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この『アイなき世界』で僕らは  作者: 京 高
18 神殿 対 魔族
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308 魔王の力

「そんな流れでエレクトリックスライムさんたちと一緒になって『ケン・キューカ』を名乗るおじさんをやっつけたことでNPCの信頼を得ることができました。後は彼らに協力してもらってサウノーリカ大洞掘へと密行してきたという訳です。あ、ちなみにこの砦にいる非戦闘員の多くが、ボクと同じ方法でやってきた人たちらしいですよ」


 一つ話すたびにやれおかしいだの、やれ変だのと言われながらも、最後まで丁寧に説明したボクはかなり我慢強かったと思う。


「マジか……。そんな方法でサウノーリカ大洞掘に来ることができるようになっていたのか」

「というか、あの大洞掘間通路を通ることができたのが驚きだ」


 しばらく無言になった後で、何人かのプレイヤーがポツリと呟いた。まあ、実装されているかどうかすら曖昧にされたままだったから、手順を踏む必要があったとしても行き来できるようになっていたとは考えなかったのだろう。


「むしろどんなプレイヤーでも可能だから、リュカリュカちゃんの方が正規ルートだとも言えそうだ」


 サウノーリカへの密行については戒厳令を敷かれている訳ではないので、ロピア大洞掘西端地域でまめにNPCと会話をして仲良くなっていけば、それらしき情報を入手することはできる。

 いわゆる「ここだけの話だけど」という感じで教えてくれるのものだった。


「それにしても、その途中経過が、どうしてそうなった!?って言いたくなる内容だったな」

「会話ができる人型スライムに遭遇している時点でまずおかしいが、そのスライムたちと一緒に謎の悪の組織を壊滅させたとか意味が分からん」


 成り行きです!成り行きなのです!


「サイボーグに機械兵器とかファンタジーな世界観を完全に無視しているなあ」

「いやでも設定的には『アイなき世界』は未来のはずだから、それほど変でもないような気もするぞ」


 忘れがちだけどありましたよね、そういう設定。忘れがちだけど。


「『神殿』だって『転移門』を管理するという名目で、実質その技術を独占している訳だし」

「冒険者協会の冒険者カードにいたっては科学と魔法のハイブリットで、しかもロストテクノロジーだという設定になっているから、一部の組織にだけそうした技術が残っていてもそれはそれであり得る話ね」


 技術を独占といっても『転移門』は新しく作れるほどの理解はできておらず、辛うじてメンテナンスができているという段階でしかない。

 冒険者カードは、こちらもまた原理不明の製造機によって作ることはできるのだけど、肝心の制作過程の方はさっぱり分かっていないらしい。つまり将来的にはどちらも使用できなくなる可能性がある、ということだったりする。


「ちょっと皆、話がそれているわよ」


 姉御が『アイなき世界』での技術討論会に発展しそうだった話題を、力技で強引に修正していく。具体的には声をかけると同時に、話に夢中になりかけていた人たちの頭を軽く叩いて回っていた。


 余談だけど、兜の上からなので怪我の心配は全くなし。その代わりに金属製兜の数名からはやたらと良い音が響き、有名曲の一小節を奏でたりしていた。

 ……何という無駄なこだわり。怪訝な顔をする姉御や周囲の人たちとは対照的に、彼らはやり切った感のあふれる素敵な笑顔を浮かべていたのでした。


「え、えーと……。サウノーリカに来たところまでは分かったわ。それで、魔王とはこちらで出会ったのかしら?」


 姉御、なかったことにしたみたいですが、声が上擦っていますよ。

 まあ、指摘すると面倒なことになりそうなので、スルーしますけどね。ボクは気遣いのできる子、じゃなくてできる大人ですから!


「そうです。ランドルさんのお願い通りにこの砦には来ないで、大洞掘間通路出口の廃墟で待っている時に出会いました」


 元々砦に寄るつもりがなかったことまでは言う必要はないだろう。


「それで、何を話したの?」

「世間話とか魔族の過去とか、ミュータントについてだとか色々です」

「せ、世間話……」


 ボクの答えに一部の人の顔が引きつっている。まあ、魔王イコール最終ボスという古き良き時代のゲームや漫画やアニメのイメージが強いとそうなるのだろう。

 最近のライトノベルとかだとそちらの方が珍しくて、弱かったり苦労性だったりすることも多いから魔王といっても話が通じる相手だという認識の人も結構多いと思われます。


「ああ、そうだ!神話というか『神殿』が伝えている魔族が神様たちに逆らったとか、他の種族を弾圧したとかいう話は嘘だったみたいですよ」


 この点に関してはアリがちな展開というやつなので特に誰も驚くことはなかった。むしろ「ああ、やっぱりね」という反応でしたよ。

 ついでにサウノーリカでは一部の魔族が奴隷として扱われていたことや、『ミュータント』が魔族だという噂は報復を恐れた旧支配層が流したデマだったことなども話しておいた。


「そのことは余り公にしない方がいいかもしれないわ。その時と同じように「魔王という指導者を得て、魔族たちが報復してくる気だ」とか対立を煽るバカが出てくるかもしれないから」


 雨ー美さんの意見にプレイヤーの人たち全員が頷く。うん、確かにそれはものすっごくありそうだ。わざわざ相手に付け入る隙を与えてやる必要はないので、このことは一旦ボクたちの胸の内に仕舞っておくことになったのだった。


「あの、素朴な疑問なんですけど……」


 そう言って手を上げたのはキリナさんだった。


「昨日、一人で『ミュータント』の片割れと戦っていたのは誰なんですか?」

「そういえば彼が誰だか話さないままになっていましたね。あれが魔王様ですよ。あ、それと遠距離から『ミュータント』二体をふっ飛ばして瀕死にさせたのも魔王様の攻撃です」


 そして世界は凍り付いた!

 ……いやいや、魔族の人たちも一緒になって驚いていたじゃないですか。そんなことができる人間なんて一人しかいませんぜ。


「あ、レベルは百オーバー、能力値換算だと二百レベル近いっていう話ですよ」


 これも魔王の職業補正の結果らしい。


「は、ははは……。最低でもトッププレイヤーの倍以上のレベルかよ」

「ねえ、あの時の最後の攻撃、火属性魔法最強の『極炎』だとばかり思っていたけど、もしかして違うんじゃ……」

「おいおい「…今のは『極炎』ではない…『火弾』だ…」とかいうのかよ!?」


 はい、そこ!危ないネタは止めましょう!


「いやいやいやいや。さすがに『火弾』であの威力は出せないはずだ!?……出せないだろう?」


 そこでボクを見られても困るんですが。とりあえず、


「いくらなんでも『火弾』では無理だと思いますよ」


 皆の精神の安定のためにそう言っておくことにしたのだった。


この章が始まってから、いつかはあのネタを使ってみたいなと考えていたのですが、やっと使うことができました!

元ネタを知らない方や、こういうネタが嫌いな方には申し訳ありません。

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