表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/62

始まりと終わり

 全ての物事には「始まりと終わり」がある。


 終わらなくては始まらないし、 始まらなくては終わらない。


 今から来る終わりから始まる何かを 私は待っている。


 ……待つのはおかしいかな。


 始めて貰う日が来るのを 待っている。



 その為に、 今 終わりが来るのだから。














 雨が降っていた。

 暗雲が立ち込め、 雷が鳴り響き。

 全身雨でずぶ濡れになりながら、 私は貴方に向き合いました。


 世界に嫌われてしまった貴方は、 凄く悲しい目をしていたわね。

 世界は、 とてもとても綺麗なのに。

 それを知らずに、 辛い面ばかりをずっとずっと見ている。


 助けたい。

 貴方の世界は、 ほんとはとても小さい事を教えてあげたい。



 あぁ。 それなのに。


    ――――それなのに。








「ライア様!!」


 頭がぼんやりする中でも、 ちゃんと聞こえた。

 私が大切にしている子達の一人。

 実の子供ではないけれど、 とっても大切。


「……アジェルちゃん」

「しっかりしてください……!」

「……いいの、 …………いいの」


 そう、 これでいい。

 私では力不足だっただけだから。

 こうなると、 知っていたのだから。


「良くないです!どうして、 彼等は助けてくれないのですか……。 どうして……っ」


 雨が降る中、 暖かな涙が降ってくる。

 泣かないで欲しい。 ……お願い。


「アジェルちゃん。 お願いが、 あります」


 もうすぐ、 動けなくなる。

 お願い。

 もう少しだけ、 無理を言わせて。

 もう少しでいい。


 私のお願いをアジェルちゃんは泣きながら聞いてくれた。

 いくつかしたお願いは、 この子ならちゃんと、 守ってくれるから。


 あと、 一つだけ。

 いえるかな……。


「あと、 最後に」

「はい」

「……十年後、 キラちゃんに会いに行ってくれる……?一緒に、 ここに来てほしい」

「…………」

「頼んだわね……?」


 ……これで、 全部。


 雨に流れる自分の血が、 もうかすんで見えない。

 頷いてくれたのが、 見えた……気がした。

 最期なのに、 抱きしめてあげられなくてごめんね……?


 私の子供達と、 今まで支えてくれた沢山に。


「…………ありがと……」



















 雨が、 血を流していく。

 とまらない。 とまらない。

 冷たくなって。

 どんどん、 冷たくなって。


「……ライア様ぁあああああ!!!!」


 雷鳴が轟く中。

 私が一人、 絶叫していた。

















 雨が上がると、 其処が如何に悲惨な戦場かわかる。

 辺り一面には何も、 なくなっていた。

 敵はそんなに居なかったはずなのに。


 ……それほど強敵だったと言う事なの?


 唇を噛むと、 鉄の味がした。

 悔しい。 ……悔しい。

 そう思うと、 またぼろぼろと涙が溢れた。


「…………っ」


 亡骸の真っ白な手に縋っても、 もう、 撫でては貰えない。

 どうして、 ライア様が亡くなるのか。

 私には理解出来なかった。


「アジェル」


 暫く泣いていたら、 私を呼ぶ声がして振り返る。


「……お前は……」


 金色の髪の少年は、 見たことがあった。

 確か……。

 ライア様と契約していた、 精霊だ。


「………………お前……、 なぜ今頃」

契約者マスターとの約束です」

「約束?」

「そう。 ‘彼’との戦い前に契約を破棄し、 終わりを迎えた時に来るようにと」


 それで、 ……現れなかったと言う訳か。

 でも、 今居るじゃない。


「召喚してないのに、 今、 此処に居るじゃない……」

「……えぇ」

「じゃあ!破棄されても、 出てこれたでしょう!?」

「それは……」

「何よ!!!」

「決められた事ですから」

「ライア様が死ぬのが決められた事?……何よそれ!」

「……正確には、 契約者の交代がですけれど」

「………………何よ」


 訳が分からなかった。

 でもどれだけ叫んであたっても、 彼は私が落ち着くまでずっと相手をしてくれた。

 その間にゆっくりを説明をしてくれた。


「……大丈夫ですか?」

「……えぇ」

「……それで、 どうしますか?」


 ライア様は、 彼に言ったそうだ。

 自分の次に彼らと契約する者に私を指名したと。

 だから、 彼はライア様が亡くなった後に現れたと。

 ただし、 彼や彼と同等の者と契約を交わすにはそれなりに力が必要となる。

 ライア様は沢山の精霊を契約をしていたけれど。

 今の私に同等の力はない。


「……今の私の力だと、 どれだけの者と契約できるの」

「全員は無理ですよ」

「わかってる」

「今の貴女なら、 一人、 でしょうね」

「一人……。 ……それなら、 貴方が良いわ。 最初に会ったから」

「僕と契約すると、 他の誰とも契約できませんけど、 良いですか?」

「それだけ魔力を喰うって事でしょう。 良いわよ。 上等じゃない」

「それでは、 契約を交わします。 お手を」


 差し出した手は、 血と傷で汚れていた。

 彼はそんな私の手を自分の手で包んで、 目を閉じる。

 ぱっと手が光ると、 オレンジ色の透明で綺麗な石が現れた。


「これ……何?」

「僕の核を具現化したものです」

「核……?」

「えぇ。 それを通して、 魔力を頂きます」


 説明しながら、 私の額に指先が触れる。

 ついでその、 核とやらが弾けて消えた。


「……消えちゃった……」

「貴女の中にはもう存在しています。 大丈夫」

「……ふぅん」

「さ、 では契約のスペルを。 ……自然と言葉が浮かんでくると思うので、 そのまま言ってください」


 目を閉じる。

 段々とクリアになる頭の中に、 ぼんやりとした言葉が浮かんできて。

 それは徐々に、 文章となっていく。


「全ての命の誕生を司る者よ。 私、 アジェル・ディーティと契りを交わし、 共に道を歩め」


 光りが、 どんどん溢れていく。

 真っ白な光り。

 眩しいほどの光の中で、 彼は言った。




「……承知致しました。 貴女を我が契約者と認めます」


発案は、1997年。子供の頃に発案し書き出して、大人になってから完結させました。

物語自体は自サイトにて2009年に完結しております。

典型的ファンタジーを目指して右往左往している物語で、私自身も未熟ではございますがお付き合い頂けましたら幸いです。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
閲覧有り難うございました。
ランキングに参加しております。宜しければ一押しお願い致します。

小説家になろう 勝手にランキング
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ