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この『アイなき世界』で僕らは  作者: 京 高
8 新しい大地、もう一つの大地
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106 意外な再会

 久しぶりのベッドで眠ったボクたちは、翌日にはすっかり元気を取り戻していた。そして食堂で大量のご飯を食べて――ボクじゃなくて、うちの子たちのことだよ!――、いざ関所へ出発!したところで出鼻をくじかれた。


「まさかテイムモンスター一匹ずつにまで通行料がかかるとは思わなかったなあ……」


 関所を抜けるための料金はそれほどでもないのだけれど、問題はその後、ロピア大洞掘側への転移門の使用料だった。

 ボクにイーノとニーノ、ビィトそしてティンクちゃんの五人分となるとかなりの金額だ。当然手持ちでは完全に足りていなかった。


「リュカリュカさん、やっぱり収納ボックスを買った方が良いと思います。そうすれば町に入るのも楽になりますし」


 ティンクちゃんがそう言うのには訳があった。テイムモンスター専用の収納ボックスに入っている場合、転移門の使用料は必要なくなると、関所にいた神殿騎士さんが教えてくれたのだ。

 そして一番安い五匹用の収納ボックスを買う方が、五人分の転移門使用料よりは安上がりだった。


「うーん……、でもそれだとティンクちゃんだけを町の入り口に置いていくようになっちゃうから」


 そう、フレンドモンスターとテイムモンスターは別の扱いであるためか、収納ボックスには入れないのだ。

 そのため、それぞれの町の入り口に作られた『モンスター預り所』で待っていてもらう必要があるのだ。ただ、こちらの方は近日中に何かしらのアイテムが実装されて改善される予定なのだという。


「我が儘でごめんね。でも、ティンクちゃんも大事な仲間でうちの子だから」


 これまでの辛い経験から、この子は遠慮したり一歩引いたりしがちなところがある。だからボクは頻繁に声に出して気持ちを伝えるようにしていた。


「にゃっ!?みんな!?」

「ごご!」

「ぶも!」


 すると彼女を両側から挟み込むようにしてイーノとニーノが体を擦り付けていき、ビィは驚く彼女の左手にするすると巻き付いて


「しゃあ」


 と甘えた声を出している。


「ぴよ」


 そしていつの間にかティンクちゃんの頭の上にはワトが乗っていた。


「みんなもティンクちゃんと一緒がいいって言っているよ」

「みんな……。うん。私もみんなと一緒がいい」


 イーノたちの気持ちを代わりに伝えてあげると、ティンクちゃんも素敵な笑顔でそう答えてくれた。

 ええ子や。うちの子はみんな本当にええ子や。

 気を抜くと感動で涙があふれて、だばーっと滝のようになりそうだったので、ボクは懸命にこらえながらも、その様子を激写していた。


「うんうん。感動だね!素晴らしい光景だねえ!」


 と、突然涙に濡れた男の人の声が僕の耳に飛び込んできた。


「だ、誰!?」


 驚いて振り返った先にいたその人は、誰であろうボクとロヴィン君の錬金の師匠――ロヴィン君としては消し去りたい過去の汚点らしい――であり、『はぐれ者』の名で知られる自称天才錬金術師のトアル・ミケスその人だった。


「師匠!?どうしてここに!?」


 神出鬼没のこの人に聞いても意味のないことだとは分かっていても、聞かずにはいられなかった。


「おや?ラーメンを奢ってくれた弟子のリュカリュカ君じゃないか!……おふ。あの時の味と香りを思い出したら、ラーメンが食べたくなってきた……」


 気付いてなかったんかい!?


「……ラーメンなら古都ナウキに行けばいつでも食べられますよ。それで師匠、もう一度聞きますけど、どうしてここにいるんですか?」

「ああ、ロピア大洞掘から今帰ってきたところだよ」

「ロピアから?なにかあったんですか?」


 これでもこの師匠はNPCの間では有名人だ。そんな人がわざわざ足を延ばしていたということは、何か事件があったのかもしれないと思ったという訳。


「心配するようなことは起きていないよ。まあ、もうじき起きるかもしれないけど……。私の用は別件さ。あの時のシークレットについて調べて回っていたんだ。この天才錬金術師である私が知らない効果があるなんてプライドが許さないからね」


 前半何やらボソッと重要なことを口走った気がするけど、ボクにとっては後半のことの方が大切だった。


「シークレットのことを調べていたんですか!?何か分かりましたか!?」


 師匠の言葉に勢いよく問い返す。というのも、あのズウォー領で鬼を倒して以降、たびたびイーノの角は鋭い刃物へと変わることがあったからだ。

 それだけじゃない。ニーノの兜の額当ての部分がハンマーのような形――ギャグマンガか!?――になっていたり、ワトの腹巻から翼が生えて自前のものと合わせて四枚の羽根で飛び回って――とっても楽しそうでした――いたり、同じくビィの腹巻からはトゲトゲが生えて、締め付けた相手にぶすっと刺さって――とっても痛そうでした……――いたりもした。


「いやあ、全然分からなかったよ。あっはっは」


 なに爽やかに笑っていやがりますかー!

 天才錬金術師のプライドはどこにいったの!?


「錬金の世界もまだまだ奥が深いってことさ。ところで、さっきは何を悩んでいたんだい?相談に乗ろうか?」


 うわー、すっごいワクテカな顔でこっちを見てるよ、この人。相談に乗るとか言いながら聞き出す気満々ですよ!みんなの方を見ると、さっきと同じくぎゅうぎゅうとおしくらまんじゅうのように一塊になって遊んでいた。


「ちょっと込み入った事情もあるから長くなりますよ?」

「問題ないね。……だけどそれなら他の人に聞かれない方が良いか。場所を変えよう」


 師匠の後を付いて行った先にあったのは、関所に隣接する立派な建物だった。


「トアル様?何か御用でしょうか?」


 うえっ!?入口に立っていた神殿騎士の人が丁寧に頭を下げてきたよ!?


「ちょっと内緒話がしたいから部屋を貸してくれない?あ、できればこの子のテイムモンスターたちも一緒に入れる部屋にしてもらいたいのだけど」


 いやいや、内緒話ってあなた。そんな怪しい理由じゃ貸してもらえないでしょ。


「すぐに用意しますので、少々お待ちください」


 いいの!?神殿騎士団が目配せをすると、もう一人が急いで建物の中へと入っていった。……師匠っていったい何者?


「昔『賢人の集い』にいたことがあってね。『神殿』や『神殿騎士団』には顔が利くんだよ」


 何か言いたそうな雰囲気の神殿騎士さんの様子から、それだけじゃなさそうだけど、これ以上は聞いても教えてもらえないような気がしたので黙っていることにした。

 そして待つこと数分、ボクたちは窓も何もない小部屋へと案内された。


「聞き耳を立てている人間もいないようだし、ここなら大丈夫そうだ。それじゃあ、これまでのいきさつを話してくれるかい?」


 薄暗い部屋の雰囲気すら楽しんでいるのか、師匠の声音はさっきよりも数段弾んでいるように感じられた。


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