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第8話:王国軍、侵攻

 そして、決戦の日となった。

 当初の予想通り、俺が転生してから三日後、王国軍は戦場となる大荒野に到着した。

 万を超える大軍勢の前にして、魔王軍は五〇〇〇人程度の勢力を有している。

 数だけを見ればこちらが劣勢のように見えるが、魔族は一人ひとりの力が人間に比べて桁違いであり、倍の数程度なら戦況をひっくり返せるだけの力を持っていた。


「これはまた、なんとも絶景であるな!」


 銀色の甲冑を身に纏ったアリスディアは、声音を野太いものに変え、楽しそうにそう声を上げた。


「魔王軍、そして死四天将は予定通りに配置しております」


 その横で俺は魔王軍の配置についてを説明していく。

 とはいえ、現時点では今までとなんら変えたところはない。

 最前線にイボエルを配置し、その後方と本陣の左右に他の死四天将を配置している。

 だが、今回はそれがより大事な一戦になってくる。


「王国軍は伏兵を忍ばせております。前方だけではなく、今回は本陣左右も戦場になるでしょう」

「伏兵だと? ……この大荒野に身を隠せる場所があると思うのか?」


 今までの戦争では、王国軍も真正面から戦闘を仕掛けてきていた。

 それは大荒野に身を隠せる障害物が何一つとしてないからだ。

 そのことは王国軍も分かっており、だからこそ仕方なく真正面から戦い、そのたびに叩き伏せられてきていた。


「普通であればありません。ですが、今回は違います」

「ふむ。以前に話していた、異世界から召喚されたという勇者の力か?」

「いいえ、違います」

「ならば、誰なのだ?」


 今回の伏兵は、勇者ではなく新たに現れた英雄の力によって隠されたものだ。

 勇者が召喚されたその日に英雄の話を出すのは時系列的におかしくなってしまうが、三日が経った今であれば問題はないだろう。


「勇者が召喚されたことで、どうやら王国軍の中に英雄と呼ばれる力を持つ者が現れたようなのです」

「英雄だと?」

「はい。おそらくですが、勇者が召喚されたことに呼応して、潜在的に秘めていた力が解放されたのかと」


 なんとかそれっぽく説明してみたが、アリスディアは納得してくれるだろうか。


「勇者召喚に呼応して、か。……異世界からの召喚なのだから、我らの予測を超える事象が起きてもおかしくはないか」


 どうやらアリスディアは、俺の説明を信じてくれたようだ。

 ……いや、違うか。アリスディアはシャドウのことを心の底から信じているように見える。

 だからだろう。俺の言葉を疑うということをせず、むしろ思考が自分を納得させるために動いているように見えた。

 そんな姿を見ていると、いずれは俺が本当のシャドウではないと説明しなければならない、そんな思いに駆られてしまう。


「……どうしたのだ、シャドウ?」


 俺の不安げな表情を見られたのだろう、アリスディアはこちらを覗き込むようにして声を掛けてきた。


「あ……いえ、なんでもありません、魔王様」


 俺はすぐに笑みを浮かべながらそう答えた。


「……何かあれば必ず我に報告しろ、いいな?」

「かしこまりました」


 俺はそう答えるに留め、アリスディアもこれ以上は言及することをしなかった。

 ……これ、あとでめっちゃ問い詰められるやつだな。

 でもまあ、それもこの戦争に勝利してこそなわけで、俺がやるべきことは変わらない。


「さあ! 今日も我ら魔王軍の力を王国軍に見せつけるのだ!」

「「「「おおおおおおおおおおおおおおおおっ!!」」」」


 アリスディアが号令を発すると、大気を揺さぶるほどの返事が魔王軍から返ってくると、全軍がその場で足踏みを始める。

 ドン! ドン! 足踏みの音が響くたびに大地が揺れ、俺はその迫力に飲まれそうになる。

 味方だから見ていられるが、これを敵側から見せつけられたなら、俺は委縮してしまっていただろう。


「……ほほう? どうやら今回の王国軍は、シャドウの言った通り一味違うようだな」


 今までであれば俺が言った通り、王国軍は魔王軍の一糸乱れぬ足踏みを見せつけられて委縮していたことだろう。

 しかし、今回の王国軍は魔王軍の足踏みを睨みつけており、負けてなるものかという強い想いがこちら側にも伝わってくるようだ。


「……勇者と英雄の存在が、王国軍を屈強な軍に変化させたようですね」


 王国軍の士気低下は見られない。

 やはり今回の戦争は、油断するとこちらが足元をすくわれてしまうだろう。


「……魔王様。俺は別行動をしてもよろしいでしょうか?」


 どこの戦場も苦戦するだろうが、やはり気になるのはイボエル率いる最前線だ。

 現状はシナリオ通りに事が進んでいる。

 ならば、イボエルが勇者たちに殺されるのもシナリオ通りだといえるだろう。

 それを避けるためにも、俺はここで胡坐をかいているわけにはいかないのだ。


「……いいだろう。しかし、約束しろ」

「約束、ですか?」


 アリスディアからの許可は下りた。

 しかし、約束というのはいったい――


「どわあっ!?」


 するとアリスディアは俺の胸ぐらを掴み、顔をグイッと引き寄せた。


「絶対に生きて帰ってくるのよ、シャドウ。いいわね?」


 甲冑越しの野太い声ではなく、アリスディア自身の声音でそう告げられた。


「……もちろんだ。俺もこんなところで死ぬつもりはないよ」


 俺の答えを聞いたアリスディアは手を離す。

 衣服の乱れを整えながら、俺は紳士然とした態度で頭を下げながら口を開く。


「魔王様の参謀、シャドウ。ただいまより魔王軍を勝利へ導くため、暗躍してまいります」

「うむ。任せたぞ、シャドウ」


 こうして俺は、影魔法を使い暗躍を開始した。

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