようでもあるし、これは好印象だ。
「だからちゃんとした絆を結ぼう。オレは皆が困っていたら助ける。だから皆もオレを助けてくれ!」
リアルでは恥ずかしくて絶対に言えないようなくさい台詞に、人々が静まり返る。
……もしかしてやっちゃったのか!?
ドン引きしてるの!?
いやーな汗が背筋を伝う。
いまさら言い直すこともできないし、どうしよう……。
と、内心で焦っていると、どっと大歓声が巻き起こった。肩を叩きあったり抱き合ったりして喜び合っている。
「グドラク様、ありがとうございます。今日この時より、我らツキの魔族一同は御身の配下となります」
深々と一礼するアリィさんに、オレは気が抜けた顔で「よろしく……」と伝えたのだった。
今回ですが、実は半分ほど書いたところで全て書き直しています。
没にした話の方も折角なので活動報告にでも上げようかと思っています。
気になる人はそちらも覗いてみて下さいな。




