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この『アイなき世界』で僕らは  作者: 京 高
18 神殿 対 魔族
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310 みんなモフモフが大好きだ!

「それでは『第三回リュカリュカちゃん対策会議』を本人同席の元で始めたいと思います」


 ええと、どうしてこうなったのでせう?


 邪神が操る『神殿』上層部との戦いを有利に進めるため、同じく世界的な規模を誇る組織の『冒険者協会』を引き込んでしまおうと画策をしたボクたちは、その脅迫、もとい説得を一緒に行ってくれる仲間――対象はNPCを含む冒険者全員だけど、メインターゲットはプレイヤーだ――を増やすため、各地に散ることになった。

 もちろんボクが向かったのは懐かしの古都ナウキだ。


 そして戻ってきた瞬間、あらかじめ連絡を入れていたみなみちゃんさんたち『わんダー・テイみゃー』のメンバーに捕獲されてしまい、なぜかギルドホームの大会議場の壇上に立たされているのだった。


 ちなみに、移動には砦に据え付けられていた『転移門』を使用したのだけど、砦への転移は同行している魔族が認めた相手のみ可能という魔改造をミロク君によって施されていたりする。

 原理不明の魔導装置すら自分の都合よく改造できてしまう魔王様の力、恐るべし!

 まあ、一番驚いていたのが当の本人だったりするのが笑えないところだ。


 そして彼は現在、ボクと一緒に古都ナウキへとやって来ているはず。

 ええ、捕獲されてしまったのでよく分からない状態なのですよ……。

 ミロク君が来た理由は、大手ギルドに協力を求める時に場合によっては魔王本人がいた方がいいかもしれないからだ。

 でも、彼が前に出なくちゃいけない時点で色々とアウトな気もする。それでも取れる手段は多い方がいいので同行してもらっているという訳。


 そして魔王様のお目付け役という名目でシュレイちゃんも同行している。

 今も『移動ハウス』の中でティンクちゃん、もしくはうちの子たちの誰かに常にへばりつかれているはずだ。


「そこ!分かっているなら助けなさいよ!」


 何やら背中の『移動ハウス』から叫び声が聞こえた気がするが、きっと幻聴でしょう。


 さて、いつまでも現実逃避――ゲームの中で現実逃避とかこれ如何に?――をして過去のことを思い出していても仕方がない。

 とりあえず何がどうなっているのか状況を整理してみましょうか。


 集まっていたのはボクが所属する『わんダー・テイみゃー』のギルドメンバーがほとんどだった。ボクと同じ壇上にはギルド長のみなみちゃんさんに、副ギルド長の遥さんが立っていた。

 そして向かい合うように棗さんや昌さんを始めとした幹部やギルドメンバーが座っている。ギルドメンバー以外としては『料理研究会』の多恵さんやマイさん、それにドワーフにそっくりな人――プレイヤーを示す青で表示されていたので、そういう外見にしているようだ――なども参加していた。

 後、部屋の後ろの方にトアル師匠らしき人の顔が見えたような気が……?


 残念ながら?バックスさんやロヴィン君、ゼロ君たちは帝都の方でアルス君、いや皇帝陛下って言わなくちゃいけないかな?とにかく彼の手伝いをしているので不在とのことだった。


「えー、既にお聞きのこととは思いますが、監査祭とドラゴンに続きうちのリュカリュカがまたやらかしましたようです。しかも今回は『アイなき世界』中を巻き込みかねない大事になる可能性もあります。そのため、慎重にこれからの方針を決めていこうと思っています」


 みなみちゃんさんが挨拶をすると、なぜか部屋中の人たちから生暖かい視線を向けられてしまった。

 皆さん、失敬ですよ。


「とにかく、まずは本人から詳しい事情を話してもらいましょう」


 と、遥さんに促されて壇上の中心へと進む。

 ……ええと?何をどこから話せばいいのか分からず、みなみちゃんさんを見る。


「ここにいる人たちは全員、あなたのフレンドモンスターのことやドラゴンの一件なども全て説明してあるわ。だからそうね……、サウノーリカ大洞掘へと向かうことになった流れと、実際にサウノーリカへと移動する当たりのことから説明してちょうだい」


 うーん、それじゃあシュレイちゃんが前皇帝を煽って古都ナウキに侵攻させた――大規模イベントの時のことね――黒幕だったことだけは伏せつつ、話していくことにしようか。




「ムカつく!何よそいつ!テイマーの風上にも置けないわね!」


 話し始めてから十分ほど経ちますが、えー、サウノーリカでの事件どころか、サウノーリカへと向かうことになった理由にすら到達できていません。


「シュレイちゃん可哀想!世界とか神を恨むようになっても仕方ない!」

「ティンクちゃん、健気。ホロリ……」

「モフモフは正義!モフモフは正義!」

「喋って二足歩行の猫さん……。ハァハァ……!」


 うん、ここにいる人間のほとんどはテイマーであり、動物や魔物が大好きっ子なのだ。こうなるだろうことに気が付くべきだったね。

 それにしても人の好みにケチを付ける気はないけど、ちょっと危ないタイプの人が増えていない?後でうちの子たちを紹介するべきか迷ってしまいそうです。


 すっかり暴走状態になってしまったけど、これ、どうしましょうかね?

 いつもなら遥さんがストッパー役になるはずなのに、シュレイちゃんとティンクちゃんの境遇に感情移入し過ぎてしまったようで、


「テイムしたモンスターたちを迫害した場合、何らかのペナルティが発生するように運営に要求しなくちゃ……」


 と会議そっちのけで何やら文書を作成していた。あれ?遥さんとみなみちゃんさんはティンクちゃんたちの事情を知っていたはずなんだけど……?とにかく、こうなるともうブレーキが壊れた暴走車両と同じだ。外部からの干渉がなくちゃ止まらないだろう。

 そんな訳で面倒だとは思いますが、出番ですよ、多恵さん、マイさん。


「いいなあ、テイムモンスター……。ねえ、マイっち、ウチらもテイマーに転職しない?」

「こらこら、ギルド長が冗談でもそんなことを言わないの。せめてフレンドモンスターを探しに行くので我慢しなさい」


 ダメだこりゃ!?

 よくよく考えたら彼女たちもこの場に来呼ばれるくらい――もちろん、ボクと知り合いであることも関係している――だから、当然モフモフ好きだよね……。


 こうなればあなたが最後の頼みの綱です!

 ドワーフのそっくりさん、皆を一括して目を覚まさせて!


「モフモフか……。次の面白グッズは着ぐるみというのもアリかもしれんな!」


 プルータス、お前もか!?

 彼は生産職らしく、手元の紙にアイデアを書き続けていたのでした。


 結局、皆が我に返ったのはそれから数十分後のことでした。


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