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この『アイなき世界』で僕らは  作者: 京 高
7 冒険者たちの躍進
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102 ラザリ領の事情と宴会

 領境で待ち構えていたラザリの兵士たちは、全員メイプルさんの回復魔法で助けられた人たちだった。まあ、『聖女様』って言っていたから何となく予想は付いていたけど。

 それは同時に、ウチらの攻撃によって怪我をした――マッチポンプ状態……――ということでもあるのだけれど、その点は


「敵対していたのですから当然のことであり、我らは気にしておりません」


 とのこと。むしろ敵対していた相手を回復して回ったということに感動したらしい。

 しかし、ウチらとしては非常に居心地が悪かった。それというのも、奉仕や博愛の精神でやったのではなく、投降を呼びかけた時に抵抗されないようにするため、という狙いがあってやった事だったからだ。


 そして彼らの同行を許可するということは、この気まずさがずっと続くことを意味していた。だけど、敵地ともいえる場所で騒ぎに巻き込まれなくなるというのはとても魅力的でもある。

 相談の結果、ウチらは実利を取ることにした。メイプルさんが、


「この流れには乗っておいた方がいいと思う」


 と皆を説得したからだ。一番精神的なダメージが大きい――なにせ『聖女様』ですから!――はずの彼女にそう言われてしまうと、誰も反論することができなかったのだった。


 さて、兵士たちの護衛もあって、その後の旅はまさに快適だった。さらに彼らの同行によって、行く先々の人たちからも一定の信頼を得ることができたようで、生息する魔物の分布状況やダンジョンの()()といった冒険に役立つ話から、各町の美味しい食べ物や、お店といった娯楽系の話まで、多種多様の情報を仕入れることができた。

 それらの情報は毎日のように掲示板などにアップされ、ウチらの旅路は多くのプレイヤーからも注目されることになったのだった。


「実は我らが領では、冒険者のことをあまりよく思っていない住人が多いのです」


 ロピア大洞掘へと通じる道のある関所の町まで後数日というある日、兵士たちのリーダー格であるソルガさんが、ラザリ領ならでは事情というものを説明してくれた。


「冒険者がやってくる数それ自体は多いのですが、彼らのほぼ全てが帝都やロピア大洞掘へと、あっという間に通り過ぎて行ってしまうのです。移動を優先させるので、冒険者協会へと仕事を依頼しても受けてくれる人がいないということもままあったそうです」


 そうして、徐々に冒険者協会への依頼は減っていき、仕事がないので冒険者はさらに寄り付かなくなる。そんな悪循環の結果、冒険者は所詮余所者であり、いざという時の役には立たないという考え方が浸透していったのだとか。


〈「王弟派が自分たちに対する民衆の忠誠心を高めるために、そう誘導したのかもしれません。領内の冒険者協会で対処できないなら、領軍の出番ということになりますから。まあ、あくまでも推測の域を出ないので、そういう可能性もあるくらいに思っておいてください」〉


 彼らに勘付かれないように、佐介さんからこっそりと送られてきたメールにはそう記されてあった。

 ああ、彼らの上司にあたる人物たちを疑っている内容だから、メールにしたんだね。わざわざ指摘して不快な気分にさせる必要はないということだろう。

 せっかく打ち解けたのだから、最後まで仲良くやっていきたいものだ。




 明日にはロピア大洞掘への関所がある町に着くという日、少し早いけれどウチたちは旅の成功と、彼らへの感謝を込めた宴会を開いていた。場所は街道から少し外れた平地。なにせ百人近い人数だから、町の中だと迷惑になってしまうのだ。

 幸い、兵士たちが護衛してくれたお陰で、安全地帯を生成する守護石はたっぷり残っていた。ここで少しくらい無駄使いしても構わないだろう。


 あ、この守護石なるアイテムだけど、一か月ほど前に突然実装された便利アイテムだ。

 なんでも古都ナウキでの防衛戦について、初の大規模イベントだったのに告知も何もなかったから参加できなかったと多くの批判が運営に寄せられたらしい。

 そのお詫びを兼ねての導入、ということになっているけど、掲示板の某スレッドでは「あの運営が素直に非を認めるとは思えない。何か裏があるはずだ」という疑心暗鬼な書き込みが連日続いている。

 ウチとしては便利なアイテムが実装されて嬉しいというのが素直なところ。


 ただ使い捨てなのに、ちょっとお高いのが難点。どうも多人数での使用を前提として作られているようで、個人で持ち歩くのには向いていなかったりする。

 この微妙な使い勝手の悪さから、「後日個人用のものが実装されるんじゃないか?」とか「レイドボスに挑むためのアイテムじゃないのか?レイドボス実装も目前だな!?」とかいろんな憶測が飛び交っているみたい。


 それはともかく、今は宴会だ!


「ジャンジャン作るから、どんどん食べてよー!」


 石を組んで作られた即席の竈には巨大な鉄板が乗せられていて、その上では大量の焼きそばがジュウジュウと音を立てて焼かれていた。


「くっ!焼きそばはソース味こそ正義だと思っていたが、醤油ベースの和風焼きそばも美味いじゃないか!」

「こっちの塩焼きそばも美味しー!」

「はいはい!肉に野菜のバーベキューもあるよー!」

「なんの!こっちは大塩湖産の魚介類だ!」


 これまでに買い込んできた食材を惜しげもなく放出したので、大盛り上がりとなっていた。


「こ、こんな美味いものがあったなんて……」

「できれば作り方を教わっておきたいですな」

「しかし、償いのために同行を許可して頂いたというのに、こんな持て成しを受けてもいいのでしょうか……?」


 ラザリの兵士さんたちにも好評なようだね。布教用にレシピは準備してあるから、後で渡してあげよう。恐縮してしまっている人もいるようだけど、そんなことが考えられなくなるくらいにお腹一杯にしてあげようじゃないの!


「はーい。おかわり持ってきましたよー!しっかり食べてくださいな!じゃないと、他の人たちに取られちゃいますよ!」


 ウチのアイコンタクトを受けて、『料理研究会』のメンバーの一人が彼らの所に大量の料理を持っていくと、


「うおー!肉寄越せー!」

「塩焼きそばの美味さに目覚めた私に死角はない!」


 続いてその匂いに釣られた餓鬼ども――失礼!――が突入していく。


「うわ!こ、これを渡すわけにはいかない!」

「皆様はいつでも食べられるでしょう!?今は我々に譲ってください!」

「お、女の子の手作り料理なんて、***(モニョモニョモニョ)でも食べた事なんてないわー!くそお……、この恨みは食い尽くすことでしか晴らすことはできんぞー!!」


 あっはっは。計画通りいい感じに大騒ぎになってきたね。


「多恵ちゃん、楽しそうだね」

「おかわり貰いにきたわ」

「ここなら太る心配もしなくていいから、二人ともたっくさん食べてください」


 と、メイプルさんとジュンさんのお皿に焼きそばを山盛りにしていくと、二人は少し困ったように、そしてそれ以上に楽しそうに笑っていた。

 フフフ。これだから料理人は止められないのだよ!


『結界』の魔法は登場させましたけれど、セーフティエリアを作成するアイテムは出していなかった、はず……。

もしも見つけたら、お手数ですがご一報ください。訂正します。

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