305 そして夜が明けた
明けて翌日、ログインしたボクが目にしたのは探検と称して砦の中を走り回る村の子どもたちとうちの子たちの姿だった。
「そういえば昨日は全員あのまま『移動ハウス』に戻ることなく、会場内にいてもらったのだったっけ」
そこまで思い出した時点で、昨日の宴会の惨状も思い出してしまいました。
曲がりなりにも祝勝会と言えたのは初めのうちだけで、お酒が回り始めた中盤以降はもう無礼講な大宴会と化してしまった。さらに村の人たちや砦の非戦闘員の人たちも加わって、後はもう飲めや歌えの大騒ぎとなっていたのだった。
まあ、ある意味で世界の果てに押し込められていたのだ、いい感じにガス抜きになったのではないかと思う、ことにした。
ちなみにアッシラさんだけは威厳を保つ必要もあり、早々に『移動ハウス』へと帰還していた。
その際大量のお料理を持ち込んでいたので、多分今でもポンポコリンなお腹でグースカと寝ているものと思われます。
それでもさすがは神殿騎士とその関係者だ。今ではもうすっかりお酒の影響はないようで、テキパキと片付けを行っていた。
あ、魔族の人たちもそれを手伝っている。魔族であることを明かした後でも今と同じ光景が見られることを切に願うよ。
「おお、リュカリュカ殿。もう起きても大丈夫なのかな?」
声がした方へと振り向くと、ファルスさんとランドルさんが近づいて来ているところだった。
「おはようございます。片付けを任せてしまってごめんなさい」
「なんのなんの。『ミュータント』と直接戦っていた方々の苦労に比べれば、このくらいなんでもないことだ」
「特に元冒険者であった者たちには助けられました。彼らがいなければ今頃この砦は『ミュータント』によって破壊し尽くされていたことでしょう」
その殊勲者である元冒険者、つまりプレイヤーの大半はまだ割り当てられた部屋で眠っているとのこと。昨日の早い段階で姉御やタクローさんに頼んで、話し合いを開始する時間を連絡してもらっているので、もうじき起き始めるだろう。
「ところでリュカリュカさん、ファルス様からおおよその事情は伺いました」
「すまない。本当は先に君に断りを入れるべきだったのだろうが……」
「ファルスさんが必要だと判断したのなら問題ないですよ。全員に話をする前にランドルさんのような立場のある人に説明しておくのは当然のことだとも思うし」
実際ログイン前には、いつランドルさんに詳しい話をするべきなのかをファルスさんと相談しようと考えていた。
「それに――」
と、そこでランドルさんの方へと体を向けて、
「気付いていましたよね。援軍の彼らが魔族だってこと」
ニッコリと笑顔でそう言い放つと、ランドルさんは何とも言えない顔をしていた。
「あれほどまでの力を持つ集団となるとそれほど多くはありません。それに例の神託のこともありましたので、恐らくはそうなのではないか、と。ただ……、まさか魔王なる者まで同行しているとは思ってもみませんでした」
邪神の言葉の中でも魔王の存在については触れられていなかったようだし、それに気付けというのは無理難題というものだろう。
だけどその割には昨日ミロク君が魔王だと告白した時にさほど驚いていなかった気がする。
「いえ、あの時は驚き過ぎて頭が真っ白になっていただけのことです。先ほどファルス様から話を聞いて肝が冷えました……」
もしかすると頭が理解するのを拒んでいた、という状態だったのかな。まだイツシを追い詰めきってしまう前のことだったので動きが悪くならなくて良かったのかも。
「分かっているとは思うけど、彼、悪い人じゃないですよ。こちらから敵対行動を起こさない限り、害されることはないはずです」
「そうでしょうね。彼からは他の地へと攻め込もうとする野心のようなものは感じられませんでしたから。しかしそうなると、昨日の最後のアレはやはり……?」
「警告、ですね。それと魔族が舐められないようにするための予防線だと言ってました」
予想が当たっていたらしく、ボクの答えを聞いてランドルさんは何度も頷いていた。
「確かにあれ以上はないほどの予防となりますね。少なくともあれを目にしておいて敵対しようと考えるような愚か者はいないでしょう」
ちょうど地下牢へと運ばれる最中だったイツシたちもあの光景を目にしていたのだけど、真っ青になって震えていたそうだ。
まあ、ボクの挑発にすら乗ってしまうような小物だったし、当然といえば当然かな。
問題は『神殿』の上層部のように邪神に操られていたり、洗脳されていたりする場合だろう。捨て石にしたり敗北覚悟で突っ込んで来られたりしてしまうと、多少の損害は発生してしまう可能性がある。
それでも可能性という域に収まってしまうのだから、ミロク君の強さってばやっぱり異常だわ。
「それと、報告を受けても自分の都合のいいようにしか解釈しない者も厄介だな」
そういう人に心当たりがあるのか、自分で挙げておきながらファルスさんは微妙な顔になっていた。
「そういうおバカにはその時々で対処するしかなさそうですね」
周囲への見せしめとしてドカーン!とミロク君たちにやっつけてもらうか、それとも魔族さんたちによる搦め手で身動きできなくするかはその時次第ということになるだろう。え?他力本願?何を今さら。
どちらにせよ『神殿』という組織を再構築するつもりなので、敵対してくるなら容赦をするつもりはない。再起できるかは本人のこれまでの行いと性根次第だ。
まあ、それも神殿騎士の人たちの協力が必要不可欠であるため、この後の話し合いが上手くいってこその話となる。
「昨日の共闘もありますから、我々『神殿騎士団』と魔族との間に協力関係を結ぶことは問題ないと考えます」
宴会でもかなり意気投合している姿が見られていたので、ボクもその点はクリアできるとみている。
「そうすると『神殿』に弓を引くことになることを是とするか否か、が焦点となるか」
「邪神にいいように利用されているという点と、『神殿』の権力や地位を使って悪いことをしている人間が増えているという点から説得していこうかと思っています」
プレイヤー、NPCを問わず神殿騎士なんていう職業に就いているのだし、正義感は強いのではないかと思う次第であります。
さて、そろそろ時間だ。頑張って説得をするとしますか。
今回のタイトルですが、某国民的RPGシリーズのイベント後の定番のフレーズ、だったはず?
私の記憶違いで、微妙に違っているかも。
ちなみに前話はバレバレでしょうが、その三作目のサブタイトルです。




