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この『アイなき世界』で僕らは  作者: 京 高
7 冒険者たちの躍進
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96 旅立ちの時 後編

 呼びかけに応じてぞろぞろと集まってきたのは、今回、西回りでロピア大洞掘への関所に向かうチームの五十六名――私を除いた数ね――だ。

 この微妙にある個々人の温度差が何とも言えないね。学校のイベント前にクラスで班分けしているみたいだ。


「最初に自己紹介しておくね。ウチは多恵。『料理研究会』のギルド長をやってます。今回の旅でリーダーをやる予定。なんだけど、やりたいっていう人がいるなら代わるよ?」


 できれば誰か立候補してくれないかな。成り行きで色々やってきたけど、リーダーなんて本当は柄じゃないのよね。


「あの、質問があるんですけど……」

「はい、そこの人!」


 おずおずといった感じで声を出した人をビシッと指さす。鎧兜に剣と、見るからに前衛の戦闘職という格好だ。


「その、戦いになった時の指揮も多恵さんが執るんですか?」

「いいえ。知っている人もいると思うけど、ウチは非戦闘系の生産職だから戦いのときには大人しくしているつもり。まあ、同じ非戦闘系の皆にこっちに逃げろ、あっちに逃げろくらいは言うかもしれないけど」

「それじゃあ、戦闘時のリーダーは誰になるんですか?」

「今のところ暫定ですが、私がやることになっています」


 と、ウチの横に出てきたのは、計画を発案した『諜報局UG』の幹部だった。


「ただ、私以上の適任がいるかもしれませんし、今日、明日の様子を見て臨機応変にやっていく予定です」

「そういう訳なんだけど、今からリーダーをやりたい人はいる?」


 少し待ってみたけれど、残念ながら手を挙げる人はいなかった。


「異論がないようなので、ウチがリーダーになることを了承したとして話を進めていくよ。あ、臨機応変で思い出した。パーティーの編成だけど、これも状況に応じて変更していくつもりだよ。それなりに長期間の旅になるはずだから、ストレスが溜まると辛いからね。皆で楽しくという訳にはいかないかもしれないけど、余り堅苦しくならないようにやっていくつもりです」


 さて、前置きが長くなったけれど、パーティー分けを始めよう。

 今回は戦闘が得意なプレイヤーと不得手なプレイヤーとを分けるつもりでいる。口の悪い言い方をするなら、足手まといは一か所にまとめておいた方が戦いやすいということだ。

 ただし、すでにパーティーができているところはそのままいってもらう。その方が連携を取りやすく、結果的にこちらの有利になり易いと思われるからだ。


 そういえば、大規模イベント前に噂されていたギルド単位でのイベントとか、ギルドで参加するとボーナスがあるっていう話はどうなったんだろう?あの時はそれらしいことはなかったけれど、そのうち実装されるのかな?

 まあ、複数のパーティーで挑むレイドボスの実装の方が急務だろうけどね。


 そんなことをつらつら考えていると、パーティー分けが終わっていた。厳正なるくじ――非戦闘系のプレイヤーの話だよ。戦闘職の方は連携なんかも考えながら話し合っている――の結果、ウチと同じパーティーになったのは製薬師の女性と魔法使いの女性の二人だった。


「あぶれた形になったけど、よろしく」


 全部で五十七人だから、六人ずつパーティーを組むと、三人余ってしまったという訳だ。


「メイプルよ。こちらこそよろしく。魔法使いだけど、レベルが低いからこちらに入れさせてもらうわ」

「ジュンです。『諜報局UG』所属の製薬師です。よろしくお願いします」

「戦闘で役に立たないのはウチも同じだよ。その分ご飯は美味しいものを食べさせてあげるから期待しててね。そうだ!メイプルさん、生活魔法は使える?」

「使えるわよ」

「それじゃあ、料理するときに手伝ってもらえないかな。人数が多いから、生活魔法といってもMPの消費が尋常じゃなくてさ」


 ギルドのメンバーにも言えることなのだけど、リアルでも料理をしていたプレイヤーは調理技術関連の技能を優先的に上げる傾向にある。そのため魔法関係に弱く、MPも少ないプレイヤーが多いのだ。


「そのくらいならお安い御用よ」


 肩にかかった髪を払いながら、メイプルさんはウチの要望に二つ返事で了承してくれた。その姿が様になっていること!

 噂に聞く『お姉さま』か『女王様』のようだ。


「どうしたの?」


 おっと、無意識に見惚れてしまっていたみたい。……魅了か何かの技能が発動してない?


「何でもないよ。ちょっと、最近よく耳にする『お姉さま』とか『女王様』みたいだなって思っただけ」


 特に深い意味もなくそう答えると、突然メイプルさんは苦い顔になり、ジュンさんは苦笑し始めた。


「え?何?なにか変なこと言っちゃった?」

「いえいえ、違うんです。……えっと、本人なんですよ」


 ジュンさんが横目でチラチラとメイプルさんを見ながら言った。


「本人?」

「……そう。ものすっごく不本意ながら、皆して私のことを『女王様』だの『お姉さま』だの呼ぶのよ……」


 そう言うと、二人はメイプルさんが今回の旅に同行することになったいきさつを話してくれた。


「ゲームを開始して一週間で有名になっちゃったってことですか。それはリュカリュカちゃんよりも大変だったかもしれませんね」

「リュカリュカって『ウリ坊ちゃん』ですか?コッカトリスの孵化の動画を撮影したり、次期皇帝のアルスとかいう子を助けたり、フレンドモンスターを連れて帰ってきたりした?」


 ジュンさんの問いに頷く。それにしても並べ立てられると、本当にとんでもないことばっかりやってるよね、あの子。


「それと、ラーメン騒動もリュカリュカちゃんが発端です」

「そんな子よりも大変って……。自分がどれだけ大変な状況にあるのかよく分かったわ」


 ああっ!メイプルさんが遠い目をしてる!

 おっと、そうだ、この事は言っておかないと。


「二人とも、大規模イベントの時には南門を守ってくれてありがとうございました」

「え?」

「あの時ウチは南門の広場にいたから。大丈夫だろうとは思っていたけど『闇ギルド』がちょっかいをだしてきていたから、心配していたんですよ」


 メイプルさんが有名になってしまう原因となったことだからこそ、ちゃんと伝えないといけない。あなたの頑張りに感謝している人間がいるということを。


「そっか……。うん、ありがと。ちょっと元気が出たわ」


 そんな思いが伝わったのか、メイプルさんは少し恥ずかしげに微笑んでくれた。二人とも上手くやっていけそうだし、これからの旅が楽しみになってきたよ。


旅立った、のだろうか?

まあ、初対面同士だし、お互いの人柄を知るのは大事ですよね……。

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