コスモス
私は、宇宙の果てと呼ばれるこの星の上で、コスモスを栽培している。
なんでこんな星の名前になったかというのは簡単だ。
あと少し離れた所には、ブラックホールの事象の地平線がある。
私が住んでいるところは、そこから数億キロメートル離れているだけの、極めて近いところだ。
コスモスは、調和を意味している。
私がここで育てているのも、宇宙全体を調和させることが目的だ。
とはいうものの、ここ何カ月も誰もここを訪れていない。
前来た人たちは、私がまえと何も変わっていないということに驚いていた。
そこで驚かれても、私はここで暮らし続けているのは決まっているし、まだ数カ月しか経っていないわけだから、そこまで劇的な変化が起こるはずもない。
私がここにいる目的は、ホーキング輻射を観測することにある。
宇宙の果ては、人工的に運ばれて、加工された小惑星だ。
何があっても防ぐことができるようになっているため、私が住んでいるのは小惑星の核の部分に当たるところで、あちこちに通路が張り巡らされている。
そのため、外に出ることだってできる。
ブラックホールを眺めていると、100パーセントの黒色と言った感じだ。
なにせ、近くに転がっていた砂をブラックホールに投げてみると、みるみる間に見えなくなってしまった。
この時の観測も、しっかりと行っている。
正のエネルギー体である砂を入れた直後、負のエネルギーが放出された。
負のエネルギーは数秒で消滅したが、おそらくは、正のエネルギーがブラックホールの蒸発を促したのだろう。
ホーキング輻射は、思ったよりも観測することが多く、それは日々計器に記録されている。
確率的には、常に観測されてもおかしくないそうだが、私がしているのは、それを電波に乗せて知らないところへ報告をするだけのことだ。
私は、これからもそれを続けるだろう。
誰か知らない相手が、コスモスを受け取ってくれるまで。
調和あるこの世界が破たんしない限り。




