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この『アイなき世界』で僕らは  作者: 京 高
19 邪神をやっつけろ!
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317 ジャマナイ平原の戦い、開戦!

 向かい合う両陣営のほぼ真ん中で二人の男性が睨み合っている。孟宗竹さんの思いが通じたのか、戦いはまずお互いの正当性を突きつけ合う舌戦から始まった。


「やあやあ、我こそは!かんのなのわのこくおうの――」


 はい?えっと何やらおかしな名乗りを始めた人がいるんですけど?

 相手の人も呆気に取られて目を見開いて――いるのかどうかはフルフェイスの兜を被っているのでよく分からないね。


 一方、こちらの陣にいる人たちは皆、苦笑顔だ。どうやらいつものことらしく、孟宗竹さんの持ちネタのようなものらしい。

 え?ぎしわじんでん?ぎ繋がり?いやいや、説明されないと分からないネタというのもどうかと……。もう少し分かり易い方がいいんじゃないですかね?


「人を食った名乗りではあったけど、こちらのペースに引きずり込むには絶好の一手だったみたいだな」


 ボクにだけ聞こえる程度の声量で囁いたミロク君の指さす先では、北西諸国連合軍の代表者に反論する機会すら与えずに、あちらの不当とこちらの正当性をひたすら喋りまくっている孟宗竹さんがいた。


「うわー……。おしゃべり好きな女子も真っ青なレベルのマシンガントークだ……」


 あちらとしても最初から話し合いをするつもりはなかっただろうが、ここまで一方的に意見をぶつけられることになるとは思っていなかっただろう。


「おう、誰か弓が使えるやつはいるか?三人くらいでいい。舌戦が終わって孟宗竹が振り返ったら、そのすぐ後ろに撃ち込んでやれ」

「ういっす」


 突然、検索さんが近くにいた人たちに指示を飛ばし始めた。


「急にどうしたんですか?」

「ふざけた真似をしないように警告、といったところだ」


 検索さんによると、代表として舌戦に出て来たのに一方的に言い負かされてしまうと立場がなくなる。さらに味方の士気にもかかわるので、終わった瞬間、もしくは別れようと振り返った時に不意打ちをしてくる可能性が高いらしい。


「頼まれもしていないのに、勝手に軍を出してくるような連中だからな。そのくらいのことはしてきても不思議じゃないだろ。魔法攻撃にも引き続き警戒をしておけよ」


 かくして検索さんの想通り、舌戦が終わって孟宗竹さんが振り向いたその瞬間、あちらの代表者は剣を抜き放った!

 が、直後に目の前へと降ってきた三本の矢によって縫い止められたかのように硬直してしまったのだった。


「ふ……。滑稽だな」


 孟宗竹さんはチラリとその姿を見てから冷笑を浮かべると、止めを刺すこともなく悠々とこちらの陣へと戻って来たのだった。


「後は任せてくれ」

「チッ!遊びすぎるなよ」


 そして先頭に立つ柳眉さんとパンと手の平を打ち合わせる。


「どうだった?」


 敵を近くで見た感想を聞こうと、検索さんが声をかけた。


「国元では精鋭だったのかもしれないが、はっきり言って大したことないな。魔法による奇襲にさえ気を付けていれば、俺たちが負けることはない」


 おお!言い切っちゃいましたね。まあ、代表者だけでなくあちらの軍勢全体からして、碌に反論もできずに孟宗竹さんの勢いにたじたじになっていたので妥当な評価だとは思う。

 プレイヤーの人たち?自分たちが差し出してしまったものの大きさにすら気が付いていないような人たちが、この戦闘大好きな人たちの相手が務まると思う?あっという間にやられて死に戻る羽目になるのがオチだろうね。


 やがて先陣を切る部隊の準備が整ったのか、ゴーンとドーンとジャーンを合わせた銅鑼(どら)のような音が響き渡ると、ぷおうおぉぉ、とほら貝のような音まで鳴り始めた。

 西洋的な甲冑ばかりの戦場だからか、場違い感が半端ないです。


 そして再び銅鑼の音が響き渡った次の瞬間、


「いくぞおおおおおお!!」

「おおおおおおお!!!!!!!!!!」


 柳眉さんを先頭にした一団が、引き絞られていた矢のようにすごい勢いで飛び出して行った。

 一方あちらはというと、柳眉さんたちから数秒遅れてようやく動き出すといった始末で、さらにその動き出した者たちというのが、それなりに統一されていた鎧姿ではなく、てんでバラバラの装備で身を固めた一団だった。


「向こうの先陣はプレイヤー(冒険者)だ!もろとも魔法で攻撃してくる危険がある!用心しろ!」

「魔法隊準備!こちらの陣への攻撃の場合は迎撃を!先頭への攻撃の場合は逆に向こうの陣へ魔法を撃ち込んでやれ!」


 検索さんたちの指示に周囲の緊張が高まっていく。


「北西諸国の連中が冒険者を戦力として見ているか、それとも捨て駒として見ているのか、これではっきりするな」


 そんな中で一人ミロク君だけは自然体のまま呟いていたのだった。

 そして当のプレイヤーたちはというと、明らかに柳眉さんたちに気圧されている様子で、聞こえてくるのも鬨の声というよりは自棄になった叫び声といった方が適切に感じられた。


「おいおい、あいつら腰が引けてしまっているんじゃないのか?あの程度でよく他のプレイヤー全員に喧嘩を売る気になれたな……」

「攻略系のトップは北部地域に固まっているっていう話だから、競合相手がいなくて図に乗ってしまったんじゃないか?それと、こんなに大事になるとは思っていなかったんだろう」

「見通しが甘いよな。大手のギルドがこぞって警告していたのを無視したんだろ。自業自得だ」


 相手プレイヤーたちの動きを見て、呆れた声がそこかしこから上がっている始末だ。その間にも両者の距離は徐々に縮まっていき、やがてもうすぐ接触するという時にそれは起きた。


「敵陣内より魔法が放たれました!狙いは……、戦場です!」


 『火球』の魔法をアレンジしたものなのか、巨大な炎の塊が次々と敵の陣地から撃ち出されていく。それは小さな弧を描いて戦場の中央で今にもぶつかり合おうとしていた二つの人の群れへと襲いかかろうとしていた。


 グンッ!と柳眉さんたちが速度を上げた。それはまるで映像のコマがいくつか落ちたかのような不思議な光景だった。

 あっという間に敵の一団との距離を縮めてしまった彼らは、戦うことなくその間をすり抜けて行く。

 そして残された敵プレイヤーたちが訳も分からず歩みを止めたその場所に、放たれていた火球の群れが落ちていったのだ。


 戦わずに先頭部隊を壊滅させることに成功した柳眉さんたちがあちらの陣へと殺到して行く。

 それを後押しするかのように、こちらの魔法部隊による様々な攻撃魔法が敵陣のあちこちへと突き刺さったのだった。


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