傍観者
リアクトとライアのお話。
彼女等の出会い。
シャールが魂を連れてくる。
ほわりとしたあたたかな光。
その魂の為に本を与える。
この本はどんな物語で埋められていくのか。
そして、 個々なりの幸せな終わりで締めくくられる様、 願いながら見送る。
そういうサイクルで、 私の仕事は回っていく。
出会ったのは、 そんな何でも無い仕事の一瞬だった。
「……あ」
その魂を見た瞬間、 どうしようもなく惹かれたわ。
なんというか、 そう。 在り方そのものに惹かれたの。
契約するならこの魂の子がいい。 そう思った。
本を与え、 名前が刻まれる。
幾度生まれ変わっても、 そんな風には感じなかった筈なのに。
なんでかな?
‘ライア・エリティア’
その名を持った魂に惹かれたの。
そして、 時は巡った。
「初めまして」
貴女達の世界で見えるのは初めて。
嬉しくて堪らなかったし、 柄にも無く緊張していた。
それくらい、 私はずっと待っていた。
「貴女、 誰?」
私を見る貴女は、 凄く不安そうだった。
もしかしたら、 初見で私がどういうものか分かったのかな。
「私はリアクト」
手を差し出す。
「……リアクト?」
貴女と契約する日を。
貴女と出会う日を。
ずっと、 楽しみにしていたの。
「ライア。 私、 貴女と出会いたかったの」
私達が契約をしたのは、 ライアが十六歳の頃だった。
その頃からして、 ライアは力を求めない人だったわ。
元々大きな力を持っていたから、 危険性もきちんと分かっていたのね。
穏やかさを好み、 平和を求めながら、 でも戦いも必要な事だと知っていた。
変な話、 平和を保つなら戦い続けなきゃいけないと分かっていたみたい。
だから、 己を犠牲にする事で平和を保とうとした。
人一人が背負うには、 しかも十六の女の子が背負うには余りに過ぎた荷物だと思うけど。
一人で背負い込む為に、 貴女は私達と契約をし力を得た。
最終的には、 デスター以外の全ての精霊達と契約してしまった。
それだけ大きな力を得、 それだけ大きな荷物を背負えてしまった。
それに。 ……貴女の犠牲を周りも要求したし、 創造主すらも例外ではなかったしね。
時は流れ、 貴女はある戦いへ身を投じる事になる。
貴女の人生最後の戦い。
役割は、 そう。
狂った世界を正す生け贄。
いつからそうだったのか分からないけど、 貴女の最期に至る筋書きは、 間違いなく創造主(神)のシナリオ通り。
決定された創造主の物語に、 私が逆らえる訳がなかった。
「英雄として死ぬ運命? ……何それ」
ぽつり、 と漏れた音は私の図書館に消えていく。
自分の声なのに、 別人みたい。
「あんな最期……あんまりだ」
抱き締めた本は、 貴女の時間。
私、 多分 初めて泣いた。
悲しかった。
どんな生き物の最期よりも辛かった。
静かに泣いて、 気が済んだら涙を拭いた。
世界の歴史は、 いつだって誰かの死を持って物語を終えている。
其処からまた、 新しい物語が始まるんだから。
今回だって、 それだけの話。
だけど……。
「ライアを殺したのは‘何’?」
最期の瞬間は見ていたけど、 再び本を開こうとすると拒否される。
「その時じゃ無いってこと……?」
まるで、 そうだと言わんばかりにほんのりと光る。
ああ、 ならば貴女の死から始まった新たな物語で語られるのでしょう。
「それなら、 私は見守るだけだね……」
悔しいけれど、 私はそういう‘もの’だから。
さあ、 本を開いて。
次に現れるのは、 一体 だれ?




