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この『アイなき世界』で僕らは  作者: 京 高
19 邪神をやっつけろ!
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319 習得?取得?

 数分後、目隠しをされた数人の男性が魔族さんたちに連れられてやって来た。装備品は全て奪っているので、服装だけはどこの町や村にでもいそうなNPCといった感じだ。

 それでもさすがは普段から金属製の全身鎧を着込んで動き回っているだけのことはあるね、筋肉がものすごいことになっているよ。一人を除いては。


 その一人というのが恐らくは『賢人の集い』から派遣された魔法使いなのだろう。ひょろりとした体形に青白い顔をしていた。

 それでも他の騎兵たちの姿に似せた革製の全身鎧を着てそこそこの速さで馬を走らせていたのだから、魔法使いたちの中では体格が良い方なのだろう。

 そういえば彼らは結局、禁呪クラスの超強力魔法を使うことがなく戦いは終わってしまった。まあ、実力を発揮できなかったという意味では、連合軍全体が当てはまるのだろうけれど。


「どう?」


 そんな男たちを前にして、真剣な表情で何かを探るようにしているミロク君に問いかける。


「魔法で操られているような気配はないな」


 邪神が最初に姿を現したのは魔族の町を襲撃した時のことだった。その後、足取りを追ったジョナさんたち諜報部の調査によると北西地域に立ち寄ってから行方をくらましていたらしい。

 なので、その時に何かが細工をしかけていたのではないかと思ったのだけど、考え違いだったのかな?


「いや、まだ完全に無関係とは言い切れないぞ。暗示をかける時にだけ魔法を使ったとも考えられる」


 例えば魔法で睡眠や混乱といった状態異常にしておいてから、催眠術のようなもので暗示をかけた場合、魔法の効果が切れても暗示は残り続けてしまうそうだ。


「その、暗示がかかっている状態なのかどうかは見分けられないの?」

「残念ながらそこまでは分からないな。催眠術とか精神操作みたいな技能があって、それを習得できれば、ある、い、は……」


 うん?どうしたのかな?ミロク君の言葉が途切れちゃったよ。


「あったよ……」


 と、急にものすごく疲れた顔になっていた。


「何があったの?」

「催眠術に精神操作に暗示、全部技能にあった。……そして取得できた」


 ……はい?


「え?取得できた……?ごめん、言っている意味が分からない」


 だって、最初期のキャラクターメイキングの時はともかく、一度ゲームを始めてしまうと、その技能に即した行動をとらないと習得はできないはずだよ!?


「そのことはゲームを始める前に掲示板とかで調べたから知ってる。でもオレの場合は今でもキャラメイクの時と同じようなポイントが大量にあって、それを使用するだけで技能が取得できるんだよ」


 とのこと。

 「ちーと!」と叫ばなかったボクは偉いと思います。


「ええと、つまりミロク君は取得可能技能欄に表示されている技能なら、全て覚えることができるということ?」

「まあ、そういうことになるかな。技能ポイントが足りなくなるかもしれないから、全部を同時に取得することはできないかもしれないけど」


 いやいやいやいや。それは些細な問題だから。必要に応じてすぐに技能を取得できるっていうだけで既にとんでもないことだから。


「その一点だけでも明らかにゲームバランスをぶっ壊しかねないよね……」

「自分のことながら同意せざるを得ない」


 ゲーム内のこととはいえ自分の人外っぷりにどんどん落ち込んでいくミロク君。

 運営さんは何を考えてこの状況を放置しているのだろうか。チートを公認しているようなものであり、他のプレイヤーに知られてしまうと大騒ぎどころか暴動にもなりかねないと思うのだけれど。

 だけど、ボクたちが悩んだところで答えが出るようなものでもない。とりあえず頭の隅にでも置いておいて、今はやるべきことをやってしまおう。


「話を戻すとして……。技能を取得してみて、どうだった?彼らは暗示をかけられているの?」

「ちょっと待ってくれ、今から調べる。……当たりだ。全員が弱い思考誘導状態にあるらしい」


 一種の状態異常扱いとなっているそうだ。


「問題は誰がやったか、だな」


 複数の国の人相手にそんなことができるのだから、当然邪神が一番怪しい容疑者なのだけど、そうした技術を秘匿してきたいずれかの国や組織によるものかもしれないのだった。


「とりあえずこの人たちに誰がやったのかを質問してみたらどうかな?」

「いや、やたらと核心を突くような質問は止めた方がいい。思考誘導状態にした時点で、その人物のことは話せないか、思い出せないようにされているはずだろうし」


 さらに首謀者に行き着くような質問を受けると、廃人になったり自爆したりするようにセットされていることもあるのだとか。


「どうしてそんなことを知っているの?」

「漫画に小説、映画でも似たようなシーンがあったかな。サブカル万歳。エンターテインメント万歳」


 つまりはそういうことらしいです。


「それじゃあその思考誘導状態を解除してから質問をすれば?」

「残念ながら状態異常が切れると、その時のことは忘れてしまっている可能性が高い。ほら、催眠術検証特番とかで、目が覚めたらそれまでのことはすべて忘れているっていうのがあるだろう。あれと同じだ」


 うはあ……。また面倒な仕掛けをしてくれているなあ……。


「ありきたりな質問で様子を見てみる?あ、でも「何の目的だ?」とか「誰の命令だ?」っていう質問は危ないかもしれない?」


 いわゆるNGワードというか、自爆行動の起動ワードになっているかもしれないのだ。

 一方で戦いに負けたことや自分たちが捕虜になっていることは、一応は受け入れているみたいなのが気になるところでもあるね。


「うにゅう……。さっぱり上手い質問が思い浮かばない。危ない機能だけ停止するように上書きできればいいのに」

「ロボットや機械じゃないんだから……。いや、試してみる価値はあるか?」


 思わず口をついて出た愚痴だったんだけど、ミロク君は感じるところがあったみたい。

 どうせこれ以上状況が悪くなることはないだろうから、やっておしまいなさい!


 結果から言います。

 上書き、できました。


 まあ、その際に「我々は野蛮な者共に屈したりはしない!」だの「我が祖国に栄光を!」だの「故郷に帰ったら、娘の結婚式に出るんだ……」だの好き勝手言っては大騒ぎしてくれたけど。

 全く、どの口でそういうことを言っているんだろうね。後でねちねちと文句言ったり仕返ししたりしてやる。


 そして新たな技能を手に入れたミロク君はというと、さらに人外さが増したことにちょっぴりショックを受けていたのだった。


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