第23話:シャドウの考え
王国軍の情報を得た俺は、今度こそ魔王領に戻ってきた。
減魔鋼を回収したことを気づかれている感じもなかったので、これでレイドが火山に誘い込まれたとしても問題はないだろう。
しかし、問題は第二王子のレイディスの方だ。
彼は勇ボコの勇者視点でも穏健派であり、魔王軍との共生を夢見ていた派閥だった。
しかし、勇者の活躍を示すためだろうが、勇ボコでは魔王軍を次々と倒していき、勇者最強のストーリーが大流行りしたのだ。
俺も先ほど、本物のレイディスを見るまでは分からなかったが、勇ボコに出てくるレイディスは悪い顔をしており、本当に魔王軍との共生を夢見ている王子ではなかったように思える。
そこは演出の妙なのかもしれないが、本当のレイディスが先ほどの姿なのであれば、彼を失うのは惜しいかもしれない。
「何せレイディスは、この先のストーリーで裏切り者の王族として極刑に晒されるんだもんなぁ」
レイディス・オルネティブは、魔王軍に情報を漏らしていたという罪で極刑に晒される。
王国軍、ましてや王都で暮らす民の目の前で、その首を落とされるのだ。
このシーンに関しては、結構賛否があったっけか。
とはいえ、その後に続く勇者の言葉が民の心を掴み、レイディスが悪だったのだと擦り込まれ、話はそのまま進んでいくのだ。
そして、レイディスの幼馴染みだったアルスターは、魔王軍に助けを求めてこちら側に付くものの、結局は王国軍によって人知れず殺されてしまう。
その物語は勇ボコではほとんど触れられず、ハイライトの一つとして処理されていた。
「……人間と魔族。二つの種族を一つにしようとした人たちが処罰されるストーリーの、何がいいんだか」
この世界に転生して、初めて得た感情だ。
何せ俺も勇ボコをプレイしていた当時は、勇者視点のストーリーで楽しんでいた一人なのだから。
「……たぶん、俺が減魔鋼を回収したことで処罰を受けるのは、レイディスだよな」
おそらくだが、あの一団を率いていたのはレイディスだろう。
身分を隠しているようだったが、あの場で兵士の一人に剣を向けてもほとんど文句を言われなかったんだからな。
……まあ、あれ自体が演技だったみたいだけど。
それは置いておくとして、だとすれば勇者の指示した任務を遂行できなかったわけで、間違いなく処罰されるはず。
王族だからいきなり極刑とはならないと思うけど、どうにかして助け出してあげたい。
「……いっそのこと、全てが終わったあとにこちら側へ引き込んでみるか?」
影移動を使えばある程度近くまで近づくことは可能なはず。
それに、今はまだ勇ボコのストーリーの中でも序盤だから、レイディスの思考が示されていない。
今の時点で魔族との共生を望んでいるのか、それとも別のことを考えているのか、それが分かれば接触しやすいんだが……。
「考えることが多すぎるよなぁ」
本当ならアリスディアや死四天将、魔族たちのことだけを考えていればいいんだろうけど、勇ボコのストーリーや登場人物を知っているからこそ、他のところにまで感情移入してしまう。
最優先はもちろんアリスディアたちだ。
しかし、レイディスを救うことはいずれ、アリスディアのためにもなると俺は思っている。
「……それならやっぱり、助けるべきだよな」
ちょっとした暗躍のつもりが、なかなかに大掛かりになるかもしれない。
どうしてこうも面倒をやりたがる性格なのか……俺って、損な性格をしているよなぁ。
「さーて。それじゃあレイドを助けながら、レイディス取り込み作戦を考えるとしますかね」
その夜、俺は遅い時間まであれやこれやと考えていたのだった。
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