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この『アイなき世界』で僕らは  作者: 京 高
19 邪神をやっつけろ!
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314 操る者、乗せられる者

「全く今頃になってしゃしゃり出てくるなど、北西地域の国々の指導者たちは一体何を考えているのでしょうか」


 ミロク君と一緒に『聖神教』の本部代わりになっているサウノーリカ大洞掘の砦へと報告に向かったところ、ランドルさんは苛立ちを隠しきれないといった様子でそう呟いていた。

 彼やファルスさんの護衛として同室にいた数名の神殿騎士さんたちも憤懣やるかたないといった顔をしている。


「狙いは私たち『聖神教』へと恩を売ることでしょうか?」

「口実としてはそうだけど、実際のところは中央地域への侵出じゃないかと思う」


 ファルスさんの質問にミロク君が答える。あ、この場にいる人は全員ミロク君が魔王であることを知っているよ。


「北西地域は小さな都市国家群がひしめき合っている。そして北の地だけに『光雲』が薄く土地が痩せている。南へと侵出する絶好の機会だと考えたのかもしれないな」

「でも、いくら小さいと言っても別々の国でしょう?そんなに簡単に結託できるものなのかな?」


 確かあそこは地上時代にまで遡ることができるという――ことを売りにしている――名家がそれぞれの国を支配していて、互いに対立し合っていたはずだ。


「そこは多分裏で糸を引いたやつらがいるんだろうな」


 ボクの疑問にミロク君は忌々しそうにそう口にした。


「ほら、早々に今回の騒動からは身を引いた連中がいただろう」

「……もしや!?北西の国家群の後ろには『賢人の集い』がいると!?」

「あの地域には『賢人の集い』の最大の支部が置かれていて、対外的な窓口にもなっている。恐らく間違いないだろう。

 これはあくまでもオレの予想だけど、元々は『神殿』側について『賢人の集い』と合同でオレたちの方へ向かって軍を進めるつもりだったんじゃないか」


 ところが『冒険者協会』が『聖神教』の支持を表明したことで勢力関係が一変してしまった。


「表立って『神殿』に協力するのはリスクが大きいと考えたんだろうな」


 一応ミロク君の予想なのだけど、最初はこちらを攻撃するつもりだったとか、すごくあり得そうな流れだ。


「それでは騎兵の中に『賢人の集い』より派遣された魔法使いが潜んでいると考えておいた方が良いですな」

「どのくらいの人数かな?」

プレイヤー(冒険者)が一割の百人だという話だから、だいたいそれと同じくらいじゃないか」

「魔法使い、しかも『賢人の集い』に所属する者が百人となるとかなりの脅威となります。戦力としては二倍から三倍になるかと」


 なんでも『賢人の集い』では攻撃性が高く、使用が禁じられた魔法の管理などもしているそうで、公には秘密にされているが、抑止力としてそれらの禁呪が使える者が何人かは存在しているらしい。


「今回の派兵にそうした人物を紛れ込ませてはいないとは言い切れません。十二分に用心しておくべきでしょう」


 同じ世界規模の組織である『神殿』がこの有様なのだ、『賢人の集い』だって腐敗が起きていても不思議じゃない。最悪の状況を想定しておくのは当然だろうね。


 ふと視界の隅にメールが送られてきたことが通知された。


「……その冒険者たちですけど、こちらの説得には応じなかったみたいです」


 みなみちゃんさんたちから「正面から戦えばどちらにも大きな被害が出るから、考え直して欲しい」と連絡したところ、「ゲームの中の人間がいくら死のうが知ったことか。俺たちは俺たちのやり方でイベントに参加する」と返ってきたそうだ。


「アホだな、そいつら。仮に上手くいって『神殿』を制圧できたとしても、他のギルドから嫌われたら収支的にはマイナスだろうに」


 最近では生産系のギルドも増えてきていて、プレイヤーメイドの装備品や道具類も数多く出回るようになってきた。むしろ装備品にいたっては極一部を除いてプレイヤーが作った物の方が高品質であることが多い。

 今回の独断行為によって、彼らはそうした品々を購入できなくなる可能性がある――しかも高確率で――のだ。

 うん、アホと言われても擁護のしようがないね。


 ちなみに、NPCの被害を気にしないという考えなので、当然、一般的なNPCからも嫌われることになるはずだ。


 そうそう、今回の件についてのプレイヤーやギルドのスタンスについて説明しておくね。まず『冒険者協会』が『聖神教』を支持するように圧力をかけてもらったのはご存知の通りだ。

 そしてその後だけど、基本的に傍観してもらうことになっている。どうしてそうなったのかというと、『神殿』内部の問題だからということもあるけれど、関わったところでうま味が少ないというのが一番の理由だったりする。


 以前にも説明したことがあったと思うけれど、聖地ホルリアがあるロピア大洞掘中央地域は基本的には探索し尽くされている。『英雄の森』のようなヒドゥン・ダンジョンが発見されるかもしれないけれど、それは他の地域であっても変わらない。

 それなら攻略最前線の北部地域などに残っていた方がいい、となるのだ。


 ついでに言うと、ファルスさんたち『聖神教』からは、「改革が成った時には『転移門』の使用料金を引き下げる」という報酬があらかじめ提示されているということも関係しているだろうね。


 北西地域諸国の軍に参加した彼らは、イベントで活躍しさえすればどうとでもなると思っているようだけど、考えが浅い気がするなあ。


「ええと、どうもその返事を見て、うちのギルド長が切れちゃったみたい。「そういう態度ならこちらも容赦はしないから」って、他のギルドと色々と作戦を詰めているみたい。行動に出るのは一日だけ待って欲しい、だって」

「一日で何とかなるものなのですか?」


 はい。実はその詳細も送られてきています。


「ランドルさんなら知っていると思いますけど、冒険者の一部はミソやショウユにこだわっています」

「ええ、知っています。まあ、あの美味さであればこだわるのも当然だとは思いますね」


 そのミソやショウユの原材料である大豆は、聖地ホルリア周辺の特産品だったりするのだ。


「ホルリアを攻めるということは、その大豆をダメにしてしまうことにもなりかねないんです」


 その警告で止まるなら良し、止まらない場合はミソとショウユが大好きなプレイヤーたちが、総出で襲いかかっていく手筈を作っているそうな。


「食べ物の恨みは恐ろしいですから。きっとトラウマになるようなひどい攻撃を受けることになると思います」


 ボクの説明にファルスさんたちは何とも言えない顔になるのだった。


聖地ホルリア周辺で大豆が作られているのは、若い神官や司祭たちのための精進料理に使っているから、というそれらしい設定を今回のお話を書いている時に思いつきました。

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