終わってから、始まったもの-キラ-
本編後のキラとデスター
「終わったんだ」
はあ、 と、 息を吐いて空を見上げた。
夜空には星が瞬いている。
ぱちりと音がして炎に視線を戻すと、 激動だったとさえ思うあの日々を思い出した。
「……さ、 次は何処に行こうかなー」
「元気だな、 お前」
「外に出たのって初めてだから、 楽しいんだよ」
ビィとの戦いが終わって、 一ヶ月程が経過したろうか。
基本はオレ一人。
時々現れるデスターが居る時は、 二人で旅を続けていた。
今日はデスターが出てきている日。
てくてくと二人で街道を歩いていた。
草原の真ん中を歩いて行くと、 次第に見えた分かれ道。
間に棒が立ててあって、 左右に付いた矢印と行き先。
「スティアルとミチュアかあ」
「……港か、 工芸の町かだな」
「じゃあミチュアかなー。 何かあるかな?」
「土産物か?」
「いや、 仕事」
旅先でしたことない仕事がしたい、 と言うのが、 密やかな野望だったりした。
アジェルと旅を始めた時はそういう約束だった筈なのだが、 なんだかんだと街による機会も無く。
気がつけば、 ビィとの戦いまで一直線だった。
本当に、 寄り道らしい寄り道なんて一切していない。
ザラトの次はもうディフィアだったのだ。
だから、 今度こそやりたいと思ってのことだったんだけれど。
そんなオレの考えなど知る由も無いデスターは、 オレの方をじっと見たかと思うと、 かくりと首をかしげた。
「……なんで仕事?」
「やってみたいんだよ。 イルでした事無いようなこと」
楽しみにしている分、 声が若干高くなる。
わくわくしてるんだなぁなんて、 他人事の様に思ったりするオレに対し。
「……お前、 何が出来るんだよ」
極めて冷静に尋ねられた。
問われて、 ふと、 思う。
そういえば、 仕事らしい仕事をしたことは無い。
「え?」
「……」
「え、 と。 家事と剣術と、 魔術」
「……で、 どう仕事に活かすんだ?」
「活かせる場面があるかも知れないだろー。 行って見なきゃわかんないよ」
「まあそうだけど」
そんな訳で、 旅は続く。
現状だと、 正しくは観光かも知れないけれど。
世界はビィからどれだけのダメージを受けたのか分からないけれど。
新しい、 知らないものを吸収するにはいいと思う。
戦いが終わって。
オレの旅は、 新たな始まりを告げた。




