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ルジュさんの優美で華麗なメイド生活

作者: やー

 この話はルジュさんがメイドとして働き出す話です。神剣の舞手に登場するキャラですが、昔過ぎてメインキャラどころかサブキャラも殆ど出ませんのでご了承下さい。

 ルジュ・レッドールブこと、あたしは生まれて直に父親と言う存在を失い、父と言うのがどう言うものなのか知らず育った。世間で言うところの? 父親の重要性とか言うのは正直よく分からなかった。言える事はただ一つ、母さんは女手一つでそれこそ身を粉にする勢いで働いて働いて、兎に角働いて娘を育てた。

 苦労はさせぬと言う母の思いを受けて育てられた娘はそれはそれは元気に育ちましたよ、ええ育ちましたとも。実際に育てられた当人であるこのあたしが言うのだから当然だ。

 そんな必死に頑張る母さんを見て来たあたしが高卒で働こうと思うのに、なんの不思議があろうか。いやない、必死に娘を育てた母さんにはそれ相応の報酬があって当然なのだ。あの人は、幸せになるべき人。あたしはそれを胸に思って高校卒業を前に必死こいて就職活動して、漸く見つけた仕事。

 そう、何を隠そうその仕事こそがメイドのお仕事だった。びっくらしたよ、だってメイドの募集だよメイド。何せ夢のメイドさん、公爵館勤めの楽しい楽しいメイドさん。なんでメイド募集なのか、って言えばそもそもこの国、あたしの故郷であるイヴァーライル王国領デルレオン公国について語ろう。

 デルレオン公国とは一言で言って、本国であるイヴァーライルを守る最後の砦にして懐刀、その扱いは本国イヴァーライルにも劣らず、寧ろ準本国と言っても過言ではない扱いを受けていると言ったって過言ではないのだ。

 うちは元をただせば、それなりに裕福と言うか格ある家だったようで一般の家と変わらないほどに小さくなったとは言ったがそれでも公爵館付近に居を構える家だ。そう、そんな格ある王国に、否公国に住む一般人がこのあたしことルジュさんである。

 さてはて、しかしそんなデルレオンにも今現在、と言うより少し前までは致命的な大問題を抱えていた。何か、と言うと聞いて驚け。なんと公国の主たる公爵さまが居ないのだ。そう、いない。何処に行ったのかと問われれば不明と言うしかない、何せ100年近くも昔に駆け落ちしたのだ。当時唯一と言ってもいい世継ぎが、だ。

 理由は現在も不明、と言うか一般人にそんな理由が分かるわけないだろと言う。分かるのは、このイヴァーライルと言う王国とデルレオンという公国のシステムに抗った結果だと言う。なんだそれ。

 ともかく、少なくともあたしが小学校に通っている時にはそんな公爵様の居ない国だったのだ。主の無い国とか正直寂しいがいないものはいない、弁えるべきである。しかし、突然なんと駆け落ちした公爵さまが戻って来たのだ。

 正確には、その子孫ではあるものの一度居なくなった公爵様の帰還に本国は大変喜んだと言う。これはまあ、あたしが大人になって知ったことだが現在イヴァーライルという国はイヴァーライル本国と4つの公国で構成されている国だ。しかし、本来広い広いイヴァーライルと言う国を治めるのに各公国にその主である公爵を置いて王様を一番にして皆で国を盛りたてよう、と言うのが当初の歩みだったとのこと。

 しかし、長い長い歴史の中で相続がうまくいかず、ある国では男色家の公爵が性病貰って独身であっさり、ある国では好色家の公爵が世継ぎ生みすぎて一族殺し合いで全滅、ある国では至って普通に娶った人が子供産めずに世継ぎが居ないままぽっくりと。

 といった感じで1世紀挟むものの、最も長く続いた公爵家がなんとデルレオンなのだ。その公爵もいなくなり、国の守りも統治も全部王様が切り盛りすると言う状態になり、そこに戻ってきたのが我らがデルレオン公国の正統後継者様なのだ。本国は過去の一族の裏切りよりも、汚名を被ってでも戻って来てくれた今の人々を受け入れたという話である。

 さて脱線した話を現代、今メイドの募集に目を輝かせて面接に向かったあたしに戻る。つまり公爵の帰還、持ち直した公国。そして必要になって来た人手、よってメイドの募集が出たのである。メイドを選んだ理由は、モチ就職案内に書き込まれた幾つかの詳細。それを読み解き、そして先生からも取った言質。それ即ち。


「実質、公務員扱い……!」


 分かるだろうか? 母子家庭のあたしが、宮廷勤めの公務員である。そう、公務員だよ公務員! 公爵館と言う国の重鎮が住むお城みたいな所で寝泊まりして働きそのうえ扱いは公務員、しかもほぼ正社員待遇なのだ! 高卒だよ? 社会保険年金手当が全部付くんだよ? 最高、公務員扱いのメイド最高!

 そんな感じにあたしはヤル気マックスな所を見せつけて面接を終えて帰路につくのだった。


「うかるといいな」


 いやいや、弱気になるなあたし! あれだけ面接の練習をし、まさに貞淑な才女を演じ切ったのだ。受かる受かる! ちなみにあたしの他にも十数人面接に来てい居た。理由とか聞いてみると。


「お城勤めっていいよね~」

「やっぱ安定の公務員でしょ。ま、今景気はよさげだけど落ち気味だし10年20年考えるとさ」


 と言う意見がちらほら。現実見てる派にミーハー派と言う感じだ。ちなみにあたしのクラスメイト達は。


「メイドってあれでしょ~ふりふりみたいなエプロン着て、おかえりなさいませご主人様って媚振りまくって、モエモエキュンとかやる」

「随分、偏見多いなオイ。つかそれオタクの妄想するメイドじゃねえか」

「でもさ、メイドって確か真夜中まで見回りとかあるんでしょ? それで朝早く起きて掃除にお洗濯とかさ、大変じゃない?」

「でさでさ、真夜中見回っていたらお城の兵士とかに連れてかれて『おい、俺にもご奉仕してくれよ』とかヤラれちゃってさ」

「妄想もいい加減にしとけよおまえら?」


 みたいなもん。どいつもこいつもメイド誤解しすぎだろ。ま、あたしも就職案内読んだだけでどんなことするのかよく分かってないけどさ。


「ただいまー母さん、今日面接に行ってきたよ!」

「そう。受かりそう?」

「うん、きっと受かるよ! そしたらあたし、花の公務員だよ!? どうする?」

「どうって……そうだね、娘の世話から解放されるくらいかね」

「おうとも、これからはガンガン楽させていくから期待しててよ、母さん?」


 あたしは自分を奮い立たせるように大見得を切った。そして運命の日、学校からなんと合格通知をゲット。これであたしは卒業後、公爵館勤めのメイドとして働いて行くのだ。ちなみに他に受けた子の半分は落ちていたが、半分は受かっていた。

 そんなこんなで、この春目出度く新社会人として公務員のメイドとして第一歩を踏み出した訳で。そんなあたしの初めてのお仕事は?


「ルジュさん、貴方は台所に配属となります。まずは皿洗いからですね、貴方の世話役として二年先輩のマリンさんがつきます」

「はい、メイド長!」


 背筋を伸ばして元気よく返事、これ大事。そしてそんなメイド長の紹介であたしがお世話役となる人……あ、いや子がやって来る。青い髪の三つ編みを左肩に流した少女だ。意外と昔から体が丈夫で背丈が167cmと高いあたしとは逆に身長155cmくらいの女の子。で、でも先輩言うしきっと年上。


「あなたは確か高卒で18でしたね? 彼女は14歳から此処でメイドをしていて今年で二年目です」

「はいルジュ、よろしくお願いします」

「よろしくおねがいします、マリン先輩!」


 年下でした。と言う事で彼女に皿洗い、と言うより此処での仕事の流れを教えてもらうことになったのだが。


「いいですか、ルジュ。まず皿洗いとはお皿を持って、濡れぶきんでクルクルと拭く作業です」

「はい!」


 何かおかしかった気がするが気にしない。基本が大事だ!


「手を滑らせて割ってはいけません、いいですね?」

「はい!」


 いやいや、たかが皿洗いで手を滑らせるって無いだろそれ。面白い先輩だなぁ。


「ではまずやってみせますね……あ」


 つるっ、パリン。擬音的にそんな流れが目の前で起きた。布巾を手にしながら汚れた皿を持って磨こうと皿を持ったと同時に滑らせて落として割った、と言う感じだ。何かおかしい気がしてあたしは背後で見ていたメイド長を見る。すると溜息が帰って来て。


「これが失敗例です、ルジュ」

「は、はい」


 ああ、失敗の実演ね実演。そういうとマリン先輩は皿洗いの実演を再開する。そして磨いた皿を見せて。


「こうして割らず、きれいに磨くのが皿洗いという仕事です」

「あの、汚れが残ってますが」


 うん、皿の隅っこに大きな油汚れが残っていたがそれを見るとマリン先輩は。


「あ」


 と間の抜けた声を出してごしごしと磨き始め。


「と、取れない……」

「あ、ああ、こういう時は洗剤っすよ先輩。ちょっと貸してください」


 もう見るに見かねて、と言うか仕事にならないのであたしが皿洗いを請け負い、溜まった皿を全て磨き終える。それをマリンは目をキラキラしながら見て。


「メイド長みたいです、綺麗です」

「そ、そりゃあどうも」

「ふむ、見事な手並みですね。ルジュさん」


 と、メイド長までもがあたしの仕事ぶりを見て褒めてくれ。


「ですが、少々雑ですね。水切りが悪い、洗剤が付いている。汚れを落とせばそれで終わり、と言うスタンスは感心できません」

「す、すみません」


 ぐぐぐ、こう言う仕事は昔からやってたから自信大有りだったのに……! だが挫けるな、次こそは!


「それと貴方は元気と喧騒を履き違えています。元気の良さを示すのもよいですが、少々控え目にする事を覚えなさい。あれではもはや五月蠅いという次元です。それでは淑女とは呼べません」

「は、はい。すみません」


 だ、駄目だし連打ですか。て、手加減を-、今日初めてのメイドなんですよー。


「全く、貴方はメイドなのです。メイドの格は主人の格、如何に主人が偉大であろうと仕える者が粗野であればその分主人の格を地に落とすのですよ? その自覚を持ちなさい、例え端の仕事であろうとも、貴方はこの公爵館に仕えるメイドなのです。それを弁えなさい、宜しいですね?」

「は、い」


 ぼろくそである、ボコボコである。泣きそうだ、と思っているとマリンがそっと肩を叩いて。


「次ぎ、頑張る」

「あ、はい。どもです先輩」

「こほん。とまあ」


 と、メイド長は背中をこちらへ向けると。


「最近の若い子は変な夢を持って此処に来るものが多いので、少々。その、きつい事を言った、かもしれませんが……あまり気を落とさず、淑女として振る舞う事を身につけなさい。頑張るのですよ」

「メイド、長……は、はい!」

「元気があってよろしい、では今後からは淑女の何たるかを徹底的に叩き込みますからそのつもりで」


 そう言ってメイド長は次の仕事ですと言ってあたし達の案内を始める。とその途中で。


「そうそう、ルジュさん。貴方確か高校卒業しての就職ですよね? 詳しい話を聞いても?」

「は、はい。えっと、デルレオン公立第1魔法高等学校です。成績はまあ、普通ですね」

「つまり良くは無い、かと言って落ちこぼれでもないと言う事ですね? よく第一高校に入れましたね」


 ば、バッサリ行くなぁ。まあでも事実だ、うちはめっちゃ貧乏と言うよりチョイ貧乏と言う感じ。金は足りてないが生活苦でもないと言う所だ。尤も、その生活状況を作ったのは他の誰でもない、母さんだ。親が一人いなくても娘にひもじい思いはさせまいと夫の残したコネを使い回して必死にチョイ貧乏、と言うレベルに抑えてた。

 いやほんとう、うちの母親には頭が下がる。


「え、ええ。うちは没落と言っても一応貴族の家で、父がすぐ死んでもそういうコネは残っていたので、母さんがそれを利用して良い仕事を見つけてって感じで。おかげで生活は裕福ではありませんでしたが学校を選ぶってほどでも無くてですね」

「その上で、第一高等学校。並大抵の努力ではないでしょう」


 メイド長は小さく素晴らしいと漏らす。いや、まあ、コネはあったし贅沢は出来なかったが、好きな学校に行けないって訳でもなかった。まあ、あたしからすれば真面目に勉強すりゃ学校なんてどこでも行けるだろって感じだけど。特にあたしは良いとこ出て働いて稼いでーってのもあったし。でも、何が知りたいんだ、メイド長。


「では、十分な一般教養は受けているのですね?」

「はい。まあ、自信はありませんが」

「なるほど。そこで貴方に一つ頼みがあります」


 メイド長はある部屋の前で立ち止まる。そしてあたしとマリンに振り向くと。


「実を申しますとマリンは孤児院の出でして、一般教養を受けた事が無いのです」

「はあ……え、ええ!?」


 思わず先輩を見る。ぽやーとしてるこの可憐な少女は元孤児だと言うのだ。


「なので彼女は文字が書けません。読むことすら、まともに出来ないというありさまです。そこでルジュさん、貴方です」

「は、はい!」


 指をさされ、ビンビンするいやな予感が。


「貴方の学歴を見込み、彼女に一般教養を教えて貰えませんか?」

「……へ? いっぱん、きょうよう?」


 マリン先輩を見て、お互いに視線を交わし合って。


「む、無理ですよそんな!? あたし、家庭教師なんて」

「別に彼女を世間に出せる淑女に育てろ、とまでは言いません。しかし文字の読み書きやこの国の歴史……そういったものを教えてあげられませんか? 私も出来れば教えたいのですが、何分面倒を見るべきメイドが貴方を含めごまんといる身でして、ままならないのです。一応ルジュさんとマリンは同じ部屋となっていますので」

「え、先輩と同じ部屋ですか!?」

「はい。それとルジュさん、驚くなとは言いませんが少し静かに。本日は公爵様へのお客様もお見えになっているのですよ?」


 ぎろりと睨まれて思わず口元を押さえこんでもう一度マリン先輩を見た。ぽやーとした表情でもう一度あたしと視線を交わし合う。


「引き受けて貰えますか?」

「で、でも、あたしには、その」

「嫌ならかまいませんが……マリンは先ほど申した通り文字も多くは読めませんし時間も読めず、頭は悪くは無いのにモノをしらな過ぎる所があります。どっち道、暫く貴方と組む事になっていますから彼女の付き人紛いの仕事をするのは確定ですよ?」

「あの、それ拒否権無くないですか? と言うか誰ですかこのコンビ組んだのは」

「拒否権については黙します。どうしても嫌なら一ヵ月後に新人と組む人を再編するので我慢してください。組んだのは副メイド長ですよ、彼女いわく蒼には赤だと言う事で」


 嫌な理由! しかしそうか、この子あれか世間知らずか……うーん、ああもう!


「で、どうします? 受けますか、受けませんか?」

「う、受けます、教育係、お受けします……」

「ありがとうございます、ルジュさん。では早速ですが次の仕事です」


 こんな長い前置きを必要とするんですか、次の仕事。一体何の仕事だろう、絶対嫌な予感しかしないけど。

 そう言ってようやく扉を開けてその部屋に入る。その部屋物置となっていて。


「買出しです。貴方達には行きつけの業者の元へ行って幾つか注文を行ってきてもらいます。メモはこちらです。あと、念の為地図を」

「あの、メイド長。何故あたしに地図とメモを渡されるのか理由を聞いても?」

「マリンでは地図とメモが読めないので。多分、いい加減、その、土地勘はあると思うので、行けるとは思いますが」


 メイド長は自信なさげにですよね、とマリンに視線を向ける。マリンはあたしが受け取った地図を見て眉を顰めて一言。


「え、っと」


 いやいや、この公爵館周辺の地図だから! あたしだって碌に近づかないけど知ってんだけど!? マリンは地図と格闘してあたしに押し返すと。


「大丈夫、場所なら覚えてる」


 地図は読めないのに場所、と言うか行き方は分かるのか。ああ、あれか。何処を目印にってやつだろう。あそこを右にー暫く真っすぐーであのお店を左でーって言う感じに。まいっか、あたしは更にメモを見て買うものをチェック。うん、これ買い物じゃなくて館の備品注文だ。インクにコーヒー豆に紅茶の茶葉、そう言ったものだ。

 なるほど、メイドはこう言う雑務も請け負うのか。と、そこに一緒にメモを覗き込むマリン。コメントはと言うと。


「コー、ヒ?」


 OK、この人は手強そうだ。やれやれ……。


「それでは、お願いしますね。戻って来たら追って次の仕事を伝えます」

「はい、メイド長」



 そんな感じで初めてのお使いだが。


「ルジュ、これなんて書いてあるんですか?」

「コーヒー豆と紅茶の茶葉、後インクに台所用の洗剤」

「あ。確かに切れかけてた」


 このミスった時に漏らすあ、ってのは癖かこいつ。と言うかそう言うのはきっちり見てるのか。


「じゃあ、あのお店とあのお店か。大丈夫だよルジュ、私が教えて上げるね。えっと……」


 と意気揚々と前に出るマリン先輩はきょろきょろと周囲を見渡して唸って一言。


「行き過ぎちゃった、戻ろう」

「あ、大丈夫。このあたりなら庭みたいなもんだから、どこの店かは分かったから行こう先輩」


 といってあたしはメモと地図片手にひょいひょいと歩いていく。


「本当に? 同じもの取り扱ってても、お店が違うと駄目なんだよ」

「このお店なら知ってるし、地図もある。平気だよ」

「その細かい絵が何だか分かるの、ルジュ」


 先輩は目を輝かせた。おいおい、この程度期待の大型新人とか思われてんのか、あたし。


「うん、まあね」

「どう読むの?」

「ああ、えっとね」


 と、道中地図の見方指導となった。歩きながらなので伝え辛いが、意外と要領は良いらしい。だが問題が一個。


「ねえ、ルジュ。ルジュは何処を基準に読んでるの?」


 と地図をくるくる回している。もしかしてこの子。


「マリン先輩、もしかして東西南北が分からない?」

「とーざいなんぼく? 魔法か何かの呪文?」

「東西南北と唱えりゃどんな魔法が出来るって言うんだ……良い? 上が北、下が南、右が東、左が西だよ。ほら、この地図の上の端っこに文字と十字の絵があるだろ?」

「うん」

「此処を見て、十字の上にマークがあるだろう? ああこら回すな回すな、ちゃんと固定する、でこのマークが北、此処を上に合わせるの」


 と教えるとマリンは目を丸くし、周囲の建物を見て、道路を見て、アスファルトを見て、地図を見て道をなぞる。やがて公爵館から指をなぞって進ませ、やがてその指は目的地であるお店の元へ。


「嘘」


 震える声でそんな声を呟く。やがてマリンは。


「読める、読めるよっ! この絵が何なのか分かった!」


 ぴょんぴょんととび跳ねて喜ぶ先輩メイドさん。でもそっか、この子って今16だっけ……なら、全然当然じゃねえ。こんな事で一々オーバーリアクションする16っているか普通。と呆れていると行き成り先輩から抱きつかれて。


「ありがとうルジュ! 私、やっと読めたよっ!」

「わあああ!? だ、抱きつくなって鬱陶しい! んなこといいからさっさと仕事終わらせるよ、この後沢山残ってるんだから!」


 そう言ってあたしは心ぴょんぴょんと言う感じに飛び跳ねる先輩を連れて街の中を歩いていく。



 後に、思う。これがまさか、何時までも何時までも、ずっと続く間柄になるなんて。当時のあたしには、そんな未来を知るすべなんて無かった。

 以上、多分中編か後編に続きます。

 確り者ではきはき喋る元気な赤髪メイドのルジュと物静かでぽけーとしてドジっ子だけど勘は良い蒼髪メイドのマリンコンビ誕生のお話です。描いてて思ったのは『おかしい、マリンがこんなに可愛いなんてありえない』です。

 おっかしーな、単なるだんまりメイドじゃ面白くないからドジっこ属性くっ付けたのに何でこんな可愛く見えるんだこいつ。きっと歳のせいだ、本編のマリン54歳だしきっと若いと言うか幼いからだ、ウン。

 一応長期連載の予定はありませんし、と言うかした場合、エンディングは絶望しか無いのですが。詳しい話は神剣の舞手に出て来るイヴァーライル関連の設定集めると分かりますよ。

 そんじゃ、いつか。

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