中国の「サンフランシスコ講和条約否定」は何を意図しているのか? これで台湾や満州が日本に戻ることはあるのか?
本日は当エッセイをご覧いただきありがとうございます。
今回は高市首相の「存立危機事態発言」を受けて中国が、「サンフランシスコ講和条約は無効」であることを主張し始めたことについて個人的な意見を述べていこうと思います。
筆者さんは、高市さんの発言についてはあまり肯定的ではなく、
「存立危機事態というのは一般論ではなく安全保障法制の定義を語ってしまったこと」
が問題だったとしていますよね。
安倍元首相の「台湾有事は日本有事」発言はあくまで一般論を語っただけでしたからね。
たとえ「国内の紛争」だとしてもシーレーンなどの影響で有事になることはありますからね。
高市氏は「踏み込み過ぎた」と思います。
日本は日中共同声明などで台湾を中国と一体という「承認」はしていないものの「努力」をするようには要請されています。
また、台湾との国交が日中共同声明を受けて断絶しているので、個人の心情としては僕も含めて台湾の肩を持ちたいと日本中のほとんどの方が思っていたとしても、国際法上では中国の方が親しい状況です。
これもまた複雑性を見せていると言えます。
ただ、「存立危機事態」でも「他に手段が無い場合」に限って自衛隊を動かすので、必ずしもイコールではないですから、ここら辺で逃げられるのかなと思います。
前提のお話は分かったんですけど、サンフランシスコ講和条約は中国にメリットしかないのにどうして無効と主張しているのか、そこが意味が分からないんですけど……。
僕もカバーの外のお話だったので当初は意味不明でした。
サンフランシスコ講和条約の2条(b)では
『 日本国は、台湾及び澎湖諸島に対するすべての権利、権原及び請求権を放棄する』
とありますから、中国としてはメリットとしか思えず、
ここを見て日本のネットの方々は「台湾が日本に戻ってくる!」とまで沸き立っているのだと思います。
普通そう思ってしまいますよねぇ……。
ここで注目しなくてはいけない点は、「他に何を主張したいか」です。
中国大使館のXでは、
『台湾の主権帰属など非締結国である中国の領土・主権権利に関する曖昧な内容は、「カイロ宣言」や「ポツダム宣言など国際法上の効力を有する文書に背くものであり、不法かつ無効』
ともしています。
ちなみに、カイロ宣言では
『満州、台湾、澎湖諸島が日本から中華民国に返還されること』
とされ、その後のポツダム宣言にも継承されています。
そのために、サンフランシスコ講和条約では日本は「放棄した」とあるのですが、「返還」が正しいだろう! というのが中国側の主張なのです。
ですので、中国の主張を総合すると「台湾も満州も日本に返る」という視点で見るとその可能性は全く無いということです。
なるほど、そういうことだったんですね……。
カイロやポツダム宣言からすると、台湾はやはり中国の一部なのでしょうか……。
ただ、この中国のロジックには「大穴」もあります。
まずカイロ宣言やポツダム宣言の「中国」というのは「中華民国」であるということです。
中華民国に返還されたのであれば、カイロ宣言の返還がなされても全く領有権を主張することはできません。
事実、中華人民共和国は一度も台湾を占領していませんからね。
国際法上、一度も占領していない土地を勝手に主張することは認められません。
ただ、また難しい問題は中華人民共和国は1949年に国内内戦で本土にて勝利し、1971年のアルバニア決議では「中国」のポジションを国際的に勝ち取って今の常任理事国のポジションについています。
この辺りが大変微妙なラインであり、「台湾が曖昧戦略の対象」になっている最大の要因と思われます。
◇「琉球」を持ち出しているのはなぜか?
なるほど……やはり、台湾は微妙なポジションであることには変わりないということですか……。
ただ、現実的には領有していない土地を主張することは困難そうですけどね……。
その後に中国が日本の沖縄県を「琉球である」と主張しているというのは一体どういう意図があるんでしょうか?
現実問題として「琉球」を政府として中国は国家承認はしていないわけですから、全くもってその主張は意味をなさないでしょう。
これも個人的な意見なので100%そうであると断言はできませんが、
「揺さぶり戦略」
だと思います。
沖縄が日本領でなければ「そもそも日本の存立危機事態ではない」と主張することも可能になりますし、「妥協案」として「台湾を中国領」と認めさせようとしている可能性もあります。
ただ、警戒は必要で色々なロジックで沖縄の離島を占領して来ようとすることを警戒しなくてはいけないでしょう。
日本は「沖縄県が日本なのは当たり前」として「コメント必要ない」と木原官房長官が対応されていますけど、それについては大丈夫なのでしょうか?
ある種「物足りなさ」も感じてしましますが、これ以上火種を与えないためにはある意味最善とも言えると思います。
一番あってはいけないことは「戦闘行為」、次に「沖縄の離島の占領」であり、今はかなりナイーブな状況なので下手に発言しない方が刺激しないことに繋がると思います。
中国にとっての台湾は南沙諸島や太平洋への海洋進出のために押さえておくべき必須の地域ですから、あらゆることを交渉材料に使っているのだと思います。
◇「これまで通りの見解」で何とか凌げるか?
筆者さんは中国がレアアースの輸出を止めてくるかもしれないことを最も懸念されていましたけど、それは起きるのでしょうか?
それについても色々と考えてみたのですが、日本はレアアースに関係する半導体そのものの製造力は落ちていることは疑いようは無いです。
しかし、日本企業でも東京エレクトロン㈱の半導体の微細技術、アドバンテスト㈱の半導体耐久検証装置、㈱SCREENの半導体の洗浄といった「半導体周りをサポートする分野」において高いシェアを持っています。
それらの輸出規制を「お返し」にチラつかせることが効果的に出来れば中国側も下手に動くことは出来ないと思います。
効果的に日本政府が活用してくれれば……というところですか。
「ディール」次第だと思いますけど、「これまで通りの政府見解」で何とか凌げる可能性もあると思っています。
また、アメリカでは「台湾保証実施法案」という法案に25年12月3日署名しており、
アメリカと台湾の公的な交流に関する指針を定期的に見直し、更新することを義務付けることを決めました。
アメリカとしては台湾からは半導体の依存があり台湾を見捨てはしないと思われますが、
レアアースのことがあるために中国とも事を構えたくはない状況で、
良いバランスを保ってくれる可能性はあります。
緊張している雰囲気がありますけど、何とかなりそうな感じもあるんですね。
今のところ日本政府としては中国の「過激対応」に対して「上手いこと流している」感じはあります。
ただ、中国は国連に対して近年お金をかけていますから「国連対応」で大きく動くかもしれないなと最近思っていますね。
国際的なこれまでの日本と中国を世界の国がどう評価するかということですか……。
悪いことが起きないことをとにかく願っていますね。
今回は中国は日本に対して「放棄」ではなく「返還した」という扱いにしてくれ! という主張をしていることと、揺さぶりに対して上手く流せる可能性があるということをお伝えしました。
今後もこのような政治経済や日本に直接的に関係する国際情勢について個人的な意見を述べていきますので、どうぞご覧ください。




