第21話:火山暗躍
翌日、俺は次の戦争でレイドが倒されてしまう予定の火山へやってきていた。
活火山だからだろう、近づいただけで熱を感じ、一気に汗が噴き出してくる。
さらに近づいていくとあまりの熱さに汗が噴き出すどころか、すぐに蒸発してしまうので喉だけが異様に乾いてしまう状態に陥ってしまう。
「これ、水の準備がなかったら、マジで地獄だな」
俺はぜーぜーと息を吐きながら、水筒の水で喉を潤してから、さらに先へと進んでいく。
向かう先は火山の火口であり、そこで俺はせっせと動いているものを見つけることができた。
「……やっぱり、このタイミングだったか」
俺は火口を見下ろせて、下からは見上げられてお姿を隠せる、そんな場所に陣取り、火口近くで作業をしていた王国軍を見下ろしていた。
「勇者のことだから、まったく同じ指示を王国軍に出していると思ったよ」
目の前の王国軍は、勇ボコであれば勇者の指示で行動している者たちだ。
イボエルを倒したあと、次のターゲットをレイドに定めた王国軍は、ボルズとブラックの目を引き付けている間にレイドへ集中砲火を与えていく。
堪らず引いていくレイドだったが、その逃げ道を限定させられてしまい、辿り着いた先がこの火山というわけだ。
そこで勇者と英雄との戦闘となり、十分な実力を発揮できなかったレイドは、あっさりと倒されてしまう。
「とはいえ、どうして魔法でレイドの得意な状況にしなかったのかと思ったら……なるほどね。しなかったんじゃなくて、できなかったわけか」
勇ボコではレイドを倒すために必要だからということで、王国軍がこの場で何をしていたのかまでは語られなかった。
最終的には火山が噴火し、レイドの死体を灰にしただけではなく、その現場には二度と足を踏み入れることすらできなくなってしまっていた。
そのせいもあり、実際には何があったのかを勇ボコでは確かめることができなかったのだ。
「あの鉱石は見覚えがある。……まあ、ゲームの中でだけど」
魔法の効果を減少させることのできる魔鉱石、減魔鋼。
扱いの難点としては狙いを定めることができず、減魔鋼の範囲に入った魔法の全てが対象となってしまうこと。
故に、聖女のシルクや賢者のリンディアの魔法にも効果を与えてしまうのだが、勇者だけではなく、英雄の中には近接戦闘に特化した者もいる。
剣聖、ルミナである。
勇者とルミナが中心となってレイドと戦い、結果として打ち倒してしまう、という流れだったはずだ。
「……あづい……あづい……あづい……あづい……」
「おい、新入り! 熱いばっか言ってんじゃねえぞ! こっちまで熱くなるだろうが!」
「ず、ずみまぜん」
減魔鋼を運ぶには魔法を使えない。減魔鋼の厄介なところは、近づけば近づくほど、魔法の効果を減少させてしまうところだ。
運ぶにしても身体強化魔法の効果ですら減少させてしまうため、ほぼ素の力で運ばなければならない。
しかも今回は火口近くでもあり、兵士たちからすれば迷惑極まりない命令だっただろう。
「ねえ、先輩。あの勇者、いったい何なんですか?」
すると、先ほどまで苦しそうにしていた兵士がそんな言葉を口にした。
「おい、周りに聞こえるぞ!」
「だって、おかしいじゃないですか! 異世界からの勇者だって言うから従っていたのに、結果は大敗でしたよ、大敗! 今までと何も変わっていないじゃないですか!」
先輩兵士が黙らせようとしていたが、若い兵士は構うことなく声を荒らげていく。
どうやら王国軍も、一枚岩ではないらしい。
まあ、いきなり現れた俺様勇者にいいように扱われて、その結果が大敗となっては、前線に出ている兵士たちから不満の声は出てくるよな。
「黙らないか!」
「どうしてですか! 先輩だって、他の人たちだって、同じことを考えて――!?」
……おっと。ここで新しい登場人物が現れたぞ?
「な、何をしているんですか!」
「黙れ。さっさと作業を進めろ、いいな?」
あいつ、誰だ? あんな奴、王国軍にいたか?
とはいえ、今はバレないようにしなければならない。
若い兵士の首筋に剣を突き付けた謎の人物は、先輩兵士にも顎で指示を出して作業を進めさせる。
そして、他の兵士たちに睨みを利かせながら作業を見守っている。
「ここで必ずレイド・エルーザを仕留める。でなければ、あまりにも面倒だ」
そんなことをぶつぶつと呟きながら作業を見つめていた謎の人物。
結局、その後は何も問題が起きることはなく、そのまま作業を終えた王国軍は熱さのせいもあってか、そそくさと火口をあとにしていった。
……さて、ここからが俺の仕事だな。
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