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小説『オンチェーンFinance』12

作者:三澤賢司
最新エピソード掲載日:2026/10/12
日本国オンチェーン金融中央統括センターの特別会議室。第11章でマスタープランが承認された後、さらなる精緻化を目指す会議の場で、天野修一はメインホログラムの中央に巨大な「天秤(シーソー)」のモデルを浮かび上がらせた。
「これまでの計算で、年間240兆円、10年累計1,320兆円という巨大な還流数字を導き出しました。……ですが、この巨額の流動性を支える心臓部、最も重要な動的コントロール弁の説明がまだ残っています」
黒輝大介、立花葵、そして財務省の神田主計局長が、天野の言葉に注目する。
「それが、『起債済み国債』と『個人向け国債』のシーソー・メカニズムです」
シーソーの片側:起債済み国債(市場向け・既存分)
すでに市場にある国債や、日銀・機関投資家が保有する国債の借換を担う。流動性が高く、国家財政と金利の「安全性のアンカー」となる。
もう片側:個人向け国債公募/信託商品
国民の預金・家計金融資産(2,400兆円)から直接資金を集め、政府系プラットフォームへつなぐ。金利上昇の果実(1%〜10%の還流)を国民へ直接届ける「利益還元エンジン」となる。
天野は白板に二本のアームを描き、その支点(フルクラム)を指し示した。
「機関投資家向けと個人向けの間で、国債の発行・保有のウェイトを動的にスライドさせる調整弁……。これこそ、国債の保有構造を機関投資家から『日本国民全体』へと置き換えるための、構造的なレバーなのです」
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