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悪役転生〜俺は魔王様の参謀です〜  作者: 渡琉兎


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第37話:火口の主

「な、なんだこいつはああああああああっ!?」

「「フ、フレイムイール!?」」


 火口から飛び出してきたのは、長大な体を持つ火口の主、フレイムイール。

 その身には常にマグマを纏っており、ボンボンと炎を弾けさせている、難敵である魔獣の一匹だ。

 ただし、フレイムイールは本来、温厚な魔獣だ。

 マグマの中で一生を過ごすと言われている魔獣で、敵対行動さえ取らなければあちらから襲い掛かってくることもない。

 ……そう、敵対行動さえ取らなければね。


「ど、どうしてフレイムイールが出てきたの!?」

「くそがっ! てめぇ、邪魔してんじゃねえぞ!」

「お、お待ちください、勇者様! フレイムイールは敵対行動さえ取らなければ襲い掛かっては――」

『オオオオオオオオオオオオォォォォオオォォッ!!』


 フレイムイールから放たれた大咆哮に、火口付近の壁から瓦礫がこぼれ落ち、マグマに落ちて溶けていく。

 レイドや勇者たちも耳を抑えており、その大咆哮がどれだけうるさいのかが良く分かる。

 ……耳栓、用意しておいてよかったー。


「攻撃してきてるじゃねえか! 目障りだ、死四天将の前にてめぇからぶっ殺してやる!」


 怒り狂う勇者はレイドではなく、フレイムイールに剣を向けた。

 直後、勇者の殺気を敏感に感じ取ったのだろう。

 フレイムイールも勇者を敵とみなし、体皮から猛烈な炎を噴き出し始める。


「いけません、勇者様! フレイムイールは火山の主であり、魔族よりも危険だと言われている――」

「俺様に指図すんじゃねえ! それに、こいつは勇ボコに出てこなかった。ってことは、ザコってことだろうが!」


 ……勇ボコに、出てこなかった?

 いや、普通に出てきていたんだが……あぁ、そうか。

 フレイムイールが出てきたのは魔王視点だけで、勇者視点には出てこなかったんだったか。


『ヴヴヴヴオオオオォォオオォォッ!!』

「死にやがれ! ブレイヴソード!」


 あ、終わったな。

 勇者が顕現させた金色の魔力で形成された剣身がフレイムイールへ迫っていく。

 しかし、ブレイヴソードは顕現した直後から徐々に密度を少なくしていき、最終的にはチカチカと金色の光が明滅する程度になってしまう。


「……は? ど、どうなってんだ?」

『オオオオォォオオォォッ!!』

「ぐべがっ!?」


 フレイムイールがその長大な胴体を横に薙ぐと、呆けていた勇者を弾き飛ばしてしまう。

 勇者を狙った横薙ぎに巻き込まれる形で王国軍のほとんどが弾き飛んでいき、シルクだけはギリギリのタイミングで逃げ出していた。

 さすがは勇者だ。予想通り、魔王視点には本当に触れてこなかったんだな。

 だが、俺の狙いはこれだけではない。


 ――ボトン。ボトンボトン。


 フレイムイールが暴れ始めたのをきっかけに、改めて配置していた減魔鋼がマグマの中へ落下し、一瞬にして溶けていく。

 この減魔鋼だが、回収した全てを配置したわけではなく、フレイムイールが暴れた時にマグマへ落下しやすい場所を選び、三分の一くらいを俺が置いたものだ。

 これならば減魔鋼は全てではないが設置されたままなのでレイディスが罰せられることもないだろうし、マグマに落ちたことで数の確認もできない。

 そして、置いておいた減魔鋼も最終的には全てがマグマに落ちて消えてしまうので、その後はレイドに全てを任せてしまえばいい。


「……うふふ。あはははは! 力が漲ってくるわああああっ!!」


 火山の中にいるはずが、レイドの周りだけは空気が一変しており、霜が降りている。

 遠目からしか見ていなかったが、間近で見ると背筋が凍りそうになるくらいの圧力を感じるな。


「絶対領域」


 レイドがそう呟くと同時に、彼女を中心にして地面が凍りついていく。


「に、逃げろおおおお――!?」


 誰が叫んだのか、それを確認する術はない。

 それは何故か。氷に触れた者から一瞬にして氷像と化してしまったからだ。


『ヴヴヴヴオオオオォォォォ』


 そうなると、フレイムイールも視線を勇者や王国軍からレイドへ向けてしまう。

 しかし、レイドはフレイムイールと敵対する意思は一切なかった。


「ごめんなさいね。すぐにこいつらを処理するから、あなたはゆっくり休んでいてちょうだい」

『…………オオォォォォ』


 レイドの言葉を理解したのかは定かではない。

 それでもフレイムイールがおとなしくなり、言葉の通りにマグマの中へ戻っていったのは事実だ。


「……いるのでしょう、シャドウ?」


 ギクッ!


「出てこないの? それなら、いそうな場所を適当に凍らしてしまうけど、いいかしら?」

「います! ここにいます、レイド様!」


 巻き込まれて氷像になるなんて、ごめん被る!

 というわけでレイドの前に姿を見せると、彼女は苦笑しながら口を開く。


「助かったわ。ありがとう、シャドウ」


 怒鳴られても仕方がないと思っていたのだが、レイドの口からは予想外にもお礼の言葉が飛び出した。


「……いえ。これも全て、魔王様のご指示でございます」

「そう。それなら、魔王様にも感謝を伝えなければならないわね。あのお方は無事なのかしら?」

「はい。ブラック様が護衛として戻ってきておりますので」


 俺がレイドの意志を無視していないと分かったからだろうか、彼女は軽く目を閉じると、小さく息を吐きながら肩の力を抜いた。

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