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この『アイなき世界』で僕らは  作者: 京 高
2 新装備でパワーアップ!
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27 ラーメン一丁!

 街の外にあるあばら家へと向かう。


 足元のテイムモンスターたちは一様に新しい装備品を身に着け、どこか誇らしげな顔になってる。

 イーノとニーノの二匹はお揃いの毛皮の胴衣に兜という出で立ちだ。

 違うのは金属製の兜の補強くらいなもので、イーノには突進用の角が、ニーノには厚めの額当てが取り付けられていた。


 融合してコッカトリスのビィトとなっているワトとビィには、それぞれ腹巻のように毛皮が巻かれている。

 これだけで今までのボクの防御力よりも高いんだから、どれだけ毛皮が高品質だったのか、そして加工してくれたクジカさんの腕がどれだけ良かったのかが分かるというものだね。


 だけど一つだけ言わせて。


 毛皮装備って鍛冶技能で作れるものなの?


 おかしくない?

 勿論クジカさんには尋ねてみたよ。尋ねたけど


「嬢ちゃん、男には例え酒が入っても語れない過去ってものがあるのさ……」


 と、カッコつけてはぐらかされてしまった。

 今度ロヴェル君にでも聞いてみよう。


 そのロヴェル君だけど、先日会った時には見事に装備が一新されていた。

 それを見たバックスさんにPvPに誘われていたのは御愁傷様(ごしゅうしょうさま)としか言えなかったけれど。

 しかも場の雰囲気的に断ることもできず、ほとんどなし崩し的にPvPは行われた。

 その結果は、さすがはどちらも上位職にクラスチェンジ済みのプレイヤーだと感心させられるものだった、とだけ記しておく。


 目的地であるあばら家の前では、男性が一人竈の準備をしていた。

 『光雲』のお陰で明るいままだけれど、時刻はもうすぐ午後七時になるところだ。きっと晩御飯の準備を始めているのだろう。


「こんばんは。お久しぶりですね、『はぐれ者』さん。ボクのことを覚えていますか?」

「うん?ああ、ロヴェルと一緒にやってきたお嬢さんか。久しぶりだねえ。私に何か用事かな?」


 そう言いながらも、その眼は何かを期待するような輝きを放っている。


「ふっふっふ。ご依頼のラーメンをお持ちしましたよ」

「おお!まさか本当に再現できたのかい!?」

「はい。と言うか、街であれだけの騒ぎになっていたから、大まかな進捗具合は知っていたんじゃないですか?」

「まあね。でもそれを言っちゃうと興醒めだろう」


 それは言えてるかも。


「まだ一般販売はされていませんから、関係者以外では『はぐれ者』さんが一番ですよ」

「一番じゃなかったのか、残念」

「ごめんなさい。たくさんの人が協力してくれたから、内輪の完成お披露目会をしない訳にはいかなかったんですよ」


 それと、プレイヤー側としては中途半端な出来のものは出せないという、謎の使命感があったりしたんだよね。

 そうそう、ロヴェル君やバックスさんと再会したのもこのお披露目会で、だった。

 おめでたい席で、しかもお酒が入っていた人も多かったからロヴェル君はPvPを断れなかったのだ。実際、余興としては最高のものだったと思う。


「冗談だよ。それにしても噂の類いは耳にしていたけれど、随分と大勢の冒険者が口を挟んできたようだね?」


 お披露目会に来ていた人だけで数百人はいたので、関わった人の総数は千人を越えているんじゃあないだろうか。


「ええと、まあ、口を挟むというか口を開けるというか?その分作るのも主導してやってくれたのでボクとしては楽だったんですけどね。っと、長々と話していても仕方がないので、食べてみて下さい」


 アイテムボックスからできたて熱々のラーメンを取り出す。

 ゲームによって色々と仕様が異なっているけれど『アイなき世界』の場合、アイテムボックスは時間停止タイプだ。なのでこんな芸当が可能となっている。

 ちなみに特定クエストをクリアすることで、アイテムごとに時間進行を変更できるようになるらしいのだけれど、推奨レベルが最低でも上位職のクラスチェンジ済みという高難度らしい。


 それはともかく、せっかく晩御飯に間に合ったのだから、さっそく味わってもらいましょうか。


「ああ。これは食欲を刺激するいい香りだねえ……」


 ラーメン丼――どこかの陶芸ギルドのお手製らしい――に顔を近づけてクンクンと鼻を動かしているその姿から、なんとなく猪系の魔物を連想してしまった。

 一方イーノを始めとしたボクのテイムモンスターたちはというと、ボクの足元で『はぐれ者』さんを羨ましそうに見ていた。

 君たち……。お披露目会でお腹いっぱい食べていたでしょうが。


「それじゃあ、いただきます」


 場違い感を感じながらも、日本製のゲームなんだからおかしくはないのかな?なんてどうでもいいことを考えてしまう。ちなみに丼にはレンゲとフォークを添えてある。


「はあー、これは美味しいねえ」


 ズルズルとフォークで麺をすすっているのを見ていると、お腹が空いてくるような気になるから不思議。

 匂いからすると、正統派のしょうゆラーメンのような感じなのだけれど、一体どんな味がするんだろう?


 え?お披露目会で食べたんじゃないかって?

 実はボクはまだ食べていなかったりします。無理を言ってボクの分は持ち帰りにさせてもらったのだ。


 それというのも、テイムモンスターたちの装備品の支払いが足りなかったから!


 だって、クジカさんったら、補強用の金属を鉄にミスリルを少量混ぜた『白鋼(はくこう)』なんていう貴重品を使っているんだよ!?

 そんなの本当はレベルがやっと二桁になったばかりのひよっこ冒険者――しかも実際に使用するのはテイムモンスター――が扱えるものじゃないよ!


 クジカさんからは催促なし金利なしのある時払いで少しずつ返済していけばいいと言われたけれど、それではボクの気が済まないので、ボクの分のラーメンを御馳走することにした。

 まあ、後一週間もすれば古都にある料理系ギルドが一斉にラーメン販売を始めるらしいので、それまでの我慢だ。


「ぷはあ!ごちそうさま」


 スープの最期の一滴まで飲み干して、『はぐれ者』さんは満足げにそう言った。


「いやあ、こんな美味しいラーメン*****モニョモニョモニョモニョに食べたよ」

「え?」


 何?今聞き取れない言葉が混ざっていたような気が……。


「ん?どうしたんだい?」

「あ、いえ、何でもないです」


 きょとんとした顔で問うてくる『はぐれ者』さん。

 ……気のせいだったのかな?グドラク君と話していた時と同じような感触があったんだけど……。


「さて、無理難題を叶えてくれたお礼をしなくちゃな。……その前に自己紹介をしておいた方がいいか。いつまでも『はぐれ者』なんて呼ばれ方をしたくはないし」

「あ、それじゃあボクの方から名乗ります。リュカリュカ・ミミル、新米テイマーです」


 そしてテイムモンスターたちも紹介していく。


「うん、ご丁寧にどうも。改めて『はぐれ者』こと天才錬金術師のトアル・ミケスだ」


 おおう!ロヴィン君から聞いていたけれど、本当に天才錬金術師って名乗った!


「それで、リュカリュカはどんな錬金の業を必要としているのかな?」


 問われて事情を話していく。


「ふむふむ。テイムしたモンスターたちの成長に合わせて自動で大きくなる装備、か。ラーメンを頼んだ私が言えたことじゃないけれど、君も随分無茶なことを考えるね」

「もしかして無理なんでしょうか?」


 ここまで来てまさかの振り出しに戻る!?


「いいや、無理ではないよ。面倒ではあるかもしれないけれど」


 そしてトアルさんはその方法を話し始めた。


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