プロローグ 始まり
毎週日曜日に更新できたらいいなあと目標を立ててます。
誹謗中傷は激しく心がブレイクしますのでご遠慮願います。
お気に召していただけたら幸いです。
なお、主人公≠チートです。あしからず。
それはさしずめ、草木も眠る丑三つ時と、東の国では言うらしい時間帯。
『草木も眠って』いなければならない時間帯のハズだが、俺は身体が冷えるのも構わずに全力疾走していた。
「――くそ」
軽く舌打ちをし、つく悪態にも力が入らない。ついて来るのはせいぜい四、五人。いずれも大小それぞれの武器を手にしている。時折何かを叫んでいるようだが、『待て』だの『貴様』だのの繰り返し。
つまり、は。
「諦めが、悪いんだからよ」
追われているのだ。それも、それなりの深手を負いながら。
■ ■ ■
腹部に二カ所、太股に一カ所。 幸い脚の方はそれ程深くもないが、腹部の方からはどんどんと流血の量が増していく。
(畜生……足元がふらついてきやがった)
普段ならそんな事はないのに、息も既にあがってきている。ぜえという音が混じるくらいだ。
このまま血が止まらなければ、いずれは――
「――いたぞ! こっちだ!!」
「……!」
真っすぐ突っ切った角の右側に、どうやら追っ手の仲間がいたようだ。
「……最悪だな」
五人までならどうにか撒けると思ってはいたが、今度は倍以上の人数が追加されるだろう。
そうなれば、もう勝機はない。
比較的狭い道に逃げ込む。大人の男なら、一人ずつしか入り込めなそうな場所だ。 一人なら、まだ相手に出来ない事もない。
「――やっと観念したか、クソガキが」
「そのクソガキに、大人数でよ……」
軽口にも喘ぎを隠しきれない。
じくりと、傷口が痛む。
「多勢に無勢って言葉知ってるか? オッサン」
「ほざけ」
ずしりと腹部に衝撃が走る。気付けば、すぐ後ろは大きな河だ。
「こちとら、散々逃げ回られて頭に来てンだよ、坊主……!」
「……ッ」
視界もぼやける。うまく焦点が合っていないらしい。
(やばい、か……)
吐血したのか、錆のような嫌な味が口の中に広がる。
ぐらぐらと頭が揺れる。感覚がするだけで、実際はそんな事はないのだが、どうやら血を流しすぎたらしい。
「どうした、ガキ? まだまだくたばるには早いぜ」
がははと声をあげて笑うオッサン達。皮肉なものだ、このまま手当てが出来ないなら、俺が必ず死ぬ事を奴らは知っている。
(どうせ同じなら……)
咄嗟に、側に落ちていた木材を掴んで、目の前のオッサンに向けて突き出す。 彼は低いうめき声をあげて数歩退いた。
「――よし」
声になっていたかどうかは、よくわからない。確認の意味も込めて小さく呟くと、後ろの河に思い切り飛び込んだ。
「な……んだ、アイツ!? 正気かッ」「……ハッ。放っておけよ、どの道あれじゃあ死なない方がおかしい」
「それも、そうか。なら、早く帰ってボスに報告するぞ」
ザワザワと、時折笑い声も混ざった声は、だんだんと遠くなっていく。飛び込んだはいいものの、俺の身体も限界だった。
痛みはしないが、そのかわり感覚もない。
――最悪の状況だった。
息が続かず、ごぼりと空気を吐いて水を飲み込んでしまう。
(畜生……汚え水、飲み込んじまった……)
そのまま流れに身を任せる。力が入らない以上、そうする他ない。
(……ああ)
瞼まで重くなり、目すら開けていられなくなる。
(死ぬのか……?)
ゆらり、ゆらりと水に流され、ぼんやりとそんな事を考えて。
それでもいいと思っていた。
きっと最期だと、思っていた。
この後、何が待ち構えているかなんて、考えもせずに。
こんな感じで更新して参りたいと思います。
よろしくお願いいたします・ω・`