表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/4

3

なんで、結婚の予定を早めてくるんだ地球側。

私は地球の方を睨む。

長ったらしい裾や袖で布の多いドレスは動きづらい。

あと6時間で機械化は終わる予定だ。

けれど、まさかお迎えを早めてくるなんて。

しかも、アギロがまだ、機械化が終わっていないのに。

とにかく時間稼ぎをしよう。

姉じゃないとここでバレたら、姉の機械化は止められてしまったら、中の姉が死ぬ。

姉の婚約者様は姉と一緒に月のドライブしたいそうだ。

監視カメラをハッキングして、除くと月の車とは違ったデザインの車が家の屋敷の前に止められている。

あれでドライブするのか。

車の周りにはたくさんの人や機械が周りにいる。

けど中に乗っている機械や人はいないようだ。

そうだ。姉のふりをして、あちこち引っ掻き回して時間を潰そう。

とりあえず、服でまず3時間潰そう。

いきなり予定を早めて来た向こうが悪い。

とびっきりおしゃれなで服ででかけよう。

選ぶのに時間がかかっても文句言えないわよね。



「私は、あなたの婚約者のアギロじゃない」

私は車に備え付けの通信機越しに本当を吐く。

姉の手術が終わった。

ヒレナガゴイのようなドレスを着せられて私は車に座っていた。真っ白な白無垢とマーメイドドレスが混ざったようなデザインの生贄の衣装は、非常に動きづらい。 そして、ベールをかぶっているから見えづらい。



[newpage]

昔の人はいいなあと羨むことが私は多い。

例えば体。

肌の色や骨格が違うだけで、みんな暖かな血肉の通った肉体をしていた。

けれど今は、金属や埋め込まれたエンジンを冷やすための冷却液が通った冷たい体の人が多い。

人間が逃げこんだ月の裏側。

冷たい宇宙の月の裏側で人間の体と心は冷たくなった。

宇宙に出た人類は、生きるために必要な人の形を取りづらくなった。

人の形を補助するために、機械と融合することが多くなった。

私とて、エンジンはないにせよ。

運良く左手と右足が機械肢ですんで運が良かった。

この世界では、暖かい体の人間であるほどステータスが高い。

機械の体積が多いほど、人は人ではなく機械として扱われる。

機械が少ないことがステータスで、私の一族は指一本分くらいが機械であることが当たり前。

だから、私の扱いはよくなかった。

機械で頑丈とはいえ、危険な雑用や仕事をよく押し付けられた。

それでも、私の扱いはいい方だ。

名前さえ与えられず、道具として壊れていった知り合いを何人も見てきた。

「カグヤはわたしの大切なお人形です。雑に扱うことはやめてください」

私の姉、アギロはよく私を抱きしめて、周りのものに睨みをきかせていた。

アギロはこの月の裏側で珍しくどこも機械ではない。

完璧な人間だった。

彼女はこの月の裏側での最高の権力者の一人だ。

彼女のおかげで、私は命令されることはあれど、命を落とすほどのことは、経験していない。

私の任務はよく、荒廃した地球にアップロードして、いろんな情報をダウンロードしていた。

ナノロボットの暴走により、機械融合生物が当たり前の世界とかした地球は、他の人や機械にとって精神にくるものが多いらしい。

私は何も問題はないが、むしろ楽しい。

ロケットで意識を移した人形を送り、探索する。

月の世界の私の体は寝てばかりだ。

地球の偽物の体の私は、大きな生き物と戦ったり、泳いでみたり、人間であることを隠して、機械融合知的生命体との交流をしていた。

「カグヤ、お願いもう地球にアップロードしちゃダメ。妾は戦争に反対したのじゃぞ」

アギロは悲しそう顔をして抱きしめた。

なんでも、月と地球で戦争が起るらしい。

地球や月で何か問題が起こればもう、月に帰らなくなるかもしれないからと反対された。

探索をもっとしたかったし、いつも手伝ってくれた知的生命体にもお礼を言っていない。

後悔が残るが、姉の残して探索するのも気が引けた。

仕方がない。

[newpage]


戦争を仕掛けたのは月側で、目的は地球を正常に戻す方法を見つけたから、地球に使いたいと申し出たこと。

そのことに反発した地球側は猛反発して、結果月の裏が表になるほど大戦争が起こった。

地球側も無傷ではなく。

大陸の形が変わるほどの影響を受けながらも、

50年くらいたった時、やっと終わった。

地球側の勝利という形で、そして、姉が巻き込まれた。

月の人間と地球のニンゲンの友好を結ぶために政略結婚を提案してきた。

[newpage]


「そんな、姉さんを生贄にするなんて」

姉さんはこの国の宝のような存在だ。

だから詫びとして、姉を差し出すという意見が多かった。

何一つ機械でない。

ただの人間だ。

機械ではない肉の体は、年齢のせいもあり、細く折れそうなほどだ。

何度も不老不死の手術を受けるように勧めてもアギロは断っている。

「あなたと同じ機械にはなりたいけど、肉の塊のままでいることは嫌だ」

そう言って、断っていた。

月の人間たちは姉が機械になることを良しとしない。

そうして、何も進まないまま姉はどんどん歳をとり今年で70歳。

アンチエイジングで17歳の少女の姿をしているが、確実に中身は歳をとっている。

その70歳の乙女を、あんなカオスで危険な地球にあげるのは非常によくない。

戦争が起こるまで、幾度も調査した地球は生身の人にはキツすぎる。

そんなところに行かせるのか。

一年も持たない。

「姉さん、機械化の手術受けよう。受けさせる」

全身生身じゃなくなればこの結婚もなくなる。

わたしが命をかけてやる。

結局は地球に追放されるかもしれないけど、生身より全然いい。

作戦はこうだ。

私がアギロのふりをして、48時間過ごすだけだ。

48時間はアギロが機械になるまでの時間だ。

私と姉は一緒の部屋に住んでいる。

そしてその部屋はプライバシー保護のため、監視もサーマグラフィックも一切ない。

まず、わたしは部屋のオートマチックオペボックスに入り姉そっくりにする。


オートマチックオペボックスは、特定のプログラムと材料を入れておくことで、自動で手術してくれる道具だ。

見た目は地球でよく見かける蝶の蛹のような形をしている。

できた時は、医者いらずの医者泣かせと言われて大変だったそうだ。

医者は月にはいないけど、地球にはたくさんいたわね。

腕のピンとキリがあったけど。



地球で磨いたハッキングのおかげで、機械や周りには姉がアンチエイジングしているように間違わせる。

金属の肌を、シリコンで覆う。

モデルをやっている機械がよく使う方法で、十分足らずでできる。

アギロとそっくりのかわいい顔と体ができた。

それが終わったあと、『私』は重大な故障が体に起こっていることにして、オートマチックオペボックスに全身の『悪いところ』の機械をプログラムする。

姉を、私の部屋のオートマチックオペボックスに入れておく。


全身にガタが来ているから、私みたいに半分機械になってしまうかもしれない。

その時は一緒に、地球に逃げよう。

[newpage]

なんで、結婚の予定を早めてくるんだ地球側。

私は地球の方を睨む。

長ったらしい裾や袖で布の多いドレスは動きづらい。

あと6時間で機械化は終わる予定だ。

けれど、まさかお迎えを早めてくるなんて。

しかも、アギロがまだ、機械化が終わっていないのに。

とにかく時間稼ぎをしよう。

姉じゃないとここでバレたら、姉の機械化は止められてしまったら、中の姉が死ぬ。

姉の婚約者様は姉と一緒に月のドライブしたいそうだ。

監視カメラをハッキングして、除くと月の車とは違ったデザインの車が家の屋敷の前に止められている。

あれでドライブするのか。

車の周りにはたくさんの人や機械が周りにいる。

けど中に乗っている機械や人はいないようだ。

そうだ。姉のふりをして、あちこち引っ掻き回して時間を潰そう。

とりあえず、服でまず3時間潰そう。

いきなり予定を早めて来た向こうが悪い。

とびっきりおしゃれなで服ででかけよう。

選ぶのに時間がかかっても文句言えないわよね。


[newpage]

姉の手術が終わるまであと3時間。

「アギロ様、一人で本当に乗るのですか?」

「乗るって何も運転するわけじゃないし、婚約者を中で待つだけよ」

姉そっくりに作った鈴を転がしたかのような声で答えて私は車に乗る。

「キャア!」

突然車が急発進して進む。

周りの人や機械は慌てふためきながら避ける。

そうして運転席に誰もいない車が道路に出る。

月の街の街頭のテレビには、怪しげなマークが一斉に表示されて、甲高いロボット声で怪しげな放送が始まる。

「月の姫様、アギロが乗った車をハッキングした。

返してほしければ、政略結婚を中止するか、機械化を認めろ」

ハッキングも良好、地球に比べたらざるすぎる。

そんなんだから、負けたのかな。

地球の車もうまくハッキングで来てよかった。

難易度が高いと思ったけど、あっさりできた。

さあ、私の一人っきりの逃避行の始まりだ。

3時間耐えたらいいんだ。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ